NONFIX過去放送した番組



日本の小説にはまる韓国人が急増している。日本の小説は、1999年には年間219作品が翻訳され、それが04年には364作品に増え、05年になると、ベストセラー50位で日本の小説の占める割合が初めて韓国の小説を抜いた。
なぜ今、韓国で日本の小説がうけるのか。

今回番組のディレクターを務めるのは、小説家でもある山田あかね。山田の小説「ベイビーシャワー」は日本で出版後半年もたたないうちに、韓国で翻訳出版された。なぜ、自分のような無名な作家の小説がすぐに翻訳されるのだろうか…。嬉しいながらも、この意外な展開に疑問を感じた山田自身が、現在の韓国における日本文学事情を探るため韓国へ赴いた。

ワールドカップの日韓共同開催以来、お隣の国・韓国への親近感は高まっている。しかしその一方、反日感情が高まっているなどのニュースも入ってくる。韓国で日本文学がどう取り扱われているかを知ることは、韓国にとっての今の日本の位置を知ることにもなるのではないだろうか。そんな思いで韓国へ向かった山田が知ったのは、驚くべき事態だった。

韓国では「日本の小説は若い女性向けの軽い読み物」として捉えられていた。

韓国で文学といえば、最近までは「民族文学」をさしていた。韓国にとって20世紀は、植民地化や南北分断など、政治的な多くの痛みをともなった時代だった。民族文学とは、それらの歴史テーマを積極的に取り入れ、韓国という国が体験している問題や苦痛を描くことがメインだった。いってみれば、「重く苦しいのが文学」だったのだ。
しかし、近代化が進み、暮らしが豊かになってくると、「民族文学」の重さに興味をもてない読者が増え、文学離れが起こってきた。そんなとき、出現したのが、手軽なインターネット小説や、日本から入ってきた「軽い文学」だったのだ。国の背負う苦痛と無縁の、身の回りのことだけを描いた、小説。韓国の若者は、その「軽さ」に飛びついている。

日本の植民地時代を体験した祖母に反対されながらも、日本文学を専攻した大学生、韓国の若手人気インターネット小説家、日本小説をヒットさせた出版社起業家、そして、「軽い」読み物を「文学」とはみとめない人たちなどを山田が訪ねる。

歴史と文学、小説と私、韓国と日本。
「韓国における日本小説ブーム」への疑問を出発点に始まったドキュメンタリーだが、そこには、2つの国にまたがる広大なテーマへの答えが見え隠れする。

■企画
山田あかね
■プロデューサー
横山敏子
■ディレクター
山田あかね
■アシスタントディレクター
野崎有紀
■撮影
谷茂岡稔
■制作
テレコムスタッフ