NONFIX過去放送した番組

北海道、稚内からおよそ50キロの海をへだてた利尻島。
海産物で生計をたてる北の孤島。4月なのに吹雪が舞う小さな中学校で、新学期が始まります。でも、ここの始業式はちょっとだけ普通とは違います。

全校生徒23人。そのうち6人は日本全国からそれぞれの理由で親元をはなれてきた「海浜留学生」と呼ばれる子どもたちです。

過疎化と少子高齢化の時代、学校を存続させるために始まった利尻町が始めた制度。
でも、いつのまにか、教育再生の今という時代が映し出されるようになりました。
イジメにあい不登校になった子…都会のマンモス校に通えなかった子…
まだ中学生なのに子どもと離れて暮らさねばならない実の親と他人の子どもの面倒をみる里親と呼ばれる島の人々。そしてそんな子どもたちと向き合う先生たち。
厳しい大自然に囲まれた学校を1年間見つめます。

この年、3年生には、今年4人の留学生が九州や沖縄から来ました。1年生の海浜留学生は人前でほとんど話すことができないイッセイと、それとは対照的に明るいマサの2人。
この学校で6年間も海浜留学生を見守り続けてきたホリ先生。
1年生の難しいクラスの担任アサイ先生はまだ新米先生。アサイ先生がこの学校に来て3年、ホリ先生とは師弟関係です。夜も酒を酌み交わしながら子どもたちの話をする先生たち。ベテランの松田先生も留学生と向き合ってきた先生の1人です。

これまで10人以上の留学生と向き合ってきた里親、高橋さん。3年生のタカシと1年生のマサが、この家で期間限定の親子暮らしをしています。

海浜留学は実の親にとっては大きな経済的負担を強いることになります。
それでも島にやって来たタカシ。福岡ではいじめが原因で不登校でした。
マサは、二人の優秀な兄弟にはさまれた劣等感から利尻に来ました。

新学期が始まってすぐ1年生のクラスに早くも問題が起こっていました。
コミュニケーションがうまくとれず学校生活に支障を生じて利尻にやってきたイッセイ。
教室から足が遠のきはじめました。利尻に来ても子どもたちが抱える問題がすぐ解決するわけではありません。日々子どもたちと向き合うこと。それが唯一の解決方法。ホリ先生がイッセイと向き合います。「嫌なら今すぐ親のところへ帰れ、でもオレはいつもお前のことを見てるぞ…」イッセイは、小さな一歩を踏み出しました。

3年生の留学生3人。ホナとマスミは同じ中学校から留学してきました。
タカシも含めた3人。共にイジメにあいすがる思いで最後にたどりついたのがここ利尻でした。心に負った傷、手首を切った傷。数えきれない傷を負った3人。今、日本中にあふれる子どもたちの姿です。ホナとマスミは大きなチャレンジをすることになりました。
自らのいじめの体験を利尻町民の前で発表するのです。それは、改めて自分と向き合うことでもあります。
涙ながらに過去の辛い思いを語る二人「私はイジメにあい死のうと思いました…」
子供たちが自分の手で「命を絶つ」刹那・・・ホナとマスミ。
決して見捨てられることのない、この島で、涙と笑顔を取り戻しながら未来を捨てずに生きています。

利尻の短い夏。みんなで力を合わせなければならない学校祭。留学生たちにとっては入学式以来、実の父母に自らが変わった姿を見せる場でもあります。
先生も生徒も苦しみながら、喜びながら成長した1年。最後はみな海を越えて旅立っていきます。4月の入学式で見せた顔とは別人のような顔で…

教育再生が叫ばれる今という時代に、小さな中学校を見つめた1年。先生、子どもたち、親。それぞれの心が日々向きあうことに教育の真実がありました。

※これは平成17年~18年の1年間、北海道利尻町立仙法師中学校に密着した番組です。