第17回「手を握り、笑顔を忘れない」
8月3日放送
今回のキーワードは「
平和
」だ。もうすぐ8月15日、
58回目の終戦記念日
がやってくる。戦後すぐに生れた人がもう58歳になっているということだ。つまり
社会を形成している大多数の人が戦争を知らない世代
ということだ。もちろん僕も知らない。一方で、番組で紹介する詩人の多くが戦争体験をもつ。まどみちおさん、石垣りんさん、茨木のり子さん、もちろん谷川俊太郎さんも川崎洋さんも。戦争を背景とした詩はもちろん、強烈なメッセージ性を含む詩の多くが、多感な時代に戦争を経験した詩人によって発表されている。戦争を知らない世代に伝えなければいけないこと、語らなければいけない事実、わずか数行の日本語にギッシリと詰まった様々な思いが詩の中に詰まっている。えらそうなことをいいますが、
戦争という「事実」
は、いつまでも
生々しい「記憶」
であって、
単なる「歴史」
にしてはいけないことではないかと僕は思っている。それだけにこういった詩人たちの思いを伝えていくことは非常に大切なことだと思う。
今回のロケは鹿児島。その時に梅雨が明けていたのが九州南部しかなかったから、という物理的な理由が大きかった。でも鹿児島といえば知覧という街が、第二次大戦中の特攻基地があった場所として有名だ。10年くらい前に一度訪れたことがあった。知覧特攻平和会館には、あの
神風特攻隊
と言われた若き兵士たちの、出撃前の家族に宛てた手紙や遺品が展示されているに。あまりにもせつなく、ショックを受けた思いは今でも忘れられない。そこに撮影に行こうかとも思った。でも止めた。「平和」ということを改めて考えさせられる場所であることは事実だが、中途半端な映像紹介で「平和」とテーマでくくってしまうことにかなりの抵抗があった。今回の映像に関しては、本当にどうしようか迷った。全編黒バックにテロップだけ、何てことまで考えた。鹿児島に行ってからも迷っていた。でも梅雨が明けた抜けるような青空を見てチョッと吹っ切れた。とにかく詩をじっくり聞いてもらえればいいのだ。この青空の下で、と。
で、本州最南端の佐多岬に行った。青く澄んだの海と荘厳な海岸線、そして遠く水平線に浮かぶ「薩摩富士」といわれる開聞岳。朝早かったこともあり誰もいなかった。聞こえるのは波音だけだ。本当に美しい。大きく深呼吸をした。そして思った。
特攻隊員たちは、あの美しい開聞岳上空を西南に向って出撃していったのだと
。日本最後の本土である開聞岳を何度も何度も振り返り、祖国に別れを告げていたのだそうです。
特攻隊員には10代の少年たちも多くいた。最近の少年犯罪など、いやなニュースを見ると、これらの「事実」が、時代の違い、環境の違いと割り切れることとはどうしても思えなくなる。
ディレクター