<第10回> <第11回>


<第10回>
 「指紋が採れたと思うんですが…」。その晩みづほ(室井滋)と良吉(國村隼)夫婦そして巡査の佐々木(梅垣義明)とカラオケスナックに行っていたクリーニング屋の小島(田窪一世)は、警察に1個のグラスを渡した。通報を受け、指紋照合を始めた警察は結果の出る前に、とりあえず『メゾン・アブリカ』を包囲した。
 礼太郎(佐藤浩市)は、そうと気付くと有香(松雪泰子)、緑(ともさかりえ)ら住人を八重子(鈴木京香)の部屋に呼び集めた。
 有香は、咄嗟に八重子が自分の妊娠のことを礼太郎に話したのだと思い、部屋に入った途端「あたしに聞きたいことがあるなら、ひとりで聞けばいいじゃない」と礼太郎に言い放ち、八重子を睨みつけた。しかし、礼太郎が「今、アパートは警察に包囲されている」とみづほについて切り出した話を聞き、唖然となるのだった。
 有香はどうしても信じられなかった。八重子から、事件の記事のコピーを見せつけられても。礼太郎が「犯罪は犯罪。俺は彼女の逃亡に手を貸す気はない」と言っても。
 そして、ずっと自首することを勧めてきた八重子も、今一度自首を勧めるため、一階へ降りていったのだった。
 しかし良吉は、「そういうことになってしまったのならば、なおさら今晩だけでもここで眠らせてやりたいから、そっとしておいて欲しい」と言うのだった。
 だが、その夜、待機していた警察が踏み込むことはなかった。コップの指紋は一致しなかったのだ。巡査の佐々木から一連のことを聞いた有香は、「やっぱりおかんはおかん。『ごめんね』パーティやらなきゃね」と明るく八重子に話した。
 しかし、八重子は、自分の首を絞めようとしたみづほ、土下座して裏切らないでといったみづほのことを思いだし、指紋が一致しなかったことが腑に落ちなかった。
 そんな中、緑が有香の妊娠のことを知った。「この前は、しゃべってしまったと疑って悪かった」と八重子と話しているのを偶然聞いてしまったのだ。これを聞いた礼太郎は、慌てて仕事に向かう有香を追いかけた。八重子は、夢中で有香を追う礼太郎の後ろ姿を見送りながら、なんだか泣けて…涙を止めることができなかった。
 しかし、有香が追ってきた礼太郎に言ったことは、子供は産みたくない。一人で生きる強さ。八重子がきてから奪われた幸せな時間…これ以上自分から大事なものを奪わないでほしい。私の道は開かれているから、などということだった。礼太郎は、何も言うことができなかった。 時効まであと1週間。一度はみづほ逮捕をあきらめていた福井県警が再び動き出した。

<第11回>
 八重子(鈴木京香)は、カラオケパブでみづほ(室井滋)に自首を勧めていた。しかし、ガンとして聞き入れようとしないみづほは、そのまま店を出ていこうとする。とその時「亀田!」と呼び止める声。それは自ら捜査に乗り出してきた福井県警の本部長(石井愃一)だった。ドキリとして見守る八重子。だがみづほは、そのまままっすぐ『メゾン・アフリカ』へと帰って行った。
 しかし、警察はすでにアパートを確認しているし、ニュースでは、みづほの母が危篤状態に陥ったことを伝えている。緑(ともさかりえ)は、警察が仕掛けた罠だというが、兄との電話で母親の病状がよくないことを知るみづほは、母に会いたい、会って一言謝りたいと思うのだった。
 これを知った八重子は、思いがけないことを切り出した。「会いに行きましょう!もう自首、自首と言わない。お母さんに会うまでは」。そして「私も一緒にいきます!私が福井まで連れて行きます!」とみづほの手を引き、立ち上がった。良吉(國村隼)に別れを言い、緑、有香(松雪泰子)も加わって、女4人、福井へみづほの母に再会するための道行きが始まった。
 夜行列車に乗り、降りた駅でレンタカーに乗りかえる。途中、有香は、お腹の子のためにドラマ出演を断ったことを話した。そして『アフリカ』の礼太郎(佐藤浩市)から、すでに緊急配備がかけられ、逃げられる状況ではないとの知らせが入る。それでも、八重子は躊躇せず車を進めた。検問を前にして、みづほは車から飛び下り、逃亡劇のメインキャストは居なくなったが、それでもひたすら亀田伸枝の実家を目指したのだ。あれほど自首を勧めていた八重子の豹変ぶりに有香も緑もただただ驚くばかりだったが、「約束したの、お母さんに会うまでは彼女を守るって…」。八重子は言った。
 そして、とうとう雑貨屋を営む実家へとたどり着いたのだった。客を装い店内に入った3人は、奥から聞こえてきた咳き込む声で母の存在を確認、様子を見ようと八重子が上がり込もうとしたその時だった、いきなり畳が持ち上がったかと思うと、みづほが姿を現したのだ。母を気遣い背中をさするみづほを呆然と見る八重子たちとみづほこと亀田伸枝の兄(冷泉公裕)。
 その時テレビのニュースが良吉が犯人隠避(インピ)で逮捕されたことを告げた。みづほは「あたし捕まらないから」と言い残し、脱兎のごとく飛び出していった。逃げるみづほ。追う八重子。そして、張り込みの刑事たちは、それを見て亀田伸枝が実家に現れたとを確信。その後を追いかけた。
 夕暮れの岬にみづほを追いかけてきた八重子は、夢中で自首を勧める。しかし、時効まであと6時間を残すだけとなったみづほは別人のような口調でこれを拒んだ。足場の悪い海沿いの道、みづほはひたすら逃げる。
 だが、懸命に追いかけていた有香が、足を滑らせ海に落ちてしまう。「おかん助けて!」。緑の悲痛な声が響く。しかし八重子は「あの人はもういい!助けを呼んできて」と叫ぶと海に飛び込んだ。荒波と服の重みで、今にも沈みそうな二人。逃げる!みづほ。
 時効成立まで、あと4時間50分……。


戻る


[第1-3回] [第4-6回] [第7-9回] [第10-11回]