NONFIX過去放送した番組

■ marginal 〔形〕
1.へり(縁、端)の
2.周辺的な、あまり重要ではない
3.不毛の、生産力がない

 音楽には、そこで暮らす人々の感じ方、考え方、暮らし方が色濃く刻みこまれている。人々の感じ方、考え方、暮らし方が変われば音楽も変化するように、音楽の変遷を辿ればその土地の歴史が浮かび上がってくる。
 北はアイヌ、南は沖縄・八重山列島。ともに悲しい歴史をもつ民族・地域の音楽に焦点を当て、その地に広がる豊かな音楽世界を見つめていく。

 <日本>でありながら<本土・日本>ではない、辺境の音楽(マージナル・ミュージック)。
 人間の営みの記憶や生命力を映し出す“音楽”の核に迫る。

人にとって音楽とは何なのだろう?

○アイヌ…幻の弦楽器トンコリと、口承芸能ウポポ

 アイヌ人を父に、日本人を母に持つミュージシャン。東京芸術大学を卒業後、自身のルーツから逃げるかのようにNYで生活していた彼が、アイヌである自分と向き合うことを決意したのは30歳の時だった。旭川に居をかまえた彼は、近所にあるアイヌ博物館で永らく演奏者の途絶えていた樺太アイヌの伝統的弦楽器トンコリを“発見”。独学で製作法と演奏法を習得し、この楽器を現代に再生し、活発に音楽活動を開始。アイヌの伝統に現代的な感覚を盛り込んだそのサウンドは、国内よりも海外での評価が高い。
 アイヌの音楽の特徴は、文字ではなく口で伝え遺されてきた口承芸能であること。現在、ウポポ(唄)やムックリ(口琴)と呼ばれる芸能は、アイヌ文化伝承保存会で、若い世代にも引き継がれている。東京都中野区に住むアイヌ人ボーカリストの女性。幼少期から祖母に阿寒・浦河両アイヌ文化を学んだ。この芸能を下の世代にも伝えたいと、日本各地をまわっている。

○沖縄・八重山列島…伝統、そして革命の島唄

 石垣島出身の若手NO.1民謡歌手。彼の出身地である八重山列島(石垣島・竹富島・西表島など沖縄南西部の島々)は民謡の宝庫として知られ、伝統的なスタイルの島唄が重んじられている。八重山民謡界の大家だった父親から薫陶を受け、幼い頃から数々の民謡コンクールで受賞。しかし、“いま”の聴衆を感動させる音楽でなければ歌う意味がないと、“伝統”から背を向けた活動を行うことを決意。沖縄民謡とポップスを融合したバンドやジャズを融合したユニットの活動を行い、沖縄では絶大な人気を誇っている。しかし、首里城のステージにだけは何があろうと立たないと決めている。
 彼の出身地八重山は、首里王府に苦しめられた悲劇の歴史をもち、そして、八重山の唄はその過酷な歴史的背景から生まれてきたものだ。

○アイヌと沖縄が交わる瞬間…辺境(マージナル)の向こう側へ

 「辺境」の地であるという理由だけで蔑まれてきた、アイヌと八重山。
 「辺境」の地であるが故に豊かな音楽を育んできた、アイヌと八重山。
 番組では、東京から遠く離れた「辺境」の地に根ざすミュージシャンたちの音楽活動と、その日常生活を見つめていく。またアイヌと沖縄・八重山の歴史や音楽的背景を取材し、その地の音楽がどのようにして誕生したのかを考察する。

 彼らの音楽に耳を澄ませてみると、民族の記憶や伝統が“音楽”という形で楽しまれ、刷新され、未来に橋渡しされていることを知るだろう。またそれは、彼らから紡ぎだされる音楽が、あらゆる枠組みを超えているにちがいない。本来、音楽には「中央」も「辺境」もないのだから。

■ プロデュース 浅野直広(テレビマンユニオン)
吉田 豪(フジテレビ)
■ ディレクター 浅野直広(テレビマンユニオン)
■ 制作 フジテレビ
テレビマンユニオン