アンサング・シンデレラ×医療・薬剤監修

ドラマではお伝えできなかった医療部分、
医学的、薬学的な根拠を徹底深掘り!!
本作品の薬剤師監修に解説をして頂きました!

『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』
ドラマ史上初となる、病院薬剤師を主人公にした新しい医療職・舞台を医療ドラマとして楽しんで頂けましたら幸いです。


『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』をきっかけに「病院薬剤師の活躍を多くの人に知ってもらえる絶好の機会だ!」と考え、役者さんへの医療指導、画面に映るさまざまな背景や使用される薬剤の1つ1つの細部に至るまで徹底的にリアリティー(現実性)とクオリティー(品質)にこだわってドラマ監修に携わって参りました。

医療監修・薬剤師監修をするにあたり、どんな背景を考慮しながらドラマを作り上げてきたか、そこにはどんな医学的・薬学的根拠が潜んで判断されているのかを、視聴者の皆様への深い理解と学生さん達への良い医療教材の一助となるように解説を加えることとしました。

第1話 医療解説

第1話に登場する主な病気は

の3つです。

1型糖尿病

1型糖尿病は、膵臓のβ細胞で作られる「インスリン」というホルモンが分泌されなくなる病気です。主に、自分自身の細胞を標的にして攻撃してしまう自己免疫学的機序により生じます。2型糖尿病の原因は、過食、運動不足、ストレスなどにより発症しますが、1型糖尿病の場合は、ウイルス感染の関与も言われていますが、詳しい原因は完全には解明されていません。インスリンは、食べ物をエネルギーに変える過程で、ブドウ糖を筋肉や脳などの細胞の中にとりこむために必要なホルモンです。インスリンが不足すると血液中のブドウ糖濃度(血糖値)が高くなり「高血糖」になります。インスリンは、睡眠中や空腹のときにも絶えず分泌される『基礎分泌』と食事を摂るたびに直ちに分泌されます『追加分泌』に分かれます。ドラマの中に出てくるインスリン注の投与のシーンは、この『追加分泌』に対応するためのインスリンを投与する服薬指導となります。インスリン注の正しい投与方法・タイミング投与単位数の設定を間違えていないか、注射薬なので感染的観点から消毒などの指導も必要となります。投与のタイミングも、食事の直前に投与しないと投与したインスリンだけが先に効いてしまい血糖値が低くなる「低血糖」に陥ってしまいます。ドラマの中で奈央ちゃんが倒れてしまうシーンがありましたが、これはインスリン注を投与した後に食事を何も摂らなかったために「低血糖」を起こしたためでした。低血糖の症状は、血糖値(BS)がBS≦70(mg/dL)の初期症状で汗をかく、顔色が青白い、手や指が震える、BS≦50(mg/dL)であくびや頭痛、BS≦30(mg/dL)で意識障害、けいれん、昏睡といった症状が出現します。低血糖で倒れて意識障害の奈央ちゃんの表情は正に、冷や汗、顔が青白く、意識障害となっていたと思います。
また、インスリン分泌のコントロールが上手くできないと「糖尿病ケトアシドーシス」という危険な状態となります。はき気、嘔吐、腹痛、大きく深い呼吸、意識障害(昏睡)などの症状が現れます。

スズメバチのアナフィラキシーショック

アナフィラキシーショックとは、アレルゲン等の侵入により全身性にアレルギー症状が惹起され生命に危機を与え得る過敏反応に血圧低下意識障害を伴うものと定義されています。
アナフィラキシーの原因は牛乳、小麦、そば、ピーナッツなどの食べ物が最も多く、続いて蜂、薬物となっています。
日本では蜂刺されによるアナフィラキシーショックで年間20人ほどが亡くなっているのが現状です。
蜂などの虫に刺された場合に、蜂毒に対するアレルギー反応がない場合、局所症状は数日で改善します。しかしながら、蜂に一度刺されて蜂毒に対する抗体ができている場合は、再度蜂に刺された後5~10分以内にアナフィラキシーを起こすことがあります。今回、患者さんである峰田さんの友人は恐らく過去に蜂に刺されたことがなく、蜂毒に対する抗体がない為に軽症だったのでしょう。その一方で峰田さんは、過去に蜂刺されがあった為、抗体を保有しており、アナフィラキシーショックになってしまうという場面でした。

