ネパール連邦民主共和国
 
子どもの人権が失われるとき

日本ユニセフ協会のスタッフとして、これまでにいくつかの開発途上国を訪れる機会がありました。脆弱で貧しい国々では、子どもが生きて育つことが「当たり前」ではなく「チャレンジ」で、栄養不良や予防可能な病気などで幼い子どもたちの命が脅かされている状況を目の当たりにしました。ネパールも、1人あたりの国民所得が490米ドルという貧しい国です。しかし、ネパールの貧困から見えてきたものは、これまで見てきた問題とは違うものでした。それは、児童労働や人身売買という子どもの人権を無視し、子どもが「物」として扱われる現実でした。

ネパールにおいて児童労働が横行する原因は、貧困に加え、児童労働を受容する価値観が広く一般に受け入れられていることが潜在的要因としてあげられるそうです。また、ネパールの都市部における人びとの活発な経済活動と農村部の人びとの暮らしのギャップは、想像以上のもので、特に、標高2000m以上の山が連なる丘陵地帯では、不利な環境に暮らしているがゆえの貧しさが目につきました。こういった貧しい農村部では、経済的に苦しい親が「いい仕事がある」という誘いに乗って、経済的および肉体的な搾取について知らないまま子どもたちを働きに出してしまうことが多く、また親戚や知人が仲介者として人身売買に関わることも少なくないそうです。

貧しさゆえに、子どもたちが犠牲になったり、心に一生に傷を抱えるような境遇に置かれたりすることがないように、ユニセフは、例えば、家庭やコミュニティの人びとへの意識向上のための活動、学校に通えない子どものために教育を受ける機会を提供するノンフォーマル教育プログラム、人身売買や暴力、虐待、搾取の問題に取り組むための地域に根ざした保護の仕組みづくりなど、様々な分野でこの問題に取り組んでいます。このたびのFNSチャリティキャンペーンからのご支援は大きな支えとなることは間違いありません。

今年、ネパールへの支援をご決断くださったフジネットワークのみなさまをはじめ、取材が難しいとされる児童労働や人身売買の問題を取材してくださったクルーのみなさま、FNSチャリティキャンペーン推進室のみなさまに、この場をお借りしてあらためてお礼申し上げます。

公益財団法人 日本ユニセフ協会
個人・企業事業部 小野ちひろ

(公財)日本ユニセフ協会 小野ちひろ