第15回「海」
7月20日放送
今年の梅雨は長そうだ。
海
がテーマなのに撮影は全て梅雨の最中にしなくてはならない。
これは大問題だ。真夏の真っ只中に、くすんだ太陽と寒寒とした海ほど見たくないものはない。でもテーマは
海
だ。そして
今は梅雨
だ。どうしよう。今日も明日も来週も天気予報は雨か曇り。マジで困った。
でもよくよく考えてみると、日本の海のイメージって、いわゆる
南国のピーカンに晴れた青空とコバルトブルーの海、ホワイトサンドビーチ
ってことでもないはずだ。
「ニッポンの海」
というと、松島など日本三景に代表される海、日本海の荒波、リアス式海岸、東映の映画が始まる前の海、銭湯にある波がクルっとなった葛飾北斎風の海....みんな
日本的
だ。必ずしもぬけるような青空のイメージでもない。
元来日本人はずーっとくすんだ海と黒い砂浜、断崖絶壁の海岸線とともに生きてきた、というのは言いすぎだろか。たぶん言いすぎだと思いつつ、天気にあまりこだわらずに
「ニッポンの海」
のイメージを作ればいいではないか!と言い聞かせてとりあえずロケに行くことにした。
いろいろ考えてロケ地は葉山の長者ヶ崎に決めた。小さな海水浴場に2、3軒の海の家があるだけの質素な海岸。僕にとってのニッポンの海は
「海の家」
につきるのだ。
よしず張りとトタン屋根のいわば掘っ立て小屋に、雑多にならぶ浮き輪やジュースの冷蔵庫、手書きのメニュー、「お湯シャワー」なんて自慢げな看板。
これぞ「ニッポンの海!」
と思うのだ。
ロケ当日の天気はやはり雨のち曇り。昼過ぎに長者ヶ崎に到着。案の定、地元と思わしき人が数人いるだけの閑散とした海水浴場。ちょっとさびれた雰囲気がかなりイイカンジである。早速、「うみの家 ウララ」と書いた魅惑の看板に引き寄せられて、撮影交渉を、と思った矢先、中から日焼けした気風のよさげなママ(?)が登場、逆に声をかけられた。撮影させて欲しいと交渉すると、今年新設したロッカーの話やら、店のカラーは赤と青に決めている・・・など、止まらないマシンガントークが炸裂しつつ、結局気前よく撮影を快諾してくれた。たぶんこの時期だけに待ちに待った一見客!と思って声をかけてくれたのだろう、撮影だけでは恐縮なので、イチゴミルクとメロンのカキ氷を注文した。さらに今年90歳になるというおばあちゃんにも御出演いただいた。綺麗な若女将風のお姉さんもいて、どうやら女親子三代で経営しているに違いない!と思ったりしつつ撮影開始。おかげさまで天気に関係なく、イメージにかなり近い画が撮影できた。
そして
イチゴミルクのカキ氷
ってこんなにもうまかったかと感動する。
ママにお礼をして店を後にしたが、ひとつ気になることを聞き忘れた。屋号「ウララ」の由来である。しまった。これは気になる。ママがリンダ好き、あるいはその娘と思われるお姉さんの名前、いや90になるおばあちゃんが創業者だろうから、おばあちゃんの名前でしょう...え、あの歳でウララってちょっとハイカラすぎはしないか??
などなど2人のADと喧喧諤諤、結局どうしても気になるので聞きに戻ることにした。
戻るとママが笑顔で再登場。「あの、ウララって名前はどうして、、、」と口にするやいなや、またしてもマシンガントークが炸裂だ。「私がここに嫁いだときに、進駐軍相手にハッピを売って成功した、、、」などとママ本人の歴史トークから、ウララ経営の苦労話まで。実に興味深い話だったが、いつまでたっても何故「ウララ」か、という話にはならず。どうやらママの話が一段落しそうなタイミングを見計らい、念願の質問をもう一度切り出した。「で、ウララの由来は・・・」
「だから、それは判らないのよ。私がここに嫁いで来たときからウララなの。」
と言って高らかに笑うママの顔はとっても幸せそうだった。
ディレクター