救急の初療中に一向に薬物治療で改善が見られず深刻さが増しチーム全体が焦る中、みどりが患者さんの持ち物を確認し、ポケットから降圧剤であるβブロッカーのビソプロロール錠の殻を発見し、救命の豊中医師へ「患者さんはβブロッカーの服用の可能性があります」「グルカゴン注を!」と提案する。
起死回生のグルカゴン注ですが、グルカゴン注は通常、血糖上昇作用が主で低血糖時の救急処置薬ですが、強心作用(心拍出量や心収縮力が増加)も併せ持つ薬剤です。カテコラミン注は、β刺激後にcAMPが上昇し、強心作用を発揮しますが、グルカゴン注はβ刺激を介さずに直接cAMPを上昇させ強心作用を発揮します。βブロッカーは降圧剤であると同時に交感神経の遮断薬なので、交感神経刺激薬のアドレナリン注が効きにくくなります。一方、グルカゴン注はβ刺激を介さずに直接強心作用を発揮するのでβブロッカー内服中に使うと有効なのです。このため、βブロッカー服用の峰田さんに、みどりは通常の強心薬のカテコラミン製剤であるアドレナリン注ではなくグルカゴン注を提案したのです。
また、アドレナリン注の用量(お薬の量)ですが、アナフィラキシーショックから心停止となり、アドレナリン注の用量が変わっていることにも注目です。アナフィラキシーショックの場合の用量は『通常0.3mgのアドレナリン注を筋肉内注射』ですが、状況が一転、心停止となると1mgのアドレナリン注を静脈注射』の用量となります。ガイドラインでも、アナフィラキシーショックに対してアドレナリン 0.01mg/kg筋注(最大量 小児:0.3mg、成人:0.5mg)必要に応じて5~15分毎に再投与を推奨しています。また、アナフィラキシーにより心停止に至ってしまった場合は,CPR,酸素投与,静脈ルートの確保が治療の基本となり、アドレナリン1mg(小児では0.01mg/kg)を3~5分おきに 静脈内/骨髄内投与というような投与法を推奨しています。

HELLP(ヘルプ)症候群

HELLP症候群(HELLP syndrome)とは、妊娠後期または分娩時に生じる母体の生命に危険を伴う一連の症候を示す状態です。Hemolytic anemia(溶血性貧血)、Elevated Liver enzymes(肝逸脱酵素上昇)、Low Platelet count(血小板低下)の3大徴候を伴い急遂分娩または帝王切開に移る場合があります。初期の症状として頭痛(30%)、視力障害、不快感(90%)と、吐気・嘔吐(30%)、上腹部の痛み(65%)等を呈します。妊娠高血圧症候群を伴うことが多く、その後に子癇を発症する場合も多く、緊急性の高い疾患です。

今回、妊娠高血圧症の矢島詩織さんを林先生は、HELLP症候群の初期症状の1つの上腹部痛を単なる胃潰瘍と臨床的に判断し、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を処方しました。PPIの副作用の1つに肝機能障害がある為、HELLP症候群の3大徴候の1つの肝逸脱酵素上昇(AST、ALT上昇)を薬剤の副作用の1つと捉えて治療し臨床経過を診ていました。

■医師の診断行為
診断はあくまでも医師しかできないと医師法で定めてられています。
従って、みどりも薬剤師である以上、診断行為は許されません。しかし、患者の副作用1つ1つを疑い、患者の訴えや症状に耳を傾けていたからこそ、医師にその症状が副作用とは違うと進言しHELLP症候群に行きついたシーンでした。私達薬剤師も、副作用を疑う半面、その症状が病状とどう異なるのかも現場で確認している作業の1つです。

ドラマはあくまでもエンターテイメント、フィクションであって現実のコピーを作っているわけではありません。そのドラマと言うエンターテイメントにリアリティーを与えることによって、質の高いドラマとなり、人々は共感し感動するのだと思います。今後もそのような、ドラマの医療監修となるよう努めて参ります。

