<第7回> <第8回> <第9回>


<第7回>
 行方不明になっているみづほ(室井滋)から2度も電話があったことを八重子(鈴木京香)に知らせるため曙塾にやって来た有香(松雪泰子)は、そこで思いかげない修羅場に出くわすことになった。
 教室には検察庁から逃亡してきた史郎(松重豊)がいて、女子生徒を人質に、八重子に一緒に新婚旅行へ行こうと迫っている。その鬼気迫る表情。とても正気の沙汰とは思えない。八重子は生徒の身の安全を第一に考え、自ら進んで史郎の胸に飛び込み、人質となっていた生徒を助け出すと、「あなたの人生の責任はあなたしか取れないの」と、史郎の心にナイフを突き刺したのだった。この一件以来、八重子に対する生徒たちの人気と信頼は絶大なものになった。
 有香からみづほの電話の事を聞いた翌日、八重子は『おかずの丸ちゃん』に立ち寄ってみた。そして一人忙しく働く良吉(國村隼)が、みづほの事を尋ねてくる客に対し、「ケンカしてね。実家に帰ってる。和歌山の」と屈託なく話す様子に少し驚かされたのだった。
 数日後、今度は礼太郎(佐藤浩市)の元にみづほから連絡が入った。
その時みづほは、とある町のラブホテルの従業員として働いていたが、客が忘れた携帯を見つけ、思わず礼太郎に電話してしまったのだ。
しかし、「元気にしてる?」とありきたりの会話をした後に、有香にしたように「私が誰か知ってる?」とおそるおそる尋ねていた。
「丸山みづほ。丸山良吉の内縁の妻。警察が嫌い。何かもっと大きな秘密があるな。良吉さん以外にも夫がいて、子供もいて。今はそこに帰ってるとか?」礼太郎はこう答えた。そして、「でも、アフリカの方が居心地よかったろ?」と付け加えた。電話を切ったみづほは、たまらず泣き崩れた。
 その頃、福井県警ではいよいよ時効の迫った夫殺しの犯人検挙に躍起になっていた。マスコミを使い亀田伸枝の手配写真を流し、整形手術を施した覚えのある医者からの通報を強く呼び掛けたのだ。
 そして、このニュースにピンときた医者がいた。引っ張り出してきた数年前のカルテには「白井めぐみ」とあるが、そこにある顔はたしかに手配犯の女のもの。婦長は院長に「警察に…」と切り出したが、「その前に…」と院長は、路上駐車していた車を移動させるために出ていった。しかし、時すでに遅く院長の車には違反キップを切る婦警の姿があった。必死でいいわけするが、問答無用!と婦警は嫌になるほどテキパキと免許証と車検証の提示を求めてくる。これにカチンときた院長は、たまらず叫んだ。「もう二度と警察には協力しないからな!!警察が恥をかいても知らないぞ!」。
 その頃八重子の部屋を礼太郎が訪ねていた。みづほから連絡があったことを知らせにきたという。しかし、探さないほうがいいと言っていたはずなのにと、八重子は礼太郎に冷たくあたった。これに対し礼太郎は、いつも自分の顔を見るとツンツンするようだが、それはなぜ?と八重子に聞き返していた。思わず言葉を失った八重子だが、自分の気持ちを確かめるように、「多分……もっと…あなたのことを知りたいからよ。そして私が8年間どういう思いで生きてきたか知ってもらいたいからよ」といったのだ。そして長い沈黙の後…。

