NONFIX過去放送した番組

日本全国には6万店の鮨屋がある。
家族相手の一皿100円の回転寿司から、接待で使うような一貫数千円する高級鮨屋まで大小様々だ。

そんな全国津々浦々、数多ある鮨屋の頂点に立つ店がある。
「すきやばし次郎」。
銀座・数寄屋橋の交差点からほど近い古びたオフィスビルの地下1階にある、わずか10坪ほどの小さな店。そしてこの店の主人・小野二郎、彼こそが今、日本で最も旨い鮨を握ると言われている男だ。



鮨を握って半世紀、既に喜寿を迎えた彼を賞賛する声は衰えるどころか益々高まっている。多くのグルメ評論家が「日本一の鮨職人」と絶賛し、フランス料理の三ツ星シェフがわざわざ海を越えて食べにやってくる。
その技・仕込みの全てを収録した単行本は、この分野では異例の10万部を売り上げている。「料理人には珍しい左利き」「手にシミができないように外出する時は常に手袋をする」といった少々劇画チックな逸話も相まって、もはやその存在は生きた伝説となっている。




しかし、どうして彼の名前だけがそれほどまでに突出しているのだろうか。
他の鮨と何がそんなに違うというのだろうか。
虚像なのか、実像なのか。
たかが鮨なのか、されど鮨なのか。
そんな素朴な疑問を確かめたいと思った。



そしてもう一つ。
彼には2人の息子がいる。2人ともこの道20年以上のベテランで、一人前というには十分すぎる経験を小野の元で積んでいる。それでも小野は一日たりとも店を休まず鮨を握り続ける。そこには自分が歩んできた通を息子が継いでくれる幸福感と同時に未だ自分を踏み越えていけないもどかしさが入り交じっているように感じる。「すきやばし次郎」の味とは一代限りのものなのか。同じネタを握っていても息子が小野を超えられないものとは何なのか。そうした親子関係を通じて、彼が一鮨職人としてこだわり続けているもの、心残りなものとはなにかに迫る。


■ ディレクター 高橋伸征
■ 撮影 杉下光二
■ プロデューサー 伊豆田知子
吉田 豪(フジテレビ)
■ 制作 スローハンド
フジテレビ