香坂朱里役 水野美紀さんインタビュー
2020.1.9 thu. Update

interview#02

台本を読んで最初に感じたことは?
文字だけで事件を追っていると、全容を理解するのが大変でした。登場人物がたくさんいるので、「あれ?  この人はどのシーンに出てきたんだっけ?」みたいな感じになってしまって。最初からたくさんの登場人物が絡んでいる事件なんですよね。私、「途中で事件を解決してやろう!」という意気込みで読むんですけど(笑)、まったく追いつかなかったです。
しかも、犯罪が起きる前のお話ですからね。
そうなんですよね。しかもそこに、先々描かれる大きな出来事のフックと、その1話で解決される事件というふたつの見どころがあるので。だから、ひとつの事件が無事解決する、というカタルシスと、「この先、どうなっていくんだろう?」という強烈な展開への期待があるので、いろんな意味で見応えがあるな、と思いました。
1話から衝撃的でした。
最後ですよね?  いきなりの山場ですからね(笑)。
法務省官僚で、ミハンの統括責任者となる香坂朱里というキャラクターを演じるにあたって特に意識されたことは?
石川(淳一)監督は、“クールでカッコいいエリート官僚”“強い女性”というイメージをお持ちのようですけど、私は……もちろん、そういうキャラクター像の中でのお話ですけど、人間はそういう一面だけではないと思うので、いろいろな瞬間が覗き見られた方が深みが出てくるんじゃないかと思ったんです。そうすることで、香坂朱里という女性の強さだったり、クールだったりする面も際立ってくると思うので、そういうところにチャレンジしていきたいと思っています。
香坂は謎が多い存在ですよね。隠されている背景も楽しみです。
香坂の大きな目標は、「ミハンを法制化する」ということなんですけど、何故それをしたいのか、というところに、彼女のバックボーンが絡んでくるんですけど……。正義感の強さも、ちょっと常人を超えているようなところもあるので。
そういう意味では、ベクトルは違うのかもしれませんが、沢村一樹さん演じる井沢範人とも通ずるような面もあるのかもしれないですね。
私も、どこか似た者同士なんだな、ということは感じながら演じています。手段を選ばないとか、暴走しちゃうような部分はないですけど。法務省の人間ですけど、多分、他の官僚たちのことも、心のどこかで見下しているような人なんですよね。
複雑なキャラクターですね。
つかみどころがないというか。ただ、視聴者のみなさんには善人に見えるのか、悪人に見えるのかわからないかもしれませんけど、少なくとも彼女自身は自分のことを悪人だとは微塵も思っていないですね。
このドラマの主軸になっているミハンシステムですが、前作のときより、よりリアルに感じられるような気がします。東京オリンピックが近いということもあるかもしれませんが、AIに関するニュースも随分増えていますし。
未来のことというより、現代のこと、という感じがしますよね。中国の顔認証システムが海外に輸出されることをアメリカが警戒しているというニュースもありましたし。アメリカはアメリカで輸出しているのに(笑)。無人のコンビニで顔認証だけで買い物ができるような実験も行われていますよね。でも、日本ではどうなんでしょうね?  抵抗なく受け入れられるのかな?  そう考えると、あくまでもフィクションですけど、ドラマの中でこのチームがやろうとしている法制化というのは、相当ハードルが高いだろうなと思いました。
普段、ネットを利用している方ならどなたも、買い物履歴や閲覧データがさまざまな形で使われていることはわかっていると思いますが……。
それを「便利だな」と思うか「怖いな」と思うか、ということですよね。悪用される可能性もあるので、そのときはもう丸裸にされちゃいますから。手の届かないところで情報が漏れたりするのはやっぱり怖いですね。犯罪を未然に防げる、というのは良いことだと思うんですけど、そのシステムを誰がどうやって管理するのか、悪用したらどういう罰があるのかとか、いろいろ考えてしまいます。家の鍵も顔認証にしていたら、故障したり停電したりしたときはどうなるのか、とか。パソコンも、いまはもうパスワードを求められるものばかりで、昔登録したものでもう覚えていないものもあったりして、2度とログインできないサイトもあったりして(笑)。
いまや家電も通信機能を持っていて自動認識・自動制御される時代ですが、水野さんご自身はそういうものを積極的に利用される方ですか?
昨日やっとFireTVを入れました。それがアレクサと連動していて。夫が「未来、来てるな!」って言っていました(笑)。ただ、子どもたちはそういう環境が当たり前になっているので、私たちとは全然違う感覚で育つんだろうなって思います。携帯電話もなかったころは、財布だけしっかり持っていれば大丈夫だったのに(笑)。
『絶対零度』は、そういう世界観の作品ですが、その一方で、アクションシーンもかなりあって、しかも香坂はかなり強い、というのも面白いです。
そこがさらに謎を呼んでいる部分です(笑)。どこかで訓練していたんでしょうね。いまのところは、井沢さんとちょっと手合わせをするシーンだけですけど、折角なので、先々に犯人と対峙して格闘するシーンもあったらいいな、とは思っています。
水野さんのアクション、見たいです。
監督もちょっと執念が凄いなと思ったんですけど、沢村さんと手合わせをするときに、中段くらいの回し蹴りをする、ということになっていて、ビデオコンテという、アクションチームの人が作っている映像見本ももらったので、「きっと(衣装は)パンツでいくんだろうな」と思ったら当日はスカートのままで(笑)。「スカートだと足が上がらないから蹴りを変えるのかな?」と思ったら、監督が衣装さんにスカートを加工させて、蹴りが出せる用のスカートを用意していたんですよ(笑)。
いまもトレーニングはされているんですか?
もう全然やっていないです。でも、ちょっと動いたら思い出してきましたけど。「こんなこと、昔やってたな」って。
沢村さんと実際にお芝居をされてみて、いかがでしたか?
とても魅力的な方です。重い過去を背負った井沢というキャラクターを、こんなに飄々と、軽やかさを持って演じられる方って他にいるのかな、と思ったくらいです。軽口叩いたり、笑顔を見せたりする感情を見せれば見せるほど、せつなくなるようなお芝居は見事だと思います。深い人間味を井沢というキャラクターに乗せてお芝居されているなと思いました。だから、一緒にお芝居できることが楽しいです。
当面は井沢と香坂が敵対するような感じで進んでいく?
台本にいっぱい出てきますよ。井沢「――」、香坂「――」みたいなにらみ合う間が。至近距離でにらみ合ってます。学生時代でも、こんなに人とにらみ合ったことないのに。沢村さんは、「近すぎて顔がぼやけて見えない」っておっしゃっていました(笑)。
こういうシリアスな役は久しぶりなのでは?
そうですね。スーツを着ている役も久しぶりなので、肩が凝って(笑)。しかも今回は、プレゼンみたいにメンバーに向けて説明をするシーンが多いのが辛いところですね。会話じゃないので、セリフもなかなか入ってこないですから。
最後に、視聴者のみなさんに向けてメッセージをお願いします。
新メンバーとしてミハンに加わりました。どうぞ、ご贔屓によろしくお願いします。毎回、見応えたっぷりな展開になっていますので、香坂の企みが何なのか、しっかり見届けていただけたら嬉しいです。