アナマガ

どちらかというと シッカリ書きたい人のためのコーナー 10年以上の渡り、続いてきたアナルームニュースの中で 好例の連載企画を「コラム」という形で集めました。 個性あふれるラインアップ!ブログとはひと味違う魅力をお楽しみください!

2010年03月18日号

吉崎アナの「2009年・演劇てんこてん」

今年で10回目を迎えることになった「てんこてん」
よくもまあ、毎年続けて書かせていただき、感謝観劇!あ、まちがった感激!、です。
これまでも、そしてこれからも、変わらずご愛顧のほど、どうぞよろしくお願い致します。
さあ、それでは、早速2009年の第10位から!

10位「真心一座身も心も 流れ姉妹 ~たつことかつこ~獣たちの夜~ (2月20日 本多劇場)
あまりにクサイ芝居で、ばかばかしくって大笑い。あんなことを(!)こんなまじめによくやりますよ!でも、たまには、こういう舞台ですっきりするのもよいかも?!
姉(千葉雅子)と妹(村岡希美)をめぐり、毎回、ゲストラバーとゲストレイパーが登場。さらに、“ゲストがや”(がや、って、その他大勢って意味ね。)まで豪華。シリーズ作(今回は3作目)なので、今後も続くと担当者は語っていました。また、行っちゃおうかなぁ!
9位「バンデラスと憂鬱な珈琲」 (11月21日 世田谷パブリックシアター)
堤真一・高橋克実・段田安則ら、実力派の名優たちが、しのぎを削って笑わせてくれます。
(ここが大事ね。“すごい面子”が、一生懸命笑いと取り組んでいるのです)多い人で10以上の役をこなすこの作品、よく途中で混乱しないなあ!と感服します。作・演出のマギー・マジック炸裂で、斬新な逸品となりました。
8位エドワード・ボンドの「リア」 (11月26日 世田谷パブリックシアター)
舞台が、つねに工事現場のごとき騒音で満たされ、至極不快なのだけど忘れられない印象を残す。溶接の火花やら、パイプ材を打ちつける金属音やら、いまだに夢見そうですよ。従来の「リア王」とはまったく異なる新解釈で、身の毛もよだつシーンも続出。結果、強烈な作品に仕上がりました。
7位「海を行くもの」 (11月16日 パルコ劇場)
男くさーーーーい五人の男優が、濃厚な舞台を繰り広げます。キーパーソンの小日向文世の不気味さ、兄役の吉田鋼太郎は、むせかえるほどの体臭を感じさせる。(実際は、においませんけどね!)浅野和之、平田満、大谷亮介と、勢ぞろいしたときの圧倒的なエネルギー。ああ、ここにいられて良かった!!という幸福感に満たされたのでした。コアな秀作。
6位ラッパ屋第34回公演「ブラジル」 (1月19日 紀伊国屋ホール)
大学時代のサークル仲間が、12年ぶりに千葉の海辺のペンションで再会する。この間のそれぞれの出来事が徐々に語られていく。不倫、倦怠期を迎えた夫婦、胃がんかもしれないという健康不安に駆られる夫婦、一発屋のミュージシャンなど、さまざまな人間模様。脚本・演出の鈴木聡がわたしの2歳上で、ほぼ同世代の話なので、いちいちうなずく。さすがサラリーマン出身だけあって、細やかによく描けていて面白かった。
5位「出番を待ちながら」 木山事務所公演 (8月12日 俳優座劇場)
この公演を見終わって、しみじみ力が湧いた。三田和代さんを中心として、年配の実力あふれる女優さんたちがこぞって熱演。舞台は、かつて有名な女優さんであった人ばかりを集めた老人ホーム。ここで繰り広げられる人生の悲哀、ユーモアには、リアルなパワーがあり、人生の幕の引き方に思いをめぐらす秀作でありました。三田和代さんの付き人役で出演した千葉綾乃さんが、実に泣かせる演技で◎。
4位桟敷童子 「ふうふうの神様」 (6月26日 下北沢・スズナリ劇場)
2004年11月に初めて見て衝撃を受けた同劇団の「しゃんしゃん影法師」と、テーマ“神隠し”が共通している。(2004年てんこてん、参照)スズナリの空間に広がる一面のもみじがまぶしいほどの鮮やかさだ。中野の南座で感じた現代の光と闇が、今度は下北沢で強烈に再現された。小さな劇場が、屋台崩しでうなりをあげる。いつも、この劇団を見るときに感じる「懐かしさ」と「底知れぬ恐ろしさ」が、私をひきつけてやまない魅力、というよりも魔力・・なのだろう。
3位「江戸の青空」 (6月3日 世田谷パブリックシアター)
前回作「地獄八景:浮世百景」が、私的にヒットしたので、その流れで楽しみにしておりましたが、これまた大当たり!江戸の有名な落語を何本も下敷きにして、芸達者たちが繰り広げる笑いと涙の世界。これでまた、落語が聞きたくなりました。G2プラス松尾貴史さんのこのシリーズ、次も見たいっ!!
2位メガロックオペラ「R2-C2」  (5月27日 パルコ劇場)
これまた大当たり!クドカンこと宮藤官九郎が実に情けなくて良い!
松田龍平がしぶく、森山未来と阿部サダヲの親子が華があり、訳もなくワクワクする。劇中に流れるミュージック・ナンバーが、安けでサイケで呆気にとられてしまうが、妙にやめられない感じ。
1位「楽屋」 (5月16日 シアタートラム)
「楽屋」はねぇ、学生演劇をやっていた頃に先輩が演じた「楽屋」を繰り返し見て、当時は台詞をほとんど覚えてしまったくらいなんですよ。今回は、いままでに見たどの「楽屋」より、ピカイチバン面白かった!!!
渡辺えり、小泉今日子、蒼井優、村岡希美・・・・・・当代きっての個性派女優たちが火花を散らせました!シアタートラムがリアルな楽屋と化し、生瀬さんの手だれな演出に驚くやら、感動するやら!!

