ここまで演じてこられて、いかがですか?
この作品にたずさわるまで、実際に未解決事件を専門に扱う部署が昨年末に警視庁にできて、精鋭が集まって事件に取り組んでいらっしゃるということを知らなかったので、影で大変な苦労をされているんだと感心しました。さらに、普段ニュースで事件を見ている時には見落としがちだけれど、被害者遺族や関係者の方もいらっしゃるわけで、世の中にはいろんな人生を背負っているんだなと新たに確認できました。特命4係は、そういった迷宮入りしそうな事件を再捜査して、被害者遺族の悲劇を消えないようにしてあげることに全身全霊をかけて働いている。その姿はとても共感します。
特命捜査班において、長嶋の役割はなんだと思いますか?
自分が前面に出ることはなく、メンバーに絶対の信頼をおいて任せています。時々、様子を見ながら軌道修正しつつ捜査に参加している形ですね。
北大路さんは、長嶋はどのような人物だととらえていますか?
劇中でのセリフにもありましたが、長く刑事をやっている人には多かれ少なかれ心の傷がある。長嶋にとってはそれが「杉並事件」で、発生当時に解決できなかったことを背負ってきた人なんです。捜査一課での出世できる道を自ら絶って、捜査が継続できる道に回った人なので、表には出さないけれど熱いものを感じますね。
演じるうえで意識されていること、大切にしていることはありますか?
桜木は刑事らしくない刑事で、事件を素人というか刑事ドラマですし、描かれる事件自体が非常に重いものが多いですが、僕はあえてそこを超えた"人の働く姿"をしっかり見せられればいいなと意識していました。もちろん事件解決までの経緯も大事ですが、個性あるメンバーたちがどう事件とかかわっていくのかもしっかりと見せたい。たとえば、不真面目にみえて中身は熱いとか、のんびりしているようにみえて芯が強いとか、そういう個々のスタイルがうまく出るといいなと思ってました。働いてる姿は人が生きている姿であり、それが最終的には事件の悲しみを解き放つきっかけになればいいなと。長嶋個人としては、いつも自然体でフワっとした柔らかい雰囲気を意識していました。自然体に見せるというのは今まであまり経験がなく、僕には難しい芝居でした(笑)。
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非常に信頼していますよ。カメとは呼んでいるけど、長嶋にしたら褒め言葉のようなものです。足は遅くても最後まで粘り強く取り組みゴールに向かって行くという性格を見抜いて、4係に配属させたのが長嶋ですから。そのぶん、愛くるしい部下でもあります。目に入れても痛くないくらいかわいい部下ですね(笑)。その健気さはカメ(泉)の魅力であり、だからこそ4係メンバーもサポートするんだと思います。
長嶋と泉の会話は本当に微笑ましいです!
僕も素敵だなと思います。長嶋の口調も「また泊まるのかよ、カメ」とか「カメ、大丈夫か?」などフランクで、そういう関係も新鮮に映ればいいなと思っていました。カメと呼ぶことで長嶋の愛情が感じられるし、なにより上司と部下という、ともすればシビアな関係になるのを「カメ」という一言で解消できる。4係のメンバーが彼女をフォローしようとするのは彼女の魅力ももちろんですが、室長である長嶋のそういう態度も1つの要因としてあると思います。
上戸彩さんとの共演はいかがでしたか?
とてもキュートな方です。制作発表でも話していましたが最初の頃は役作りに苦労されたようで一生懸命に役と向き合っていた。その懸命な姿がカメとリンクしていて、とてもかわいらしく魅力的でしたね。すでにご存知だとは思いますが、一緒の仕事という意味では初めてではないんですが(笑)、直接向き合って芝居するのはこの作品が初。でも長嶋とカメのいい感じのフィーリングが自然に出てきたので良かったです(笑)。
この作品を通して、北大路さんが感じたのはどんなことですか?
まず、『絶対零度』というタイトルはインパクトがありましたね。「どんな事件も完全に凍ることはない。未解決のままでは終わらせないという意味を込めて」と、台本に書かれていて、なるほどなと、とても好きになりました。ただ、人が生きていくうえで"絶対"ってとても難しいことだと思うんです。様々な選択を迫られた時に絶対にこっちだとはっきり言い切れないことは多い。作品で描かれている事件だって白黒はっきりつけたところで関係者に傷が残ることもある。その傷に対して刑事にできることは少しでも解消するように手伝うことだけ。きっちりと解決することはできないわけで、登場人物たちが事件を解決しながらももやもやした気持ちになったりするし、僕自身もどかしい思いになることがありましたね。
杉本さんの中で未解決のままになっている出来事はありますか?
人生そのものかもしれません。この年齢になると、果たして自分の人生をきちんと解決できるのか心配になります。やはり"終わりよければ、すべて良し"っていいますからね。もう過去のことに構ってられません(笑)。これから人生をどう解決していく生きていくかが重要なんです。
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