アナマガ

どちらかというと シッカリ書きたい人のためのコーナー 10年以上の渡り、続いてきたアナルームニュースの中で 好例の連載企画を「コラム」という形で集めました。 個性あふれるラインアップ!ブログとはひと味違う魅力をお楽しみください!

アナルームニュース 2005年02月22日号

吉崎アナの「2005年・演劇てんこてん」

編集員 M6【編集員 M6】
お待たせしました! 塩原アナウンサーの「映画年間ベストテン」と並ぶ「アナマガ」恒例企画、吉崎アナウンサーの「てんこの舞台年間ベストテン」略して「てんこてん」! 今年も熱のこもった原稿が届きました。
早速、幕を開けることにしましょう。
さあ、今回も勝手に選ばせてもらいます!まずは、・・・・・・
第10位 阿佐ヶ谷スパイダースPRESENTS はたらくおとこ
2004.4.5 下北沢・本多劇場
「都会を捨てた男たちが厳寒の東北で真っ赤な果実にすべてを賭けた-」というキャッチコピーが、パンフレットの冒頭にありました。美しく言うとこうなるのですけど、ひとことで表現すると、こうです。「ムカムカ、オオオエッ、超気持ち悪――――いけど好きっ!!」そうなんです、長塚圭史ワールド。何しろ観終わると胃の中がひっくり返っているカンジなんですよね。その不快感がくせになるっていうか、だいたい長塚演出の舞台を観た晩はヘンな夢を見るし・・・。今回特筆すべきは、客演の劇団カムカムミニキーナ主宰の松村武さん。卓越した役作りで光っており、東北弁丸出しの地元農家の兄・佐藤蜜雄役、面白かったなー。
第9位 日本総合悲劇協会(ニッソーヒ) vol.4 ドライブイン カリフォルニア
2004.5.6 下北沢・本多劇場
人気の松尾スズキ作・演出・出演。舞台をいろどるは、個性豊かな俳優陣。小日向文世の味わいは深いし、秋山菜津子は相変わらず上手いし、片桐はいりの凹んだ女の好演、小池栄子の生活感あふれる品のいい女優ぶり、荒川良々の特異キャラ、NHK「プロジェクトX」ナレーション俳優というとすぐわかる田口トモロヲ、さらに際立って笑えたのは仲村トオル。新劇ではありえないほど、あまりにもきれいなんです。怪優陣の中にあってその端正なたたずまいとズレっぷりは、違和感以外の何者でもない点。(本人みずから「外国の人たちと映画を作って、現場に日本人が僕しかいないって経験何度もしているんですけど、それ以上の異物感」と言っている。わかってますねえ。)そこが、ひたすら可笑しかったのです。
第8位 ブロードウエイ・ミュージカル INTO THE WOODS
2004.6.10 新国立劇場
シンデレラ、赤ずきん、白雪姫、眠れる森の美女、ジャック(と豆の木)、ラプンツエル・・・グリム童話のキャラクターたちが、くんずほぐれつ入り乱れる。万人が知るおとぎ話のハッピーエンドまでが一幕。二幕からは、その「めでたしめでたし・・」の後日談となり、人間くさく、不幸な状況におちいるキャラクターたちをほろ苦く扱うものの、ラストシーンは未来への再生を強く感じさせた手法はおみごと。作詞・作曲のソンドハイムの重層的な音楽のハーモニー。実に斬新なアイデアで空間をしきり、効果的に装置を使う宮本亜門演出。突然ですが、上山竜二クン、かわいい!以前「ママ ラブズ マンボ」という黒木瞳さんのミュージカルで、森山未來クンを見つけたときの感覚に近い。
今回のこの舞台は、私が担当している「スーパーニュース・文化芸能部」の取材で、小堺一機さんとSAYAKAさんの2ショットインタビューを稽古場で撮影させていただきました。実は、その直前に小堺さんの首筋にガン細胞が見つかっていて、舞台の公演後に手術をして退院、現在は元気に復帰されています。しかし、この舞台はそんな大変なことが起きているなんて微塵も感じさせず、
小堺さんの役者としてのプロフェッショナルぶり、歌のすばらしさが印象的でした
第7位 ナイン THE MUSICAL
2004.11.5 天王洲アートスフィア劇場
