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<第31回>
 白部丸が沈没したという知らせを受け、伝衛門は事実を確かめるため、横浜へ行く。
 その日のうちに、沈没の噂は町中に広まり、小作人たちの間に動揺が広がる。
 そして、債権者が三枝家に押しかけてくる。洋服や宝石、ひかるの大切なバイオリンまで押収しようとするので、猛は抵抗する。
 そこへ、勇作が現れ、借金は大河原商会が立て替えるといって、債権者たちを追い返す。
 文彦は、三枝家を破産から救うためには勇作に頼るしかない、と絹に忠告する。絹は伝衛門からの連絡に一縷の望みを託す。
 二日後、伝衛門が憔悴しきった様子で屋敷に帰ってくる。

<第32回>
 横浜から戻った伝衛門は、白部丸の沈没を確認したことを告げる。ひかるは号泣し、絹も初めて取り乱した姿を見せる。
 銀行の担保に入っていた小作人たちの土地が、大河原商会に買い占められる。動揺する伝衛門に、文彦は勇作の気配りだと言い、勇作は信頼できる人物だと訴える。
 伝衛門は小作人たちが今までどおり畑を使えるよう勇作に頼みに行く。勇作はひかるとの結婚を条件に出し、それが受け入れられなければ、畑は潰すと脅迫する。
 それを知った猛は、自分の命を買ってほしいと勇作に土下座する。勇作は、ひかるのことを諦めるよう猛に命令する。

<第33回>
 小作人たちを救うために、伝衛門はひかるに勇作のもとへ嫁ぐよう命令する。ひかるは衝撃を受けるが、猛も伝衛門と同じ意見だったので、泣く泣く結婚の決意をする。猛は自分の無力さが情けなくて、号泣する。伝衛門も絹もひかるが不憫で、居たたまれない。
 ひかるは勇作に承諾の返事をする。但し、条件として、猛を三枝家の後継者にすることを約束させる。
 翌日、勇作は猛を呼び出し、大河原商会で働かないかときりだす。猛が断ると、この土地から出て行くよう脅迫する。
 その夜、猛は酒場で、上海帰りの若い女・秀子と出会う。そのときは知らなかったが、秀子は勇作の妹だった。

<第34回>
 ひかるが結婚の承諾をしてから二日後、三枝家で結納の儀式が行われる。市議会議長の副島を仲人に、勇作、両親、妹の秀子が列席する。終始にこやかな勇作に対して、ひかるは氷のような表情でうつむいたままだった。そんなひかるを見て、秀子はひかるはこの結婚に乗り気ではないのだろうかと疑う。
 結納が終わり、勇作は夜の身内の祝宴にひかるを招待して帰る。
 夕方、猛は伝衛門に暇乞いをする。ひかるが勇作の家へ出かけている間に出て行くという。伝衛門は引き止めるが、猛の決意は固かった。
 絹は、猛が本当の子どもだったらどんなに良かったろう、と嗚咽する。

<第35回>
 ひかるは大河原家の身内の祝宴に出席する。勇作は上機嫌だったが、酔った従兄弟の遠山が、大河原家の隠された汚い部分を次つぎと暴露する。
 さらに、勇作の父・政之助はひかるに、結婚をやめるよう忠告する。
 ひかるが帰宅すると、猛がいなくなっていた。ひかるは半狂乱になって猛を探し回り、アトリエで猛を見つける。
 別れを告げる猛に、ひかるは自分を連れて逃げてほしいとすがりつく。猛も自分の気持ちに正直になって、ひかると村を出る決心をする。
 が、追手の小作人たちに二人は行く手を阻まれ、ひかるは無理矢理、家へ連れ戻される。

<第36回>
 ひかるの結婚式の日がくる。ひかるを迎えにきた勇作は、その輝くばかりの美しさに目を見張り、勝ち誇ったように二人で猛に挨拶にいく。
 その日、猛は村を出るつもりだった。
 が、勇作への反発心や、急に気弱になった伝衛門のことが気がかりで、もう一度三枝家で働かせてもらうことに。
 その夜、猛は秀子からバーへ誘われ、誘惑されそうになる。猛は怒って帰るが、入れ違いに文彦がやってきて、猛がひかると駆け落ちしようとしたことを、秀子にもらす。
 秀子はそれを勇作に伝え、猛とひかるがあたかも関係を持ったかのようにあおりたてる。

<第37回>
 ひかると猛が駆け落ちしようとしたのを知った勇作は、掌を返したようにひかるに冷淡になる。ひかるはショックを受け、新婚第一日目から暗い気持ちになる。
 その頃、猛はひかるへの思いを吹っ切り、三枝家のために再出発しようとしていた。伝衛門はそんな猛に金庫と倉庫の鍵を預け、帳簿の整理を任せる。
 伝衛門の態度に不吉なものを感じた猛は、外出した伝衛門の行方を追う。
 そして、和尚の寺で、偶然ひかると顔を合わせる。二人は伝衛門の行方を探し回り、墓地へ駆けつける。
 すると、三枝家の墓の前で自害している伝衛門の姿が・・・。ひかるは伝衛門を抱き起こすが、すでに絶命していた。

<第38回>
 伝衛門が自殺。通夜の席に訪れた勇作は、伝衛門との約束を破って、小作人たちの田畑を自分の自由にする、と宣言する。怒り狂った猛は日本刀で勇作に切りかかるが、ひかるに止められる。
 深夜、絹が後追い自殺を図る。すんでのとこで猛が助けるが、絹の悲しみは深い。
 翌日の葬儀、勇作に命令されて、ひかるは出席できなかった。ひかるは離婚届を書く。
 猛は勇作に、自分の命と引き替えに田畑を小作人に返してほしい、と訴える。
 が、勇作はあざ笑い、三枝家の土地を甲府連隊の練兵場に提供したことを告げる。当然、屋敷も取り壊しだと・・・。

<第39回>
 三枝家の田畑が練兵場になると聞き、不安にかられた女中たちが大河原の家へ抗議に押しかける。ひかるが騒ぎをおさめるが、女中の一人・お滝が勇作の通報によって、警察に逮捕される。
 猛への憎しみを燃やす勇作に、ひかるは素直に猛への思いを打ち明ける。
 そして、その思いを消し、勇作を愛することを誓うが、勇作は信用しない。
 勇作を信じていた文彦は勇作の真意を確かめにいく。勇作は冷酷な本性を現し、文彦を侮辱する。
 お滝を迎えに行った警察で、猛はひかると顔を合わせる。ひかるは、練兵場のことは必ずやめさせるから自分のことは忘れてほしい、と決然と猛に告げる。

<第40回>
 ひかるは勇作の妻として、生きる覚悟を証明するために、自ら勇作の胸に飛び込んでいく。
 翌日、勇作が、練兵場の話は白紙に戻した、と三枝家に伝えにくる。勇作の突然の心変わりの原因を察した猛は、勇作を倒すため、村を出ようとする。
 その矢先、猛に召集令状が来る。入隊は明日なので、絹は急いでひかるに知らせる。
 その夜、ひかるは猛に会いにいこうとするが、勇作に見つかり、脅迫される。
 翌日、猛は出征していく。
 二年後−。ひかるは猛がサイパンに向かったことを聞かされていた。ある日、ラジオのニュースで、サイパンの部隊が全員壮絶な戦死をしたと・・・。


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