NONFIX過去放送した番組

【企画意図】

「417万人」この数字は2000年に導入された介護保険を受けている高齢者。
この数は年々増加している。誰にもいずれ「介護」はやってくる。
高齢化社会の中、介護福祉士を目指し真っ向から向かい合う若者たちがいる。
彼らは学校での授業と実習現場の違いに戸惑う。
一方、寝たきりの奥さんの介護と仕事を両立しながら生活する夫。
終わりの見えない介護生活。体力的にも精神的にも金銭的にも、家族の負担は大きい…。介護保険の限界を訴える夫を6年間の密着取材で追う。

【内容】

介護する介護福祉士は昨年度だけで5万人以上増えている。その半数近くが若者たちです。彼らは何故「介護の道」を選んだのか。
介護福祉士を目指し専門学校へ通う谷口笑(えみ)さん(19) と 中村優里さん(19)。学校の授業で習った事と実習現場でのギャップ。日々変わる高齢者の体調管理、そしてコミュニケーション…。そこで彼らが学ぶものは。

12年前、脳梗塞で倒れ半身不随で寝たきりの妻、久子さん(74)の介護を続ける夫、松中樫夫さん(61)。夫婦の介護記録を6年間追いかけた。
1999年秋、夫婦は介護保険の申請を行い、2000年4月から介護サービスを受けている。子どものいない樫夫さんは、近くのセメント会社で重機を扱う仕事をしながら、朝、夕の食事を作り、久子さんの介護を一人でしている。昼は、介護保険で毎日3時間ヘルパーさんに来てもらい身の回りや昼食の世話をお願いしている。
昨年4月、樫夫さんは定年を迎え嘱託になり給料が手取り30万円から17万になった。介護サービスの個人負担金がかなり家計を圧迫している。
さらにこの年、久子さんは入退院を繰り返すようになり240万円あった退職金も底をついた。病室で一人きりの久子さん。介護保険を使い、自宅のようにヘルパーさんを病院に来てもらえないか、とお願いしたが病院では「介護ではなく医療ですから」と断られた。
樫夫さんは「よく知った人に世話をしてもらうことがどんなに大切なことか国は分かっていない」と嘆く。
そこには「介護保険」と「医療保険」との深い溝が横たわっていた。
今年1月、樫夫さんは、突然担当医から久子さんの「大腸ガン」の告知を受けた。体が弱っていて手術も出来ない、余命わずかと宣告された。
3月11日、久子さんは息を引き取った。

夏、樫夫さんは6年前、車イスを押しながら夫婦で巡礼をした思い出の松山にいた。奥さんの遺影を手に一人での巡礼です。
樫夫さんは「病院でも介護保険が適用され、せめて自宅のようにヘルパーさんが来てくれたらもう少し長生きできたのでは」と悔やんだ。

今年10月、介護保険法が改正され施設を利用している個人の負担額が増えることになった。
現場の人達は「介護は信頼関係が大事なのに、国は、お金で換算する」と嘆く。
高齢社会を迎え、今介護の現場に「何が一番必要なのか」そして、これからの介護を担う若者たちは。

■ 制作 ラダック
■ プロデューサー 佐藤広光
■ ディレクター 清末亀好
天田小百合