1999年10月17日(日)
犬の老いは人の老いによく似ています。つまり“老犬問題”があるわけです。
これは、老いた犬を介護する老夫婦を、1年間追い続けたドキュメンタリーです。
散歩に出る玉林さんとコロ
かつて犬は10年生きれば長生きと言われた。しかし、犬を丁寧に扱う飼い主が多くなり、感染症の 減少もあって、現在では平均寿命が約10歳となり、15年、20年と長生きする犬もまれではなくなった。
寝たきり、ぼけ、床ずれ、視力聴力の低下・・・。犬も人間と同じような 老いの症状があらわれ、 介護が必要になってくる。しかし、犬にはデイケアやホームヘルパーなどの福祉はなく、飼い主だけで 介護しなければならない。老犬が増えるにつれ、老いの介護に苦しむ家族が増えてきているのだ。
介護する玉林さんとコロ
子供たちが独立し、2人だけになった玉林さん夫妻(夫・勝太郎さん76歳、妻・静子さん71歳)は
、寂しさを埋め合わせるため、生まれたばかりの柴犬、コロを飼い始めた。それから16年が過ぎ、玉
林さん夫妻は、老いた飼い犬の介護に直面した。
コロは足腰が衰え、次第に歩けなくなってきた。玉林さんは、一日でも長 く歩かせたいと、コロを
台車に乗せて散歩に連れて行くように心掛けた。しかし、心臓機能の衰えから、ある日、激しい発作を
起こしてしまい、
完全な寝たきり状態になってしまった。
流動食を食べさせてもらうコロ
コロは、固形物が食べられず、全て流動食にしてやらねばならない。糞尿も垂れ流しになり、常に清 潔にしてやらねばならない。床ずれを防ぐため、一定時間おきに寝返りをさせてやらねばならない。何 か用事があるときは、深夜でも鳴くため、夜も介護を休めない。 獣医は、「飼い主が支えられる限りがんばってほしい」と言う。「犬も思い通りに動かない自らの体 に不安を感じている。その不安を癒してやれるのは、犬が最も信頼している飼い主しかいない」と。
しかし、介護の負担があまりにも重く、家族で支えきれなくなり、安楽死を依頼する飼い主も少なく ない。取材で訪れた行政の動物処分場には、飼い主から捨てられた10歳以上の老犬の姿が多数見られ た。
エサを与え、可愛いと頭を撫でてやるだけでは、犬を飼うということにはならない。犬が本当に家族
の力を必要としているときこそ、犬を飼うことの本当の意味が問われることになる。
玉林さん夫婦は、どこまでコロの老いを支えるのか?
これは、飼い犬の老いを懸命に支え続けた介護の記録である。