シエラレオネ共和国を訪問して
 
photo 取材中に多くの死に直面した。死産してしまった命。誰にも抱えられず布にくるまれ洗面所の横に放置されていた小さな命。この国は常に死が身近にあるところなんだ、とも感じた。
そして、それはきっと10歳の幼いマミーも感じているのだろう。私たちは毎日彼女に「弟のイブラヒムはきょうはどう?」と聞いた。彼女の答は必ず「He is better.」。明らかに前日よりも具合が悪そうでも、マミーはこう答える。きっと幼いながらに死を感じたくないのだろう。そして何も出来ない家族にとって、神様に祈ることだけが最良の治療なのかもしれない。
 
病院での取材は、本当にいろいろなことを考えされられた。各国の支援により、この国に薬やワクチンが援助物資として届くこともある。でも、いくら薬があっても買えない人たちがごまんといる。もし薬が買えるだけの余裕があっても医療に対する知識がない。西洋医学よりも「ハーバリスト」のような伝統医療を信じる人たちも多い。仮に病院に入院できても医者の知識が乏しすぎる。この問題にどこから手をつけていいか正直悩んだ。
そして、この疑問はきっと私たちの取材リポートを目にした人も感じるだろう。今回シエラレオネを訪れ、目にしたものや起こったことを正直に伝えた。それは、今われわれに出来ることは誠実に伝えることだと認識したからだ。
「貧困イコールお金が無い」だけではない問題がこの国にはある。教育、衛生観念の欠如、女性軽視、戦争のトラウマ…、挙げればきりがない。しかしながら、少しでも取材してこの国を実情を知ってもらい、チャリティキャンペーンを通してシエラレオネに返していければと心から願う。
取材に正直に答えてくれた青年。弟のために小さい体でがんばるマミー。そしてカメラの前で亡くなった赤ちゃんのためにも、少しでも多くの援助がシエラレオネに届きますように。生きることが当たり前の社会になりますように。

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