2017.11.2 Thu. Update
多々木挙男役 仁科貴さん

まず、チーム『ゆがみ』の現場の印象からお願いします。
みなさん、それぞれ佇まいが大人っぽいですし、かといって堅苦しい感じもなく、凄く心地良い現場だと思います。普段は、ドラマの話だけではなく、趣味の話などもしているんです。お芝居のことはそれぞれがしっかりと考えてきて、現場では自然体でいる、という、そういうところも素敵だと思います。本当に大変なスケジュールの中で、スタッフさんも俳優部には絶対に疲れたところを見せないですし。どこのチームもそうだと思うんですけど、特にこのチームは「我々が盛り上げていくんだ」というスタッフさんたちの思いを感じるんです。映画などで1週間とか2週間、なかなか寝る時間もない、という現場はよくありますけど、3ヵ月以上に渡って、という連続ドラマの撮影はやっぱり大変なことだと思うんです。スタッフさんたちが、俳優たちを盛り上げてくれているというのは、普段から感じますね。
多々木挙男というキャラクターを演じてみて考えたことや、
印象に残っている出来事を教えてください。
現場に来るたびに、メイクさんに髪を白く塗ってもらって白髪にしていただいているんですけど、たまにセリフが書かれていなくてちょっと後ろに映っている、というシーンのために来ることもあるんです。そういうときも、毎回同じだけの手間をおかけしていますから、「申し訳ないな…」と思いつつ、それを無駄にしないように頑張っています(笑)。役としては…画面上は弓神刑事(浅野忠信)と羽生刑事(神木隆之介)が捜査していますけど、多々木と町尾(橋本淳)もバディとして、足を棒にして事件を捜査していると思うんですよね。刑事部屋のシーンも多いですけど、そういう風に僕らみんなが苦労しているという刑事の日常や生活感みたいなものが、視聴者の方も気が付かない程度でいいので、さりげなくどこかに出ていればいいな、と思っています。
強行犯係のみなさんの空気感には引き込まれます。
ありがとうございます!  多分、リアルなんじゃないかと思うんです。僕以外は、なかなかおしゃれじゃないですか。その辺はドラマチックに仕立てられているとはいえ、普段の言動とか上下関係とか、そういう部分はリアリティーを追及しているんだろうな、というのは最初から分かっていたので、俳優としてはやりがいがあります。
映像のひとつひとつがとても繊細かつ丁寧に作られていますよね。
ストーリー自体も、人間の表だけでなく裏の部分や心情などを
描写している作品なので、細かいところまで見逃せないですよね。
人はそれぞれ理屈を持っていきているわけじゃないですか。そこにはいろいろな事情もあるわけですけど、それが最後に明かされるところは毎回グッときます。刑事部屋のシーンでも、1話より2話、2話より3話…という風に、新たな一面がちょっとずつ描かれているんですよね。そういうころは僕らも楽しんで演じています。町尾くんが怒ると意外と怖いところとか(笑)。せつない事件の裏側で、これからもそういう別の一面が描かれていくんじゃないかな、と思います。
以前お話をうかがったときに「浅野忠信さんとは戦友だと思っている」
とおっしゃっていましたが、改めてこの現場で共演してみての印象は?
何か新しい発見はありましたか?
“戦友”だなんておこがましいんですけど…。最初に浅野さんとご一緒したとき、僕は俳優をやりながらメイキング映像も2ヵ月回していたんです。なので、浅野さんの現場にほぼ立ち会っているんですよね、自分が出ていない時でも。そのあと、3ヵ月近く、最高地点が標高約3000メートルの山で撮影をやりまして…。山小屋って本当に狭くて、2階の右端で寝ている人のいびきがその対角線上にある1階のトイレまで聞こえるくらいなんです(笑)。そんなところで、雪が降ったりしたら…僕らも確か、10日間くらい山小屋に缶詰状態になったりもして。浅野さんと香川照之さんが出演されていたんですけど、おふたりなくしては、あの過酷な環境では撮影できなかったと思います。やっぱり、おふたりのお人柄でしょうね。浅野さんに対する僕の最初の印象は…最初にご一緒した『埋もれ木』という映画のとき、子どもたちが出てくるシーンがあって、浅野さんが子どもたちと遊んでやったりしていたんです。浅野さんは僕らには礼儀を尽くしてくださるんですけど、自分より後輩の俳優さんのことは結構イジったりする方なんですよね。だから、僕の方が年上ですけど、「こういう人がお父さんだったら楽しいだろうな」と(笑)。そういう方ですね。作品の父となりうる方というか…。今回の現場は、普段はいつも通りの浅野さんだと思うんですけど、作品の中では、浅野さんの持ち味が最大限に描かれているんじゃないかな、と思っています。おちゃらけているシーンのときは僕らも笑いをこらえるのが大変なくらい、いつもステキなアドリブを投じてくれる一方で、時々凄く怖い目をされたりするシーンもあったりして、そういうメリハリもたまらないですね。本当に飽きのこない現場です(笑)。
原作は以前から愛読していましたが、
いまでは弓神さんのセリフが浅野さんの声に変換されています(笑)。
僕も、原作の弓神の目が、浅野さんの目と一緒に見えてきたりします(笑)。浅野さんが鋭い眼をした瞬間が、原作の弓神と一緒なんですよ。
役者さんによっては「待つのも仕事だ」とおっしゃる方もいます。
ドラマや映画などの撮影では、
さまざまな理由で長い待ち時間を過ごされることもある
と思うのですが、そういうときの対処方法は?
現場ならではの時間の過ごし方や、楽しみがあれば教えてください。
実は僕、待ったりするのは全然苦じゃないんです。特に、大事なシーンがあると、時間を与えられるほどうれしいと思うタイプなので。昔、16時間待って結局撮影できなくてそのまま帰されたこともありましたけど、それも楽しかったです。何でも楽しめるんです(笑)。現場が大好きなんですよね。
そういうときに、テンションを保つ秘訣は?
セリフがたくさんあるときは不安になったりもしますけど、そういうときはなるべくひとりになった方がいいですね。待ち時間があると、ついつい人と話し込んじゃうんです。でも、そうするとさっきまで出来ていたことが、次にやってみると出来なかったりすることもあるんです。そこは気を付けておかないとダメですね。あとは、このシーンで何ができるか、ということをギリギリまで考えるのが俳優の仕事でもあると思いますので、常にそういう意識を持つことが大事なのかもしれません。なので、居心地の良い現場は、危ないこともあるんです(笑)。そのさじ加減は、常に考えていかないといけないですね。
最後に、ドラマを応援してくれている視聴者のみなさんに向けて、
メッセージをお願いします。
1話完結の魅力や醍醐味がたくさん詰まったドラマだと思います。きっと、最後まで1本も期待を裏切らないと思います。こういう言い方が適切なのかどうかわかりませんけど、ゲストで来てくれる俳優さんたちの意気込みも、仕事を超えた何か…やりがいを持って来てもらえるような台本だと思いますので、僕らも毎回楽しみにしているんです。逆に、犯人を知らないでドラマを見てみたかった、と思うくらい(笑)。「犯人を知っていて見る不幸ってあるよね?」と町尾くんとも話したくらいです。俳優として、そういう作品に携われたことが幸せです。みなさんにも、最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。

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