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Vol.62

CLAMP TALK


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CLAMP TALK :中西圭三



中居=中居正広
中西=中西圭三

中西:
そうですね。普通の学生バンドですよ。どっかライヴハウスに出たりっていうこともなくてね。サークルのお祭り的なイベントがあれば、そういうところでバンドをやるとか、それだけだったですね。で、そのサークルの先輩で池田聡さんがいて、デビューしてすぐにベストテンに入っちゃうような感じだったので、そういう活躍を見ながらね、感化されるように「うわぁ、こういう仕事やれたらいいなあ」なんてね、漠然と思ってたんですけど。それ自体も、自分がやれるなんてとても思えなくてね。だから、大学4年の時に就職活動もしましたしね。

中居:
就職活動ですか?

中西:
ええ、しましたよ。ちゃんとリクルートスーツ着て。その頃はバブルの絶頂期でしたからね、みんながみんな、その頃良かった企業にいったんですけど。僕も例にたがわずっていう感じで不動産屋に内定決まったりなんかしてね。

中居:
決まってたんですか。

中西:
ええ。もうちょいで行きそうになってましたけどね。

中居:
え?それ、決まって?

中西:
ええ、その内定者の集まりみたいなのがあるんですよ、解禁日みたいな日にね。10月の何日みたいな日に集まって。で、集まった瞬間に何となく先が見えちゃう感じがしちゃったんですよね。だから、つまんねえなって思って。その頃池田さんとの出会いもあって、すごく音楽に対しての憧れみたいなのがが強くなってたし、ちょっとこの気持ちを捨ててこういう世界に入り込んじゃうの、どうも釈然といかないなあっていう感じでね、だから、ここはやめにして、ちょっと気持ちの整理をつけて。

中居:
え?決まったにもかかわらずやめたんですか?

中西:
そうそう。で、「すいません」とかって言いに行ってね。

中居:
すごい勇気がいることですよね。

中西:
そうですよね。「何やるんだ?」って聞かれて、音楽やりたいと思ってるんですよって、説明しに行ったんですよ、辞める理由としてね。それでもう「え?」みたいな、「またぁ」みたいな、そういう感じだったんですよね。その時はですね。

中居:
でも、音楽やるっていっても保証ないですよね。

中西:
何の保証もなかったですよね。だからつてがあるっていうか、池田さんとの出会いがあったからね。そういう働きかけみたいなことをしようかなあって思っていたんですけどねえ。

中居:
恐くありませんでした?

中西:
いや、恐いって言えば恐かったですね。で、別にバンドの仲間がいてやるわけじゃなかったから、一人で。だからもし、バンド活動するんだったらメンツも集めなきゃとか、そこから始まるわけですからね。こりゃ大変だなって。でも生活のことも考えなきゃいけないから、いちおう仕事もアルバイトとかしなきゃいけないだろうし、とかね。いろいろなことを考えてたんだけど、就職やめたっていうふうに僕の友達に言ったら、その友達が池田さんに「やめたらしいですよ」っていう話をしてくれましてね。だから、あんまり時間も経たないうちに「やめたんだって?」って電話がかかってきましてね。で「だったら春からツアーが始まるから一緒にやろうよ」っていう誘いがすぐあったからね。だからあんまり不安になる時期もなかったんですよ。

中居:
考える暇もなくってことですよね。それでトントントンと。トントン拍子じゃないですが。

中西:
そうですよね。事務所に入ってツアーも回って。曲もその頃から書き始めた。

中居:
え、それまではなかったんですか?

中西:
そう。曲もね、学生の時に1、2曲お遊びで書いたぐらいで。だから、プロになってからなんですよ。

中居:
へぇー。

中西:
だから、曲書きの人になるっていうこと自体がね。

中居:
やってみないとわからないですよね。

中西:
そう。何かね、自分を追いつめるような形で始めたような仕事だったんだけど。

中居:
危機感がね。

中西:
そう。逆にそのほうが良かったのかも知れないですよね。

中居:
なるほどね。中西さん、音域広いですよね。

中西:
音域広いんですよ。だからね、自分の音域で気持ちいいところへ、というので曲を作っちゃうから、曲を歌おうとすると。ほら、この間も「Woman」歌ってくれたでしょ。「Woman」のサビって、けっこう高いところで歌うんですよ。で、Aメロになるととたんにバーンと低くなるから歌いにくいみたいなんですよね。