そして、10周年特別企画として(勝手に自分で作りました。あははは!)2009年の 中村屋の活躍を、ベスト5形式で振り返ります。題して、「勘三郎スペシャル!!」

5位「俊寛」俊寛僧都 (4月12日 香川県・金丸座)
金丸座は、これで二度目。讃岐うどんを食べまくって、金毘羅神社にお参りして、観光気分るんるんで、とても楽しく観劇しました。金丸座は日本最古の芝居小屋であり、昔の人の身体サイズだから席が小さくて、同行の身長188センチのだんなさんは、閉口しておりましたが。中村屋は親子3人で、俊寛僧都・丹波少将成経・海女千鳥を演じていて、地方公演ならではのアットホームな配役やよし。完成度は◎でした!
4位「野田版 鼠小僧」棺桶屋三太 (12月12日 歌舞伎座)
四年ぶり二度目の再演。初演よりもぐんと良くなっており、新作でも後世に伝えるべき作品はちゃんと残っていくのだと実感。歌舞伎も新作ばやりですが、果たしてどれくらいの作品が後々伝えられていくのか、今後興味津々。汗だく・出ずっぱり・しゃべりっぱなしの三太(サンタ)役、お疲れ様でした!
3位「櫻姫」清玄 (7月26日 シアターコクーン)
素晴らしく美しく、分かりやすい「櫻姫」。序盤に、清玄と白菊丸の心中シーンがあり、とても分かりやすかった。勘三郎さんの清玄と、橋之助さんの権助を分けたことで、(普通は二役で演じる)理解度が進みました。
七之助さんの櫻姫があくまで美しく、可憐でリアルだった。お姫様が、自分のあずかり知らぬところで、お稚児の生まれ変わりとして生を受ける&盗賊に操を奪われ、懐妊して出産&出家する日に盗賊に再会、出奔&失敗して追放&遊女に売り飛ばされる&清玄と偶然再会、心中を迫られ逆に殺人&盗賊が父の敵と知りあだ討ち・・・・・・いかに歌舞伎が「~~~実は、・・・・」という、常人には考えられないような複雑&都合の良いなりたちであるか、という見本のような作品。ラストシーン、原作では赤子殺しとなるのだが、あまりに残酷でカットになったそうです。これほどの複雑怪奇な人生にも関わらず、七之助丈の澄んだ瞳が美しかった。「櫻姫」の現代版と歌舞伎版をともに見たことで、理解が進み、相乗効果であった。両方見た人、大正解!
2位「春興鏡獅子」 小姓弥生 後に獅子の精 (1月11日 歌舞伎座)
いよいよ歌舞伎座「さよなら公演」がスタート。これから、16ヶ月にわたることになります。その第一弾。「鏡獅子」は、圧巻!のひとこと。お小姓・弥生の前半の踊り、これはためにためる我慢の舞、と聞いたことがある。後半の獅子の勇壮な毛振りの発散するエネルギッシュさと違い、御前にむりやり引っ張ってこられた処女の恥じらいを表現するために、ためるんだそうです。これを20歳の初演から30年以上踊り、毎回進化している。重ねれば重ねるほど良くなっていく。透明感。無我の境地。静かな踊りなのに観客が目を離せなくなるのは、勘三郎さんから発する「気」を受け止めてのことではないか。
1位名古屋平成中村座 「法界坊」 (9月19日 名古屋城内二の丸広場)
とにかくダントツ!すごかった!!
隅田川河畔に建てられた、平成中村座杮落としの公演からスタートしてこれまで何度も見ていますが、今回が断然良かった。全体がぎゅぎゅっと凝縮され、分かりやすくなった。ラストシーンで、背景が開いて本物の名古屋城が見え、薄暗くなっている中で花吹雪を浴びて踊り狂う鬼の姿が強烈でした。名古屋で食べた名物“ひつまぶし”の美味しさとともに(?!)、脳裏に焼きつく作品でした。