はい!美術タイトルです

タイトルデザイン:岩崎光明

Vol.9

手書き全盛時代の達人⑥
加藤啓次・藤井苑子・佐々木千代乃デザイナー

生放送を支えた、確かな手仕事
/加藤啓次デザイナー

加藤啓次さん

1984年河田町のタイトル室にて

加藤啓次さん
生放送の現場で長年手書きテロップを支えた、実直な職人肌のデザイナー。

『3時のあなた』『TIME3』『美味しんぼ倶楽部』『ジョーダンじゃない!』など、主に情報番組の手書きテロップを担当していた加藤啓次さんは、開局当初から在籍したスタッフの一人です。
『新春スターかくし芸大会』『唄子・啓介のおもろい夫婦』『キンカン素人民謡名人戦』など、いくつもの番組でメインタイトルのデザインを手がけました。
タイトルデザイン室に配属される前は、デザインの分野で経験を積んできました。独創的な発想を得意とする川崎デザイナーとは対照的に、実直で丁寧な仕事ぶりが印象的な、職人気質のデザイナーでした。
筆文字からイラストに至るまで幅広い表現を器用にこなし、生放送という緊張感のある現場において、手書きスーパーテロップの分野で番組制作を支え続けた、欠かすことのできない存在でした。

加藤さんのデザインしたタイトルロゴ

1961年

1969年

1975年頃

ドラマタイトル 1971年

ドラマタイトル 1971年

1982年

1986年

『今夜は好奇心』
手書きテロップ 1993年

『今夜は好奇心』
手書きテロップ 1993年

エーゲ海に捧ぐ日々/藤井苑子デザイナー

藤井苑子さん

1984年タイトル室の旅行にて

『夜のヒットスタジオ』の独特の手書き文字は、CSでの再放送をきっかけに、テロップ好きの間で今も話題になることがあります。

『夜のヒットスタジオ』の手書きテロップを1968 年の番組開始当初から担当していたデザイナー、藤井苑子さん。大のギリシャ好きで、毎年夏休みには必ずギリシャを訪れ、小麦色に日焼けして帰ってくるのが恒例でした。
自分の時間を大切にし、「仕事は少ない方がありがたい。とにかくギリシャのために時間を使いたい」というのが、藤井さんの一貫したスタンスだったように思います。ある日、職場で電話に出た藤井さんが「ネー、ネー」と会話を始め、周囲を驚かせたこともありました。「ネー」はギリシャ語で「はい」を意味する言葉で、日常的に使われるごく自然な返事だそうです。
趣味として続けていた折り紙をギリシャの小学校で教えたいという思いから、藤井さんは退職を決意し、ギリシャへ渡りました。その後も約30 年にわたり、毎年精力的にギリシャを訪問し、ギリシャ語で現地の人々に折り紙を指導してきました。こうした活動を通じて、ギリシャにおける日本文化・芸術への理解促進に大きく貢献し、その長年の功績が称えられ、平成30年度には外務大臣表彰が授与されました。

藤井さん手書きのテロップ。
1980年代まではこのようなお知らせの
ライブテロップがよく使われた。

藤井さんの著書
『ギリシアのコステェア・ギィトナ学校』
1995年

藤井さんのデザインしたタイトルロゴ

1973年

1979年
(二つのロゴが見つかったが使用時期などの詳細は不明)

藤井さんの手書きテロップ大特集

タイトルロゴデザインは金田全央デザイナー

藤井さんは現在、自宅近くの社会福祉法人しおん学園で折り紙の先生として週3日通い、25年以上にわたり子どもたちと楽しく過ごしています。3~5歳の幼児たちからは「おりがみせんせい」と呼ばれ、園内でもすっかりおなじみの存在です。子どもたちのリクエストに応えながら、にぎやかな毎日を送っています。なお、フジテレビ在籍時から続くギリシャ訪問も、昨年で75 回となりました。

笑顔と技で番組を支えた人
/佐々木千代乃デザイナー

佐々木千代乃さん

1989年 河田町のタイトル室にて
『TIME3』のスーパーテロップ制作中

佐々木千代乃さん
明るい人柄で親しまれ、生放送テロップを数多く手がけ、フジテレビの生の情報番組を支えた手書きテロップの達人。

佐々木さんは、とにかく明るく楽しい方で、軽快なおしゃべりで、その場の空気を一気に和ませ、気がつけば周囲が自然と笑顔になっている―そんな存在でした。
「千代乃さん」「千代ちゃん」と親しみを込めて呼ばれ、スタッフから慕われていた姿が、今も印象に残っています。
生放送のテロップを数多く担当し、現場では手書きテロップの達人として頼りにされていました。『ママとあそぼう!ピンポンパン』では、慣れと経験がものを言う縦ロールテロップ(巻紙状のテロップ)を毎日担当。明るい笑顔の裏で、黙々と高度な作業をこなしていました。
メインタイトルのデザインには、『ネプリーグ』『上岡龍太郎にはダマされないぞ!』『学校へ行こう!』などがあり、川崎デザイナー卒業後は、高柳デザイナーとともに『笑っていいとも!』を担当。長年にわたり、番組制作を支えました。

佐々木さんのデザインしたタイトルロゴ

2003年

1989年

1990年

1990年

1990年

1992年

1998年

2001年

2007年

『笑っていいとも!』コーナータイトル集

ロールテロップ
『ママとあそぼう!ピンポンパン』(1981)
長いものは数メートルを超える

『金曜エンタテイメント』(2004)

『金曜エンタテイメント』(2007)

『はねるのトびら』
コーナー企画(2008)

『はねるのトびら』
コーナー企画(2009)

今回は、加藤さん、藤井さん、佐々木さんの三人のデザイナーを紹介しました。
三人は、それぞれ長年にわたり、放送中に文字を書く仕事を担ってきました。
担当する役割や表現の仕方は異なっていましたが、どの仕事も番組づくりには欠かせないものでした。画面の表に出ることはなくとも、その裏側で続けられていた作業は、当時の放送を支える大切な役割を果たしていました。