中居:
難しい曲歌ってるなぁとか言ってて。

中西:
ほとんど一人クリスタル・キング状態っていうんでしょうね、ああいうの。ああいう二重人格な感じの曲がけっこう多いんですよ。「チケット・トゥ・パラダイス」なんていう曲もあるんですけど、頭の中ではもうアース・ウィンド・アンド・ファイヤーですからね。アース・ウィンド・アンド・ファイヤーといえばモーリス・ホワイトとフィリップ・ベイリーだろうと。二人だからこそ成り立つような雰囲気なんですけど、これを一人でやっちゃおうとか思っちゃったりなんかしてしまうもんだから、サビはもうものすごくフィリップ・ベイリーのとこへ行っちゃうんだけど、Aメロはいきなりモーリス・ホワイトがバーンとはいってくるから、本当に一人クリスタル・キング。

中居:
聴いてて飽きないからいいですよね、1曲聴いてても。そういうギャップがあるから落ち着いて聴けたりっていうのがありますしね。聴きかたもやっぱり変わってくるでしょうし。僕なんかも聴いた時は、中西さんだと普通に聴こえるんですよ。ごく普通に歌ってるなってCDなんかでもよく耳にしたりするんですけども、実際に我々に「Woman」やるからっていわれた時は本当、びっくりしましたね。「これ、難しいよぉ」って。まあ、僕らのレベルももちろんあるんでしょうけどね。

中西:
いやいや。

中居:
音域の広いかたなんだなぁって思ったんですよ。

中西:
まあ、確かに広いですね。女性の音域までいけちゃいますからね。カラオケとかに行くとピッチをずらせるじゃないですか。で、どっちにずらしていっても。

中居:
わかんないんですよね。

中西:
そう。上のほうにずらしていくと上が出なかったり下のにずらすと今度は下が出なかったりする、みたいな感じでね。

中居:
サビが出なかったり、AメロBメロが出なかったりするんですよね。さっきもお話が出ましたけど、曲は作っても、詞は自分では作ろうとは?

中西:
だからね、気恥ずかしさみたいなものがあって、自分で言葉を書いていくってのが、照れちゃって照れちゃってしょうがない感じがあるんですよ。

中居:
照れですかねえ。

中西:
ええ、それもあるんですけど、何か伝えたいことみたいなものが、だんだん本当に生まれて来つつあってね。「ひょっとしたら書けるかもな」っていうのが、ここ最近になって、やっとですけどね。

中居:
今まで書いたことは?

中西:
ないです。1曲もないの。

中居:
へぇー、珍しいですねえ。

中西:
そうですよね。

中居:
アーティストの方が、詞だけを書いて曲は誰かにおまかせするっていうのはありますけど、曲は自分で書いて詞はまかせるっていうタイプの人は多分、少ないんじゃないんですか?

中西:
そうですよね。向こうだってエルトン・ジョンみたいな人がいてね、バーニー・トーピンっていう片腕みたいな作詞家の人とタッグを組んでやってるっていう人も中にはいるんでしょうけど、あんまりいないですよね。

中居:
日本のアーティストの中では少ないかも知れませんよねえ。

中西:
そうですよねえ。で、日本のアーティストでもね、なんかあまり分業することを良しとしない風潮があるかなぁと思ってね。アーティストとして認められるには、詞も書くし曲も書くし、アレンジすらやっちゃう、みたいな。そのほうが価値が高い、みたいな。そういう感じが。まあ、確かに何でも出来たほうがいいんだろうと思うけど、得意不得意は人にはいろいろあったりね。

中居:
向き不向きもありますしね。

中西:
うん。だから、全部やらないって決め込んじゃうのは変かも知れないけど、自分の中で「作詞は人にまかせる」みたいな割り切りっていうか、そういうものを持っていろいろな人とやっていくっていうかね。その中でワクワクしながらいろいろなものが生まれていくっていうのも有りだろうなって思っててね。曲作りもそうなんですよ。だから最近は一人じゃなくて、二人で作ったりとかね。

中居:
へぇー。 何を歌おうとして、うーん?聴いている人に何を伝えたいって思います?

