NONFIX過去放送した番組

《聖地巡礼》…と言っても、宗教の話ではありません。マンガやアニメの舞台となった実在の場所に行くことを、オタクたちは《聖地巡礼》と呼びます。そんな「聖地」の中でも、特別な場所になっている町があります。
埼玉県・鷲宮町(わしみやまち)。
これは、この町で起こった「小さな奇跡」。ひと夏のものがたり。

「萌え」は、日本の文化だあ~!

きっかけは、ひとつのアニメでした。「らき☆すた」というマンガが原作のアニメが、オタクたちの間で大ヒット。アニメに登場する神社のモデルが、埼玉県・鷲宮町にある「鷲宮神社」だと判ると、オタクたちが《聖地巡礼》に訪れるようになったのです。
それまで、9万人だった参拝客は、42万人にまで増加。地元の商工会でも、これを町おこしのきっかけにしよう、と映画製作まで手がけるようになりました。
さびれていた街が、オタクパワーをもらって活気を取り戻しつつありました。

出会いの絵馬

「もてぎ」さん、23歳。鷲宮神社に聖地巡礼するオタクたちの間では、知らない者がいないほどの有名人です。もてぎさんは、神社を訪れる度に「絵馬」を奉納しています。絵馬には「らき☆すた」のイラストを描きますが、何と、8時間もかけて仕上げます。
毎週のように増えていく「もてぎさんの絵馬」は次第にうわさになり、絵馬目当てで訪れる人も現われるようになります。はじめは、ひとりでやって来たオタクたちが、もてぎさんの絵馬をきっかけに「仲間」になっていきました。もてぎさんは、参拝1000回を目標にしています。あと18年かかる計算ですが、それが「夢」です。

伝統の神輿とオタク神輿

最初は、オタクたちに戸惑っていた地元の人々も、彼らと実際に接するうちに、「まじめ」で「一本気」な若者たちに心を開いていきました。そして、オタクたちも自分たちを受け入れてくれた鷲宮町に、特別な思いを抱くようになっていました。

そんな時、鷲宮町が近隣の市町村と合併する事に…
住民もオタクたちも、それぞれが複雑な思いでした。

鷲宮神社前の商店街で洋品店を営む成田さん(71歳)は、創業100年のこの店を、自分の代でたたむつもりです。かつて、伝統の「千貫神輿(せんがんみこし)」を町おこしのために70年ぶりに復活させた成田さんですが、後継者不足で廃業する店が相次ぐ商店街を前に、途方にくれていました。

成田さんは、ひとつの決断をしました。「鷲宮町として最後の祭り」に、伝統の千貫神輿と、オタクたちの「らき☆すた神輿」を競演させよう。オタクパワーを借りて、もう一度、町に活気を取り戻そう。

鷲宮町最後の祭り

成田さんは、「らき☆すた神輿」のイラストを、絵馬のもてぎさんに依頼します。
着々と進む、神輿の準備。しかし、成田さんも、オタクが町に来てくれるのは「ブーム」で、いつまでも続くわけがない、と判っていました。そんな成田さんの思いを知ったもてぎさんは、ひとつの決心をします。

そして、「鷲宮町最後の祭り」が始まりました。


■語り
加藤絹子(劇団民藝)

■プロデューサー
戸田有司

■ディレクター
和田 萌

■構成
加藤 伸

■撮影
池田俊巳
和田 萌

■編集
林 宏

■エンディング使用曲
「どうかこのまま」国吉亜耶子and西川真吾Duo

■制作
フジテレビ
オルタスジャパン