アナルームニュース 2004年09月14日号

吉崎アナ 紐育(ニューヨーク)・歌舞伎三昧之記
編集員 プリン【編集員 プリン】
今回は、アナウンス室でも舞台通として知られる吉崎典子アナがこの夏、大好きな歌舞伎をNYまで見に行ったというお話です。
勤続二十年の休暇を利用して、「平成中村座NY公演」を見に行った。摩天楼のふもと、リンカーンセンターに突如出現した芝居小屋でかかる演目は「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」、主演・中村勘九郎丈。この夏、リンカーン・サマーフェスティバルの目玉企画だ。
このはなしが大好きで、過去に東京・渋谷シアターコクーンで二度、大阪・扇町公園でも見ている。何といっても魅力的なのは勘九郎さんのおしり(!)。つまるところ、おしりを見るためにNYに出かけたようなものなのだ。フジテレビ・アナウンス室では、歌舞伎をよく一緒に見に行く。
多い時は総勢15人にもなる。歌舞伎を見ているアナウンサーの数が、おそらく民放で一番多いのではないだろうか。
ただ、今回はNY。いくらなんでも・・・という遠さであったが、有志はちゃんといた。同僚の阿部知代アナ。OBの野間脩平氏。・・・・かなりの物好きである。
阿部知代アナは緑色の絽の着物を涼しげに着こなしニューヨーカーから注目を浴びていた
わたしたち3人が手に入れたのは、公演初日・夜の部のチケット、75ドルなり。後から聞いた話では、人気が沸騰してこの席に500ドル(約6万円)もの値がつき、ダフ屋も登場したとか。
当日、公演会場のリンカーンセンターに到着。
阿部知代アナは、日本から持参した数枚の和服のうち、緑色の絽の着物を涼しげに着こなし、早くもニューヨーカーから注目を浴びていた。
一年以上前から日常的に着物を着始めた知代ちゃんの姿、私はすっかり見慣れてしまっていたけれど、こうやってニューヨークで芝居小屋をバックにすると実に粋! 思わず隣で、誇らしげな気分になる私。えへへ。
目の前には、役者の名前を染め抜いた幟(のぼり)が、はためいている。見覚えのある茶色のかまぼこ型をした平成中村座。本当に建てちゃったんだなぁー・・・
ふと、中村座のわきに目をやると、なんと浅草・文扇堂の荒井修さん(通称・おさむちゃん)が手を振っている。聞けば、江戸情緒を醸し出すため、浅草の旦那衆がボランティアで駆けつけ、「五軒長屋」と称し会場で扇やら千社札やらを販売しているそうな。ここにも、物好き見つけた!

編集員 プリン

NYに出現した中村座、日本人としてはその光景を実際に見ると感激でしょうね。
うらやましい。さあ、いよいよ公演が始まります。みなさんを会場内へとご案内。
左が文扇堂のおさむちゃん、右は平成中村座NY公演実行委員会の塚田圭一委員長です
  左が文扇堂のおさむちゃん、右は平成中村座NY公演実行委員会の塚田圭一委員長です  
入り口で黒人女性にチケットをもぎってもらい、会場内へ。席は全て椅子席。もともとの桟敷席スタイルは、脚が長く、正座に不慣れなニューヨーカーには無理ということで、3人がけの横長椅子に落ち着いたそうだ。私の席は両脇が巨大なアメリカ人。ひえーっ。すごい圧迫感。
そうこうしているうち、いよいよ幕が開いた。オープニングで、役者が登場するたび英語で簡単な紹介が繰り返される。この舞台、主人公の団七がやむにやまれぬ事情から義父を殺害し、捕り手たちから逃れようとする、という粗筋。
序幕に通称「泥場」と呼ばれる見せ場があり、これは団七と義父の義平次が、泥まみれ水浸しになって切り合うシーンだ。団七がざんばら髪を振り乱し、緋色のふんどし一丁になる。身体一面の藍と朱の刺青と、下帯の緋色がそれはそれは美しいコントラストをおりなす。
勘九郎さんの引き締まったおしりの筋肉、脚は太からず細からず、長からず短かすぎず。ほれぼれとして見とれる。と、次の瞬間、暗闇から一転、舞台奥からなだれこむ祭り囃子の明るさに目が眩む。緊張がほどけたまま、休憩時間へ。
それにしても、場内のクーラーが効きすぎてものすごく寒い。用心に長袖を一枚持参して良かった。肌の露出の大きいニューヨーカーがそれほど感じていない様子なのは、ひょっとして体温が高いのか?
第二幕。団七に追っ手が迫り、屋根の上での大捕り物に。ミニチュアの家の模型が登場し、その上で作り物の人形の団七と捕り手たちが、チョコチョコ動く。と、すぐ脇から本人が人形ぶりでふたたび登場。この凝った趣向に笑いがおきる。
続いては、花道に立てかけたはしごの上での大立ち回り。さあ! いよいよもうひとつのハイライトシーン、大詰。捕り手がさらに団七を追い込んでいく。スローモーションで逃げ続ける団七。ヘリのバラバラという爆音が上空に聞こえ、サーチライトが錯綜する。そこに突如なだれ込んでくるNY市警が「フリーズ!!!」と絶叫し、銃をかまえる。この衝撃的な幕切れに場内は騒然、同時に観客が総立ちとなった。ニューヨークならではの演出が心にくい。
カーテンコールで、役者の隣で市警役のアメリカ人が巨体を折り曲げ、慣れない正座でお辞儀をするのだが、その姿が何ともほほえましい。観客の惜しみない拍手がいつまでもいつまでもこだまする。本物とまがいものを見分けるシビアなニューヨーカーの、素直で分かりやすい反応に改めて感心した。
翌朝、ホテルで朝食を取りながら野間氏、阿部アナと、NYタイムズの朝刊を読み、感激がよみがえる。本紙一面のほかに、アート面では本当に大きく取り上げられていて、「スパイダーマン2以上のスリルを与えてくれる」「この夏のアクション映画の代わりに鑑賞すべき最も心動かされる作品」などなど、大絶賛している。
この大成功をうけて2006年にふたたびNY公演がおこなわれるかもしれない、というのも嬉しいニュースである。
この秋には大阪・松竹座で凱旋公演があり、ラストシーンは、またまたあっと驚く演出らしい。お、おしりが、私を呼んでいる・・・・・?!
余談だが、十年前のこと。当時、朝のワイドショーを担当していた私は、おそるおそるプロデューサーにたずねた。「勤続十年休暇を取得できるそうなんですが、お休みはいただけますか?」・・・・「ばあかっ!そんなもん取れるわきゃないだろっ。俺なんか、十年も二十年も取ってねえよっ」・・・・ひとことで終わった。
こんなトラウマを持つ私が、今回、勤続二十年休暇を申請するのをためらったことは言うまでもない。・・・し、しかし! 言ってみるものである。時代は変わり、あっさりお許しが出たのだった。
アナウンサー、長く働いているとたまには好いこともある。入社二十年めの自分への、思わぬ「ごほうび」となったのだった。
編集員 プリン【プリンのひとりごと】
NY公演、その内容もダイナミックなものだったんですね。吉崎アナの詳細なリポートで、我々もその雰囲気を感じることができました。日本に帰った勘九郎さんは、先日アナウンス室を訪ねて下さいました。その写真は、アナミュージアムでご覧下さい。
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