中西:
何ていうのかなあ?なんかいろんな物事考えるね。きっかけになったりとか、ポジティブに考えるだけじゃなくて、まあ「ああ、この人も傷ついて落ち込むのか」っていうこともあるだろうし。そういうところでなんか自分の気持ちを立て直したり自分の考えとかを納得できるね、そのきかっけになるような、何かそういう歌だといいなぁというふうには思っててね、うん。べつに生き方を提示するみたいなおこがましいことは何も思ってないんだけど、でもそういう曲を聴いて励まされたりとかっていうようなことっていうのはやっぱりありましたしね。だからそういう役割を僕自身もできればいいかなっていうふうにはね、思ってるんですけどね。多分、SMAPの曲なんかもきっとそういう力を持っててね、本当に「あっ、なんか気持ちを楽にして頑張ろう」とか思えちゃうようなことって多分たくさんあるんだと思うからね。

中居:
そうですね、歌を通じて何かね。例えば勇気付けられたとか、聴いてる人の何かためになれば、なによりっていうふうな気持ちでありますけどね。

中西:
いいかなぁって思ってますけどね。

中居:
そうするとでも、中西さんはねぇ。僕なんかバラエティだったりお芝居とかいろいろやってますけど、歌だけですもんね。

中西:
そうですよね、うん。でも歌だけっていう中にもけっこういろいろ深いテーマがやっぱりあって。今回アルバムの中でピーボ・ブライソンていう人と一緒にデュエットやってみたりとかね。まあ、小田和正さんと一緒に仕事をさせてもらったりとかするなかで、やっぱり歌に対してもいろいろ小田さんにも言われたりとかするなかで、何か「ああもう一回ちゃんとやらなきゃなぁ」とか思うようなことたくさんあってね。僕もだからボイストレーニングを始めたりとかね。

中居:
今ですか?

中西:
ええ、ちょっとチョコチョコっとやってるんですよ。

中居:
それ何のためにですか?

中西:
けっこうね、なんていうんですかね?力入りやすいってタイプなので、わりかし一生懸命なっちゃうからね、自分でグッと力入れて歌っちゃうんですよ。で、もうちょっと聴くほうも楽に聴きたいと思うから、楽に歌えるようになりたいなって思って。なんか速球投手だったのが変化球も覚えたいみたいな感じなんですよね。いろいろ吸収があったほうがいいだろうなと思って。一色しか持ってない筆を何色か持ちたいなっていう感じなんですよね。

中居:
それはでも贅沢な悩みですね、僕から見ればですけど。何色も欲しいですか?

中西:
やっぱねえ、いろいろほらバラードもありアップもありね、バラードではソフトに、バラードの世界でもほら感情はいろいろあるわけでしょう?幸せ感たっぷりなものもあれば、少し打ちひしがれてみたものもあれば、何かあんまりトーンが変わらないような感じがしてね。

中居:
でもこんだけ中西さんのような音域をもっていればね、いろんなものがね。

中西:
技術的なことだけじゃないんだろうなぁとは思うんですよね。その精神的なものっていうかね、まあ、いろんな経験も積んでいって心がタフになったりとかね。何かしないとやっぱり歌も変わってこないような気はしていてね。まあ、ボイストレーニングやるだけでパッと変わっちゃうもんではないんだろうなってふうには思ってるんですけど、とっかかりとして何かやりたいって気持ちがすごく強くてね。本当にけっこうピーボの歌とか聴いて打ちひしがれちゃって、もうやれたから良かったみたいな。ほら、「またお金を積んでやったんだろう」みたいなノリになっちゃうだけじゃなくて、僕としてはものすごくやれたことはうれしかったんだけど、残るものがけっこう大きかったんですよ。「凄すぎるわぁー!」って、目の前でカール・ルイスが走り抜けちゃいましたみたいな気分なんですよ本当に。「わぁ!凄すぎる!!」っていう、あまりにレベルの差を感じて。だから「何かやれることやらないとダメだな」ってふうにね、何となく思ってましたね。

中居:
それは僕が聴いたらどうなっちゃうんですかね?

中西:
うーん?多分倒れちゃうかなぁ。すっごいよ。

中居:
スゴいでしょうね。中西さんが聴いて唖然とするぐらいですから、僕どうなっちゃうんだろう?飛んでっちゃいそうですね。

中西:
いやぁ、もうね、これ、「アアー」って言っただけの声の情報量っていうかね、ええ。

中居:
何でしょうかね?

中西:
ね。うん、いや、いいもんもらってんだなって感じがするんですけど。そういう最初からの差ってことだけじゃなくてね、そこであきらめるんじゃなくて、ちょっと近付きたいなっていうふうにはやっぱ思うわけでね。

中居:
純粋に好きだからこそ前向きな気持ちになるでしょうし。

中西:
最近、本当にいろんな外側の人たち、日本だけじゃなくて向こうの人たちとやれるような環境がちょっとずつ生まれたりしてね、非常にワクワクしてきててね。

中居:
今の日本の音楽界っていろんなアーティストがいて、いろんな音楽が出てきたりしてますよね。で、今までに聴いたこともない、新しいものが出てきたりもするでしょう。そういうの聴いて「あ、こっちのほうがいいな」って、変な影響とかは受けないんですか?