フェデリコ・フェリーニの映画「8 1/2」がモチーフ。このミュージカルは同じデヴィッド・ルボー演出で、ブロードウエイでも上演され、その本場アメリカを上回る出来だという前評判だったので、わくわくしながら出かけていきました。次々と予想を裏切る展開がすばらしい。大浦みずき、純名りさがいい。十数人の女優陣みなが歌が上手く魅力的。特に池田有希子には「アレグリア」もびっくり!天井から下がった白布に裸身を包み、DANCE&SONG。この布がシーツのイメージで、エロテイックに上がり下がりし、観客の官能に訴える。個性派女優に囲まれ、たった1人でもちこたえようと男優・福井貴一がふんばるものの一歩およばず押し倒された感あり、惜しい!ボッティチェリの名画「春」の背景画から水が流れ始め、それが床を満たし、地下からは噴水があふれ・・・・舞台全体が水に覆われる大がかりな演出。人生そのものを押し流されそうになる男の心象風景なのです。それにつけても、観客の少なさよ。こんなにレベルの高いミュージカルの評判が人口に膾炙しないとは・・・・・ああもったいない!のひとこと。
第6位 髑髏城の七人
2004.10.27 日生劇場
文化芸能部のインタビューで、市川染五郎さんは「もう、いまイッパイイッパイなんです・・・」と叫んでいましたが、すごく色っぽくて良かった。いのうえ歌舞伎というスタイルは、ビートの効いたロック音楽にのせて見得をきり、ケレンみたっぷりのスピード感あふれる役者たちが「かぶくもの」になりきる姿がすばらしい、のだと勝手に解釈しています。その、いのうえスタイルに、本物の歌舞伎役者が登場するのだから、面白くて当たり前ですね。共演者も良く、池内博之くんは初舞台だそうですが、低音の美声で、三上博史ばりの狂気系俳優の素質を感じました。鈴木杏ちゃんは、腕の立つ「くのいち」という得意なキャラクターだし、ラサール石井さんの徳川家康も貫禄あって◎。午後6時半開演で、途中15分休憩をはさんで10時10分まで。出ずっぱりの染五郎さん、本当にお疲れ様でした。パンフレットが¥2.500もしたので買いませんでした(!)
第5位 桃太郎
2004.12.12 歌舞伎座
昭和三十四年四月に四歳で「桃太郎」の初舞台にたった中村勘九郎丈が、自身の締めくくりに選んだ演目も同じ「桃太郎」だった。今回は友人の渡辺えり子さんが書き下ろした新作、あとにもさきにも一回限りの興行だそうです。「鬼が島の鬼」を退治してからというもの、すっかり覇気のなくなった桃太郎が、退治したはずの鬼に魔法をかけられ、赤い靴を履いてしまった女の子さながら踊り続ける。勘九郎さんの踊りで歴史を振り返る趣向で、見ているだけで涙がこみあげます。さらに昭和三十四年当時「雉(きじ)」の役だった中村小山三さんが、今回も雉、それもあんみつ姫のような赤姫のいでたちで登場、これにも沸きました。さらにさらに当時「犬」を演じた中村又五郎さんが手押し車に乗って登場。一歩一歩しっかりとした足取りで歩む齢九十歳のお姿にたまらず涙・・・。脇をかためる人材の宝庫なのですね、中村屋一門は。三月からの中村勘三郎襲名公演がまた、楽しみ。
第4位 浪人街
2004.5.16 青山劇場
納得!心配!驚嘆!脱帽!唐沢寿明(4?歳)さんのいさぎよさにハハーッ!恐れ入りました。JAE(ジャパン・アクション・エンタープライズ/前身・JAC)出身の伊原剛志さんや、「比べれば若手」の中村獅童さんはいいとしても、切って切ってきりまくる唐沢さんの殺陣、ホントにお疲れ様でした!前半はややモッタリ感があるものの、その感覚が一掃される後半に圧倒されました。殺陣のしつっこさがたまらない。油やら血のりやらベタベタギラギラくどくて、今まで見た中で一番粘る殺陣でしたー。
第3位 ロミオとジュリエット
2004.12.08 日生劇場
藤原竜也・鈴木杏という若手ピカイチ・旬の二人が暴走特急のごとく疾走するスピードドラマ。皆さんは、ロミオとジュリエットが、実は五日間で、出会って結ばれて天国に行く・・・ということを知っていましたか? 若いってすさまじいエネルギーなのね、と思わず納得させられてしまうパワーの二人。バルコニーで情熱的に愛を交し合う有名な「窓辺のシーン」で、ジュリエット役の杏ちゃんが、「ああ、ロミオ、ロミオ。どうしてあなたはロミオなの」といいながら寝転んで足をばたばたさせるという表現は新鮮!普通ジュリエットはもっとおしとやかに悩んでいるイメージがありますが、杏ジュリエットは元気イッパイでよろしい。ロミオは次々に興味の対象となる女の子が変わっていくという、いわば体育会系のシンプルな精神構造の男子なんですけど、藤原くんの前半の暴風じみたキャラ作りはぴったり!一生懸命ってはたから見るとある意味で滑稽ですよね。観客席に広がる笑いの渦を目の当たりにして「ロミジュリ」にこんなに喜劇の要素があったなんてびっくりしました!藤原クンは、去年の悩ましいハムレットとはまったく違う単純健康青年像がいい。人種のるつぼのようなモノクロの顔写真が貼られた三階建ての舞台装置を、バネを生かしたしなやかな肢体で自在に昇り降りするロミオが目に焼きついて離れない・・・・。
