#132 スタッフからのメッセージ
■昔から内陸部の山の中で生活を続けてきたコルシカにとって、海岸線にある町は比較的新しい町。その多くは、穏やかで温かい地中海に面するリゾート地として栄えています。港町といっても、漁師の数は少なく、漁港といわれる港も小さなものばかりが海岸線に点在するだけ。大きな港には、地中海を旅する人用の大きな船や海で遊ぶ人達のためのボートやヨットが溢れ、その海岸線にはリゾートホテルが建ち並ぶ。これがコルシカ島の代表的な海沿いの風景と言って良いと思います。今回、取材したカルビという町も、そういったリゾート地のひとつ。港には海遊び用の船が溢れ、すぐ近くには綺麗な砂浜が続き、さぞかし夏のシーズンには、地中海周辺の国々から集まった人で溢れているんだろうなと思わせる、そんな場所でした。そして、その町が、あの海の冒険王とも呼ばれているクリストファー・コロンブスが生まれた場所だと聞いて、実は、少し半信半疑で打ち合わせに臨んだというのが、今回の取材でした。
コロンブスといえば、何度も大航海に出掛け、遂にはアメリカ大陸を発見した事で有名です。ところが、その活躍の時代については多くの資料が残っていますが、生まれた場所、そして、その後、どうのようにして大航海をするようになったのかなどの経緯に付いては多くは語られてはいないのです。一般的には、イタリアのジェノバという町で生まれ、若い頃から航海に関わっていたような事が言われていますが、生まれた日付さえ確かな記録が残っていないのだそうです。そんな背景の中、敢えて、カルビの町が、「コロンブスが生まれた町」として名乗りを挙げた理由とは…。
まず、ひとつは、コロンブスが生まれたと言われる1451年頃は、まだ、コルシカがジェノバ領だったこと。これにより、一般的にジェノバ出身だったと言われているコロンブスが、この町の出身だとしても、その節は間違いではないということ。そして、もうひとつが、コロンブスの航海日誌に書かれていた魚の名前を意味する言葉「トニーナ」でした。彼は、航海日誌の中で魚の名前をいくつか列挙しています。その中のひとつ「Tonina」という言葉が、ここカルビ周辺で使われている方言で「カツオ(フランス語では「ボニータ」というらしい)」という意味なのだそうです。今は名前が変わってしまっていますが、カルビの町に面する海の沖に島があり、その島には昔、「トニーナ岬」なる地名もあったようで、地元の人曰く、「その周辺ではカツオがたくさん獲れた」ということ。更には、カルビの海に突き出た旧市街の中には、コロンブスが幼い頃住んでいたといわれる住居の後が残っている事からも考えて、カルビの人は今、イタリアのジェノバと共に、「この町こそコロンブスが生まれた町だ」と名乗りを上げているのです。
正直言って、私には、その事実がどうなのかは知る事が出来ません。ただ、この町を訪ねてみて、「我が町がコロンブス縁の地だ」と信じる事が、この町に活気を与え、そして誇りを持たせているのは事実のようです。そして、そんな風に思える歴史が自分の町にあるということは素敵な事だと、なんとなく思えるようになったのは事実です。
ちなみに、今回番組で紹介した料理は、コロンブスが活躍していた15世紀に、船乗り達が航海用に船に持ち込んだ魚の保存食です。アメリカ大陸を発見したコロンブスも、こんな料理を食べていたのでしょうか?そんな事を考えながら、この料理を食べるのも、なかなか味わい深いものです。

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