『最もエコな校庭芝生化に密着』
2007年11月30日
入社12年目。気がつけば下の人材の層もすっかり厚くなってしまった私。以前はロケに取材にと日本全国を飛び回っていましたが、最近は東京・台場のスタジオからしっぽりとニュースをお伝えすることがほとんどとなりました。
取材で飛び回っていた当時は、極寒・酷暑の中での立ちっぱなしの取材&終わり時間の読めない仕事に疲れを感じ、スタジオワークはいいな〜と憧れた時期もありましたが、不思議なもので隣の芝は青く見えるというものでしょうか。スタジオにこもりっきりだと、また外が恋しくなるのです。ただのわがままでしょうか!?
そんなある日のこと。昼のニュース「スピ〜ク」で環境系のネタで、リポーターとして取材に行くチャンスが巡ってきました。
内容は、端的に言うと学校校庭に屋上緑化技術を!〜環境に配慮して校庭を芝生化しよう〜というもの。
真夏の校庭の表面温度は約50℃にまで達するため、ヒートアイランド現象の抑制を目的として、東京都の公立学校2,000校の校庭をこの10年間で芝生化する計画があります。
![]() 大量の産業廃棄物が発生 |
![]() 俯瞰で |
![]() 近くで見てみた |
私の学生の頃と違い、最近の学校校庭はアスファルトの所が多いため、まずはそのアスファルトを掘り返す必要が出てきます。すると大量の産業廃棄物が出る上、それを運搬するのに燃料・コストもかかってしまうのです。 ところが!今回の取材対象は環境に配慮して、都心のビルの屋上などでみられる「屋上緑化技術」を利用し、ゴミを出さずして芝生化しようというのです。 是非取材に行ってみたい!
現場はどうなっているのか、早速、墨田区立曳船(ひきふね)小学校を訪ねてみました。
目に飛び込んできたのは鮮やかな芝生の緑色。ブルーの校庭とマッチしてまぶしいくらいです。
まずは上から俯瞰で見てみた。美しい・・・・・
そして近くで見てみた。癒される・・・・・
「芝生が持っている力って無限大だわ」
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![]() 緑色の部分は元の校庭 |
![]() 浸水シート(右)と貯水パネル(左) |
![]() 体育の授業 |
この日は丁度スプリンクラーの工事日で、芝生がペロンとめくれ下地が見えています。
土の下からニョキッと顔を出している緑色のレベルが、元々あったアスファルトの校庭。その上にチラッと見えているのが、浸水シートと水を貯める事が出来るパネル(一見、卵のパックみたいでした)。浸水シートを通して、雨などの水を貯水プラスチックに溜めることができ、乾期などの水が必要な時に地中からに吸い上げるような構造となっています(これで芝が枯れるのを防いでいるのですね)。
その上に土を20〜30cm盛り、そこに芝生を根付かせたのが今回の屋上緑化技術を用いた工法で、これだと産廃(約600t)も出ず、運搬燃料(約700L)も削減でき、価格的にも約1,200万円も安く仕上がるのです。
何より学校サイドが一番嬉しいがっていた点は、普通の芝工事では、工期&芝を根付かせる期間=校庭を使えない期間が3ヶ月もかかるのに対し、屋上緑化工法であれば使用禁止期間は1ヶ月に短縮できる=夏休み期間中に工事がすんでしまう、という点。これなら体育の授業や運動会などの学校行事などにも支障は出ませんからね。
そして、当初の目的である校庭の温度もこれなら30度台にまで下がり(真夏比)、一石何丁もの結果を生むこの技術。まさに良い事尽くめ。

生徒たちも放課後に芝刈を行いますが、曳船小学校では、週末に父兄とご近所の方々がボランティアで芝刈の手伝いをしてくれることになりました。
ボランティアの皆さんによる初めての芝刈に密着してみると・・・・・最初は恐る恐る、仕舞いには「こうやってやると上手くできるよ!」とまるで子供のようにはしゃぐ大人の姿がそこにありました。
芝生は、大人を子供に変える・・・・・・。
![]() こうやってやると 上手にできるんだよ! |
![]() 子どももやっています |
また他にも「普段ほとんど来ることのない小学校に定期的に立ち入る機会ができていいね」とか、中には「俺もこの小学校の卒業生で、当時は授業中に防空壕によく逃げ込んだよ。ここは空襲で焼け残った地域でね・・・・・」なんて学校への想いと共に、戦時中の話を聞くこともできました。皆さんに支えられてこの芝生の校庭は成り立っているんだな、とそんな一面もうかがい知る事ができました。
小一時間の芝刈りで芝生はピチッと刈られ輪郭がクッキリし、凛としてよりきれいな芝になりましたよ〜。後は、その日が来るのを首を長くして待っている子供たちが遊びにくるのを待つばかり☆
さぁ、そして次の日。いよいよ芝生が子供たちに全面開放されました。
これまで立ち入り禁止を強いられていたため、最初は何だかソロリソロリと遠慮ぎみに芝生に入る子供の姿が目立ちましたが、夕方になるとみんな芝生の上でゴロゴロと寝転がり始めました。
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![]() 以前は立ってボール遊びがメインでした |
「子供たちの遊び場を確保するという面から見て、普通の芝生化では工期がかかり過ぎ、とても導引できないと思いました。しかし、屋上緑化の工法でやれば1ヵ月で済むという。それならやってみようと思った。実際夏休み期間1ヵ月で使えるようになったのは驚きでした。すごいことを考えるなと思いましたね。長い私の教職生活の中で、校庭で寝転がるというのはご法度に近く、ましてやアスファルトの校庭では寝転がったら痛いですから。芝生にして子供たちの遊び方が変わりました」
![]() 気持ちが良い |
「気持ちが良い!」「前より冷たくなって気持ちが良い」「虫が増えた」「布団みたいにフワフワ!」「転んでも痛くな〜い!」と、評判も上々。
その感触を確かめたくて、私も芝生に寝転がってみました。
懐かしい芝の手触りと青い香り。まるで地球に抱かれているようなふかふかした感触が、子供たちが言うように実に気持ちが良いのです。
![]() スプリンクラーで水撒き |
見た目は屋上緑化技術と気付かないような自然な芝生具合。エコの観点から見ても、抜群の気持ちよさからいっても「これは是非広めてもらいたいな」と心底、思いました。