<第8回>
 ある朝、ひよっこりと『メゾン・アフリカ』にみづほ(室井滋)が帰ってきた。迎えた八重子(鈴木京香)は、その場で、以前『アフリカ』の3階からタイビングまでして逃げようとした理由をみづほに聞いてみたが、そこにみづほの声を聞きつけたという良吉(國村隼)が出てきて、答えを聞くことはできなかった。しかし、「俺が悪かった。怒鳴ったりして」と咄嗟にわびたり、「和歌山のお母さん元気だったか?」と尋ねたりする、いつなく饒舌な良吉に、八重子は不信感を募らせた。
 みづほは、部屋に入るとずっと気に掛かっていた、良吉のシャツのボタンを付け始めた。良吉は、その様子を見ながら「もう動くな。ここにいた方が安全だ…捕まる時は俺も一緒だから…」と、すべてを知ってしまったことをみづほに告げるのだった。
 この間にも福井県警の躍起の捜査は続けられていた。
 そして八重子は、図書館の閲覧室で15年前の新聞にあった『亀田伸枝事件』の記事を読み、伸枝の足取りと、みづほが話した行商していた父と共に転々とした地名がほぼ同じであることを掴んでいた。
 その頃礼太郎(佐藤浩市)は、『おかずの丸ちゃん』に戻ったみづほと対面していた。もう戻ってはこないと思っていた、と礼太郎は思いがけない再会に驚き喜んで、パーティ好きのみづほのために『アフリカ』帰宅記念パーティを開くことにした。
 その夜、礼太郎の部屋には、八重子、有香(松雪泰子)、緑(ともさかりえ)ら全員が揃い、みづほを歓迎した。話題は、当然みづほのいなかった間のことだったり、それまでの不可解な行動のことに及ぶのだが、その度にみづほと良吉は上手く口裏をあわせ、話しをそらした。 
 しかし、そらした先が八重子と礼太郎になり、かつて礼太郎がプロポーズしたことが発覚したとき、有香はきっぱりと礼太郎から手を引く事をみんなの前で宣言した。
 「いつも人のこと見てカッコイイこというけど、自分は命がけで取り組むものがないの。何時でも何でもほったらかし…人の心だってそうよ」。それが有香のレータ1抜けの理由だった。
 だが、その数日後、八重子は貧血で倒れた有香に付き添っていった病院で、有香が妊娠していることを知らされる。「レータには言わないで。レータの子かわからないし」と有香は口止めしたが…。

<第9回>
 八重子(鈴木京香)の部屋で“亀田伸枝事件“に関する資料コピーを拾ったみづほ(室井滋)は、八重子が過去の自分を知ってしまったと察する。二人きりしかいない部屋で、八重子は恐怖を感じるが警察に通報されるかもしれないと恐怖に怯えていたのは、むしろみづほの方で、「私のこと好きだよね。だったら6月24日。そこまで目をつぶってよ!」と必死に八重子に頼むのだった。
 良吉(國村隼)の待つ部屋に戻ったみづほは、八重子に素性がバレてしまったこと、でも絶対に自分を売ったりはしないはずと、怖いくらいの確信を持って話すのだった。
 しかし、八重子は揺れていた……。礼太郎(佐藤浩市)に時効の意味を尋ね、「犯罪証明が難しくなり、裁判にかけることができなくなる」ことを知ると、自分の良心のようなものと闘い始めたのだ。
 だが、ここにもう一人みづほの過去を知ってしまい、時効の意味に悩み始めた者がいた。緑(ともさかりえ)だ。警察が情報提供を呼び掛けテレビで流した“亀田伸枝“の声がみづほだと、緑も気が付いたのだ。そして緑からも、同じように時効のことを尋ねられた礼太郎は、この時始めてみづほのことを知ったのだった。
 これで、みづほの事を『アフリカ』で知らないのは有香(松雪泰子)だけになった。しかし有香は有香で、お腹の子を産むかどうかで悩んでいたのだ。羊羮のCM出演以来売れっ子になった有香には、連続ドラマ出演の大きなチャンスが巡ってきたのだ。
「この波に乗らなかったら二度とチャンスはこないと思う!」
 ランドリールームで偶然一緒になり、これを聞かされたみづほは「子供もいいけど、自分の人生大事にしたってバチは当たらない……ずっと一緒に居られないかもしれないけど、あんたの事は応援してる」と言うのだった。
 そして数日後…。


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