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あいりん地区

あいりん地区

 約800メートル四方の地区に、約2万人の日雇い労働者が住む町、大阪市西成区にある「あいりん地区」。
 不況のあおりをまともに受けるこの町は今、戦後最悪の事態に見舞われている。
 飢えや病で一日に行き倒れる人の数は約20人。そんな中もっとも重傷なのは、アルコール依存症や酒の飲み過ぎを引き金とする末期合併症(糖尿病や薬物依存)の患者だ。あいりんと酒は切っても切れない関係にある。

 そんな彼らと真正面から向かい合い、酒を飲まない人生に導こうとする施設がある。キリスト教会系の牧師が中心になって活動している「喜望の家」である。
 この番組では、「社会を映し出す裏の鏡」とも言われるあいりんの現状をルポすると共に、「喜望の家」を舞台に繰り広げられるあいりんの労働者の心の問題に迫る。

「喜望の家」とは

 キリスト教の教えに基づき、、日雇い労働者の街・あいりんで、障害や困難を負う労働者、特にアルコール依存症という重荷を背負った労働者の自立支援を主たるを目的として、牧師とボランティアの共働によって治療や生活自立支援の活動を行っている。 結成は1975年、現在牧師は5人。正式名「日本福音ルーテル教会・釜ヶ崎ディアコニア・センター喜望の家」。
 運営資金は基本的にカンパ活動で得ており、年間予算は約一千万円。 また、施設内にはリハビリを目的とした工芸の作業所があり、福祉施設として大阪府から約八百万円の補助金が出ている。
 中心的な活動は、患者たちが通って受ける「自立プログラム」と呼ぶカウンセリング。「お酒に左右されるのではなく、自分の人生の主人公に自分がなろう」を合言葉に、無理に酒を止めさせるのではなく、自分の心の弱さに気付いて、自発的に酒を立つように導く事がモットー。しかし、あいりんの労働者は、複雑な家庭事情などからここに流れ着いた人も多く、治療は一筋縄では行かない事が多い。

小倉さん(仮名)

小倉さん(仮名)

 番組では、平成不況のなか「あいりん地区」の青カン(野宿)が増えていく厳しい状況を背景に、「喜望の家」の代表で、牧師の村松由起夫さんとアルコール依存症の患者、小倉一雄さん(仮名)との交流を中心に描いていく。

 やめようとしてもなかなかやめられない酒。そこから見えてくる人の心の弱さ、そして複雑な半生から見え隠れする「心の闇」を小倉さんは少しずつ語り始めた。
 その「心の闇」をしっかり見つめるように諭す村松さんと、それに応えようとするが大切なことから逃げようとする小倉さん。  小倉さんの社会復帰は叶うのだろうか?
 この葛藤は、ことあいりん地区の労働者だけにかぎらず、人間が抱える「心の弱さ」に通じるものである。
 アルコール依存症のあいりんの人々をドキュメントすることで、そこから見えてくる人間の普遍的な「心の闇」にまで迫り、生きていくことの辛さ、哀しさ、そして喜びにまで敷衍することを目指している。

 テーマは「自分をみつめることの難しさ」です。

あいりん地区の労働者

あいりん地区の労働者

■プロデューサー
味谷 和哉(フジテレビ)
服部 仁史(日本電波ニュース)
■ディレクター
西橋 基彦(日本電波ニュース)
■制作著作
フジテレビ
■制作協力
日本電波ニュース