中西:
そう。自分もかなり混沌としてたんですよ。そういう意味でもZooとか、自分も「Woman」とかで世の中に出てきた頃っていうのは世の中が求めていることと、自分のやりたいことっていうのがものすごく近いところで合ったんだろうなって気がするんだけど。そういうふうな出方をしてくると、自分がそうじゃなきゃいけないような気分に。時代をウマくつかまえて、うまい切り口で出していくのが自分のキャラクターみたいに、自分に変なプレッシャーをかけるようになったりとかね。そういうところがすごく窮屈になってきて、やっぱり自分でつかまえきれる程には時代は生易しくなくて、思いがけない方向にゴロゴロッと転がっていっちゃったりとかするんですよ。で、今ってけっこうそういう時代かなって思うんですよ。

中居:
そう、それはあるかも知れないですね。

中西:
SMAPはどこに行くんですかね?

中居:
SMAPはですね、あの……。

中西:
すげえやっぱり、豪華なグループだなぁって思うんですよ。

中居:
そうですか?

中西:
いやぁ、もう。俺テレビ見てるとウルトラ六兄弟って感じしますもんね。よくあの、例えばウルトラマンエースがやられそうになってゾフィーがやってくるみたいな。「あっ、ゾフィー来ちゃったよー」みたいな、なんかそういう感覚で。何ていうのかな?中居君がいる、キムタクいる、っていうような感じで「うわぁー、豪華だなぁ」っていうふうな見え方がしていてね。やっぱりソロとかになっていくんですかね?もちろんソロ活動を今してるんですけど、音楽的な部分で言うと。俺がインタビュアーみたいになってますけど。

中居:
僕ら音楽に関しては、多分ずっとグループ一緒ですね。で、まだお芝居とかバラエティいろいろやってますけど、音楽だけなんですよ、自分たちのやりたいことをやってないのは。

中西:
いやぁ、聞きたいなあ、そのやりたいことって何?

中居:
もうやっぱり自分たち五人が五人、千差万別でみんなやりたいことが違ったり、趣味も違うし、今まで聴いてきた音楽も違いますし、好きなアーティストも違いますし。それでやっぱりみんなもちろん意見もばらばらになりますし。で、音楽スタッフがやりたいことも僕たちの間でまたぜんぜんかけ離たりしてます。もうだから音楽に関しては全部任しちゃってますね、アルバムとシングルに関しては。だけどもコンサートに関しては僕らでやらしてくれる、だからコンサートは面白いっスよ。

中西:
ああ、そう。

中居:
だから昔はまだね、あの、アレなんですけれども、最近は各コーナーをやっぱり一人ずつ持って。

中西:
自分のやりたい音楽をそこでやっちゃうんだ。

中居:
やっちゃうって感じですよね。みんなばらばら。だから木村がロック好きだったら全部ロックですし。で、ダンスが好きな奴もいれば、バラードが好きな奴もいれば、歌謡曲が好きな奴もいれば、みんなばらばらだったりしますから。だからばらばらのコーナーができたりしますしね。だからシングルとかアルバムに関しては、本当にもうちょっとね、自分たちで出来ればいいなぁと思うんですけどもね。

中西:
うん、まあ、どっちみちやっぱりその方向には進んで行くでしょうね。それぞれの意見を入れつつ。

中居:
そうですね。まあ、いずれはやっぱりやりたいなと思いますけど。中西さんみたいな曲でもねえ作れたらね、また面白いなと思いますけど。

中西:
だから本当に誰か自分の何か好きなサウンドを表現してくれそうないいブレーンを見つけるといいんじゃないですか。で、そういう人と一緒にやっていくっていう。自分で全部やり切っちゃおうと思うとやっぱりほら。

中居:
堅苦しくて、プレッシャーもかかっちゃうしね。

中西:
うん、出来ないんじゃかっていう自分の思い込みみたいなところで動けなくなっちゃうかもしんないから。そういう人のサポート受けながらやると、一曲作れたりなんかすると「あっ、なんだ、こんな感じでやれんじゃん」みたいな。

中居:
そんな簡単なものじゃないんじゃないですか?

中西:
いやいや出来るんだって。


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