火曜時代劇『怪談百物語』
火曜時代劇『怪談百物語』
2002年12月3日(火)放送終了

放送内容詳細

 戦国時代も終るころ。牡丹が咲き誇る武家屋敷で、出陣を前にした武士(北村一輝)と奉公人の娘(瀬戸朝香)がたがいに見つめあっていた。「もしも生きて帰れたら一緒になろう」という武士。うなずく娘。武士は一輪の白い牡丹を持って戦の場に向かう。娘はその花に、「春の雪」と名づけた。武士は帰ってこなかった。
 時は移り、文化文政時代の秋も遅く。貧しい見習い菓子職人の新三郎(北村一輝)は、医師の志丈(佐野史郎)から頼まれて、お露という呉服問屋の娘(瀬戸朝香)の話し相手になる。お露は生まれつき体が弱い。妾腹の子なため、お米(木村多江)という女中と小さな屋敷で暮らしているが、家からほとんど出ない生活だ。
 初対面の時から、お露と新三郎はどこかひかれ合うものを感じた。新三郎はお露のために独力で白い牡丹を型どった菓子を作った。お露は菓子を、「春の雪」と名づけた。
 お露が元気になった。新三郎に会うという生きる目的が出来たためだ。年が明けて新三郎と志丈がお露の家に行くと、お露は、「春になったら本物の牡丹を見に行きたい」と言った。そこにお露の父親の平左衛門(中丸新将)が来る。お露が元気になったことで新三郎に礼を言う平左衛門。だが江戸一番の呉服問屋の跡取り息子が、お露を嫁に欲しがっているとも言った。「願ってもない良縁」と喜ぶ平左衛門に、お露と新三郎は声もない。
 春になった。新三郎はお露の面影を振り払うように新しい店で働いた。腕のいい菓子職人になっていた。夜、長屋に帰った新三郎のところに、お露とお米が訪ねてきた。お米の手には白い牡丹が描かれた灯籠が持たれている。驚いた新三郎にお露は、縁談は断ったと言う。お米は先に帰り、お露と新三郎は固く抱き合う。夜明け前にお米が迎えに来た。連夜のように新三郎は訪ねてくるお露を抱いた。
 新三郎が志丈を訪ね、「所帯を持ちたいので力を貸してほしい」と言った。相手がお露と聞いて志丈の表情が凍った。お露は半月前に死んでいた。新三郎と別れ、生きる希望を失ったためだ。お米も看病疲れと自責の念で後を追った。志丈の話を聞く新三郎の顔は、目が落ち窪み、頬はこけていた。それでも新三郎はお露の死を信じない。
 志丈は陰陽師の蘆屋道三(竹中直人)に相談する。志丈と道三は夜、新三郎の長屋へ行き中の様子をうかがう。志丈には、新三郎が一人でブツブツ言っているようにしか見えない。道三にはお露の声が聞こえる。稲妻が光るなかで道三は、新三郎が、ほとんど骨と皮になったお露を抱いて、恍惚となっているのを見た。
 翌日、志丈は新三郎をお露の墓に案内する。道三もいて、相手は生きた人間ではなく、このままではやがて取り殺されると話した。新三郎の家を厳重に戸締りし、護符を貼り付ける。道三は紐で畳の上に結界を張り、絶対に中から出ないこと、お露から話しかけられても、答えてはいけないと新三郎に念を押す。
 やがてお露が来る。護符のために中に入れないが、外から言葉を尽くして新三郎をかき口説く。志丈は、「お露さんとはこの世では結ばれない」と言う。その言葉を聞いて、新三郎の脳裏に、戦国時代の思い出がよみがえる。そしてお露にも。
 たまらずに新三郎は戸を明けて外へ飛び出し、お露を抱きしめる。道三の目にはお露はすでに骸骨だが、新三郎には美しい。お露は、新三郎に、「あなたは生きて下さい」と言って姿を消す。すでに骨が崩れ、砂のようになっていた。
閉じる
もっと見る

スタッフ

企画
  保原賢一郎(フジテレビ制作センター)
  西岡善信(映像京都)
プロデュース
  中島久美子(フジテレビ制作センター)
  後藤博幸(フジテレビ制作センター)
  酒井実(映像京都)
演出
  小林和宏
脚本
  真柴あずき
美術
  西岡善信
音楽
  Unknown Soup&Spice
サウンドプロデュース
  岩代太郎
  オリジナルサウンドトラック(SME Records)
エンディングテーマ
  MIO「Mother's Eternity」(SME Records)
技術
  フジテレビ制作技術部
制作協力
  映像京都
制作
  フジテレビ制作センター