NONFIX過去放送した番組

【番組概要】

「核開発疑惑」「拉致問題」を抱え、米国から“悪の枢軸”と名指しで批判されている北朝鮮。
核問題について話し合う「6カ国協議」でも解決の糸口は見えず、北朝鮮は、依然“極東アジアの脅威”であり続けている。一方、米国は北朝鮮を取り囲むように軍隊の再編を大胆に推し進めている。

現実的に、北朝鮮の脅威はどれほどのものなのか?
米軍再編の狙いは「北朝鮮」だけなのか?

通常、国家の思惑は“政治の世界”に潜んでいて見えにくくなっているが、国家戦略に直結している「軍事」は、そうした思惑を丸裸にしてしまう。

「軍事分析」=国家の“見えない思惑”が“見える”ようになる

北朝鮮、米国、韓国、ロシア、中国、そして日本。
番組では、各国の思惑が複雑に入り組んだ「極東情勢」を“軍事の視点”から読み解いてゆく。

【番組内容】

北朝鮮・軍事力の実態

北朝鮮の核問題を話し合う「6カ国協議」。しかし、北朝鮮は頑なに「核」を放棄しようとしない。その理由は北朝鮮の軍事力に隠されていた。2005年1月、米国の研究グループが100枚以上に及ぶ北朝鮮の衛星写真を公開した。そこには長年噂されていた「地下軍事施設」がはっきりと写っていた。施設周辺には「ミグ戦闘機」が数機。海軍施設には、特殊部隊や工作員の潜入に使われる小型潜水艦。しかし、いずれの兵器も、軍事パレードで目にする戦車部隊と同様、“旧型”のものばかり。米軍と正面から戦えば、まず勝ち目はない。北朝鮮が自信を持っている「地下軍事施設」も、米国の「地下貫通爆弾」(2mの強化コンクリートを突き破る)を落とされれば、ひとたまりもない。つまり、北朝鮮が米国に対抗する軍事的手段は「弾道ミサイル」しかないのである。

北朝鮮を封じ込める「ミサイル防衛」

現在、2種類の弾道ミサイルを保有している北朝鮮。93年日本海に着弾した「ノドン1号」は射程距離1,300kmとされ、日本全域を射程内に入れている。98年に日本上空を通過した「テポドン1号」の射程距離は1,600km~2,200km。さらに、開発中と伝えられる「テポドン2号」は4,000km~6,000kmにまで達すると言われ、それが本当ならグアムまでミサイルが届く。だが米国は、北朝鮮の弾道ミサイルを封じ込める「ミサイル防衛」の配備を着々と進めている。「ミサイル防衛」とは、弾道ミサイルを探知し、迎撃ミサイル等により撃墜するための防御システムで、その“中核”を為すのが海上に配備される「イージス艦」。2003年12月、ハワイ沖で行われた「ミサイル迎撃実験」では、イージス巡洋艦「レイク・エリー」が迎撃ミサイル「SM-3」を発射、模擬弾道ミサイルの迎撃に成功した。そんなイージス艦をはじめとする「ミサイル防衛」のシステムを解析する。

米国が警戒する“不安定の弧”

アジアでの「ミサイル防衛」の配備を進める一方で、“機動性と迅速性”を重視した軍隊再編に取り組んでいる米国。最大の目的は「不安定の弧」と呼ばれる中東から北東アジアに連なる“弧状の地域”。北朝鮮はその先端に含まれている。「不安定の弧」は大規模な紛争が起こりやすく、テロや大量破壊兵器の温床地帯になりやすい、としてアメリカは警戒している。

―“機動性と迅速性”を重視した強力な軍事力で「不安定の弧」を抑止する

これが米軍再編の核心である。再編の拠点となっているのは「グアム」。かつては後方支援基地に過ぎなかった「グアム」は今、作戦基地へと姿を変えようとしている。「B-52爆撃機」、「B-2ステルス爆撃機」、トマホーク巡航ミサイル154発を搭載する「改造型ミサイル原潜」、数千人が1ヶ月戦えるだけの大量の物資を積み込むことができる「事前集積船」…など、機動力に富んだ強力兵器が続々と「グアム」に配備されている。将来的には、「空母」「戦闘機」「偵察機」なども加え、グアムの戦力化はますます進んでゆくと見られている。

米軍が見据える“本当の脅威”

アジアにおいては北朝鮮を取り囲むように進められている「米軍再編」。しかし、米国の軍事演習を分析すると、北朝鮮の影に隠れた“本当の仮想敵国”も浮かび上がってくる。2004年11月、ハワイ近海で行われた軍事演習では“敵味方の船が入り乱れる”状況を想定し、敵艦をピンポイントで攻撃するテストが実施された。“敵味方の船が入り乱れる”―実は現在、この状況に的確に対応する「海域」が存在する。「台湾海峡」である。海の向こうに広がるのは「中国」…

急速に強大化する「中国軍」

96年「台湾海峡危機」、01年「米中軍用機接触事故」など、これまでに何度か“軍事的なニアミス”を起こしている米国と中国。中国は今、順調な経済成長を背景に、多額の防衛費を計上し「軍の近代化」を進めている。かつて総兵力300万人とも言われた「人民解放軍」は現在200万人を切るまでに縮小された。
代わりに空軍力や海軍力、そしてミサイル技術において米国に対抗できうる軍事力を着々と養ってきている。記憶に新しい04年12月の「日本領海侵犯事件」。これは“軍事的な自信の高まり”が生んだ日米への挑戦状とも取れないこともない…

米中「冷戦」の可能性 カギを握るのは北朝鮮

“新たな冷戦”へのカウントダウンはすでに始まっている、とも言われる「米中関係」。しかし6カ国協議における両大国は、「北朝鮮」という共通の問題に対処するために握手している。つまり、米中関係の今後を左右するのは北朝鮮なのである。果たして、北朝鮮は「核問題」にいかなる解答を示すのか?

各国の思惑が交錯する「極東情勢」
軍事の視点からリアルに、具体的に解体してゆきます。