第2位 桟敷童子 しゃんしゃん影法師
2004.11.1 中野光座
日本には「くらやみ」が減っているといいます。私が子供のころは、どこにでも存在したちょっと怖い闇。その「くらやみ」と「神隠し」を掛け合わせて感涙のドラマに仕立て上げた筆力はお見事!中野光座という、いわば場末の元映画館を芝居小屋に見立て、椅子は映画館のシートだし、舞台は小スクリーンがかかり、間口がえらく狭い。そこに神社の鳥居やら階段やら所狭しと積み上げられている舞台装置が、観客にひんやりと湿気をおびた空気を感じさせる。さらに照明がきれいだった。夕焼け・紅葉の朱色と、暗闇の深い藍色とのグラデーションが記憶に残る。冒頭で主人公の妹・さよが神隠しにあい、手押し乳母車に飛び込んでいなくなるシーンは、唐十郎の紅テント芝居を髣髴とさせ、それを日本の九州にしぼりこんで郷土色豊かにした・・・・というかんじ。(かえって分かりにくいかしら?)いやあ、知り合いに紹介されて行ってみたのですが、衝撃的でした。
第1位 ピローマン
2004.11.14 PARCO劇場
マーテイン・マクドナー作、長塚圭史演出。童話「ピローマン」とは、今まさに自殺しようとしている人の傍らにいてその人の時間をもどし、苦しみを知らない幼いころまでさかのぼって事故と見せかけその人生を終わらせてあげる、という辛い役割をする人の話。結局、童話の作者である主人公は、枕(ピロー)を顔に押し付け、兄を楽にしてあげる弟そのものだった・・・・・。内容は、幼児虐待などの残酷なエピソードが積み重なってとても重い話なのに、胸に切なく残る感動・・・。実力派男優(高橋克実・山崎一・中山祐一朗・近藤芳正)が、がっぷり組みました。特に克実さんの膨大な台詞量といったら!それもシーンごとに形をみごとに変える表現力、そして観客の心の奥にきっちり届く説得力。主人公(克実さん)が「とんでもない絵本」を読む朗読力のレベルに脱帽しました。そうか、朗読ってこうやるんだあ・・・・。目からうろこがポロリ・・・。今思い出しても、胸がきゅーっと痛む舞台です。同じ作者(マーテイン・マクドナー)&演出(長塚圭史)なのに、以前見た「ウイー・トーマス」はグロかった。死んだばかりの猫の死体(ぬいぐるみだけど)をぶんぶん振り回すような演出で、隣で見ていた友人が気分を悪くして途中退出しかけ、二度と来ないかも・・・・とつぶやいたという逸話もあり心配したけど、今回その友人は隣に座っておったが何も問題は起こらなかった。ヨカッタヨカッタ!もう一回見たくなる舞台、ですよね。隣の席のさくらこさん!(友人とは、アナウンス室の筒井櫻子さんなのでした)
そして今回の特別賞は、中村勘九郎丈の「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)。去年も一位に輝き、これ以上のランクは無いのに、2004年も平成中村座NY公演(詳しいリポートは、アナマガを見てね)をやるは、大阪松竹座で凱旋公演をやるは・・・で、それぞれがまた良かったのです。困り果てた私の脳裏にひらめいたのは!そうだ!「殿堂入り」という手があるではないか。そこで、勝手に決定!「夏祭浪花鑑」は、「演劇 ザ・てんこ10(てん)殿堂入り・第一号」となりました。よろしく!
編集員 M6【M6のひとりごと】
おお、企画5年目にして、ついに「殿堂入り」が登場です。
舞台を観るためなら東へ西へ、ちょいとニューヨークへも行っちゃうてんこさん
昨年観た舞台は
約80本とか。
そしてすでに今年もパワフルな観劇&感激てんこさんは疾走中。
果たして2本目の殿堂入り舞台はあるか?! 乞うご期待です。