#131 スタッフからのメッセージ
■コルシカ島は、地中海に浮かぶ島の中でシチリア島、サルデーニャ島に次ぐ3番目に大きな島です。しかし、そこは、広い平野の部分はほとんど無く、島の中に2000メートル級の山が聳える山がちの島。昔から、険しい山が広がる内陸部で生活をしてきたコルシカの人達は、山の急斜面など、厳しい環境の中でも生きる山羊や、牧草を追い求めて何処までも移動する事の出来る羊と共に、自分達の暮らしを守ってきたのです。ですから、山羊や羊のミルクで作るチーズは、昔から島の人達にとって貴重な食材でした。そして、そんな習慣が今でも受け継がれていると実感したのは、取材中のとある夜、コルシカ在住のスタッフと食事をしている時の出来事だったのです。それまで前菜やら肉料理やらサラダやらを一通り食べていて、食事を終わるのを待たずに、既に「今日は、もうお腹が一杯だ」「今夜はデザートを食べるのはやめにしよう」と皆で話していました。ところが、メインの食事が終わり、店の人がチーズを持って現れると、それまで「もう満腹だ」と言っていたコルシカスタッフのお腹が大復活。何種類か出されるチーズの中から自分の好きなものを取り分けて、パンやワインと一緒にチーズを食べ出したのです。そして、満腹の状態でこの様子を見ていた私は、「さっきまでお腹いっぱいだと言っていたのに…」と驚きながらも、この島の人達は本当に、「チーズだけは別腹なんだな」と納得させられてしまったのです。思えば、やはりフランス本土でも食後には同じようにチーズが出されるのですが、その時は、食べるといっても少しだけつまむ程度。口直し?に味わえれば満足するというように私には見えました。中には、私達と同じように、お腹が一杯だからチーズは食べないという人も当然います。それなのに、コルシカの人達といえば、私が見る限りでは、断る人はほとんどいず、それこそチーズだけではなく、わざわざパンもお代わりして美味しそうに食事の仕上げをしているのです。そんな食事風景に取材中ずっと付き合っていくうちに、いつのまにか私も「夕食後の締めはチーズを食べて…」となってしまったくらい、そのチーズ好き振りはかなりのものでした。
さて、そんなチーズ好きばかりが住んでいるコルシカ島で、様々な料理に使われているチーズ。それが、今回紹介したブロッチュチーズです。これは、食事の後などに食べるチーズを一度作った後、その残り汁にミルクと塩を入れ、再び煮詰めて作る2番煎じのフレッシュチーズです。残り汁を、再び煮詰めて作ることから、昔は、貧乏人の栄養源として食べられていた事もあったそうです。ところが今では、フランスのフレッシュチーズの中で唯一AOCという品質にも合格し、島の人のチーズ好きなお腹を満足させるようにまでなっています。その味は、ミルクの甘さがほんのり残り、さっぱりとしていて、比較的香りが強く濃厚な味わいがするものが多いコルシカのチーズの中では、食べやすいという印象を受けました。ある資料には、このチーズを「フロマージュ・コルス(コルシカを代表するチーズ)」と呼ばれていると書かれているほど、この島にはなくてはならない存在で、このチーズを、物々交換をする際の貨幣の代わりにしていた時代もあったということですから、その存在価値はかなりのものです。残念ながら、そんなに大量に作られるものではなく、日持ちもしないため、コルシカ島以外では滅多に手に入れることが出来ないチーズでもありますが、逆に言えば、コルシカに行きさえすれば、どこに行っても食べられるチーズ。機会があったら、あの味を試してみるのはいかがでしょう。ちなみに、私の個人的な好みでいえば、このブロッチュチーズに果実のジャムを混ぜて食べるのと、アクアビッテという名のアルコール度数の高い食後酒と砂糖を混ぜて食べるのが結構お気に入りとなりました。勿論、そのままパンと一緒に食べても美味しいですよ。

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