第2話 医療解説

第2話に登場する医療・薬学的解説シーンは

の3つです。

医療用麻薬の厳格な保管管理

通常、お薬は『普通薬』、『劇薬』、『毒薬』、『麻薬』、『向精神薬』、『覚せい剤原料』のような保管管理区分に分けられます。それぞれの保管方法は異なり、表示方法も異なります。特に麻薬は、通常の医薬品と異なりその保管・管理は厳格かつ正確な保管管理が求められます。これは『麻薬及び向精神薬取締法』により規定され、適正使用を期するため、施用の制限、管理義務、保管義務、記録義務等を課しているからです。ドラマのシーンにも登場したように、麻薬の保管は、頑丈な鍵のかかる専用の金庫で保管しなければなりません。近年は鍵ではなく指紋認証顔認証へと認証技術が進化しており注射の金庫は顔認証でした。また、麻薬管理者である販田薬剤部長は、施設で施用した麻薬及び譲受・譲渡した麻薬について、その麻薬の品名、数量及び年月日を記載した帳簿(麻薬管理帳簿)を作成し、これを2年間保存する必要があります(第39条第1項)。帳簿への記載は交付毎とされ、定期的に帳簿残高在庫現数を確認しなければなりません。ドラマでは販田部長が「昨晩の在庫確認までは合致していたから、夜間から早朝に誰かが出したはず・・」のように速やかにその在庫把握が可能な管理体制がどの病院でもとられています。
ただし、今回のように未使用の麻薬があった場合は帳簿へ正しく払出・返却の記載をし、虚偽がないように説明しなければなりません。そして、麻薬管理者は院内で発生した『事故』『紛失』に関しては、速やかに、「麻薬事故届」「麻薬廃棄届」として必要な事項を取り纏めて都道府県知事に届け出なければならなりません(第35条第1項)。これらが適切に管理されているか立入検査として、都道府県の薬務課職員または健康福祉センター職員が定期的に確認し、必要に応じて各厚生局の麻薬取締部が確認に来ることがあります。
実際の医療現場では、「1日の業務が終わって在庫確認したら1本合わない為に徹夜で探したよ~」などが本当にあります。数の数え間違い、帳簿への記載ミスだったら良いですが・・・。それくらい厳格な取り扱いがされているからこそ、臨床の現場では安心して使用できるのです。

クラリスロマイシンの飲み方

子ども用の粉薬は味に工夫がされている場合が多く、「イチゴ」「オレンジ」「バナナ」「ヨーグルト」のように子どもが好きそうな匂いが添加されています。特にマクロライド系抗菌薬であるクラリスロマイシン主薬苦味周囲を甘いドライシロップでコーティングしてあるドライシロップ製剤です。薬剤は苦みを感じさせないように、中性の口腔内で溶けずに、酸性の胃で溶けるように設計されていますが、ドラマの中で登場したように、オレンジジュースなどの有機酸に溶かすと、酸によりこのコーティングが剥がれてしまい、苦くて飲みにくくなります。オレンジジュース以外にも同様な理由で、りんごジュース、グレープフルーツジュースも苦味が出ますし、乳酸であるヨーグルト・乳酸飲料、その他酸性のスポーツ飲料・イオン飲料なども苦味を発現するので注意が必要です。苦味を感じにくくする製剤改良の研究が重ねられ、現在では、水で服用すれば、苦味を感じにくい製剤となりました。酸性であるのはジュースばかりではなく、薬も存在します。ドラマの中でも登場したもう1つのお薬として去痰薬カルボシステインと言うお薬がありました。このカルボシステインは酸性の薬剤で、pHは2.76です(カルボシステイン自体は苦みはありません)。クラリスロマイシンカルボシステインを混ぜると、この酸がコーテングを剥がしてしまってすごく苦くなり、お子さんが薬嫌いになることがあります。
クラリスロマイシンカルボシステイン別々に混合し分包し服用時混ぜないで別々に服用するよう服薬指導が必要です。一緒に処方されたときは、先にクラリスロマイシンを飲ませてから、一度口を水で濯ぐなどし口の中にクラリスロマイシンが残らないようにしてから、次にカルボシステインを飲ませるようにするのが正しい飲み方です。カルボシステインをドライシロップ(粉薬)ではなく、水剤液体のお薬)ならばこのような苦味は発現しません。また、この薬の苦味をマスクするのが刈谷、みどりイチオシの起死回生のチョコレートアイスでした。アイスクリームは、舌を冷やし、味覚を鈍らせて、一時的に神経を麻痺させて苦味を感じにくくします。アイスクリームは口当たりがよく、食欲のない子どもにも食べさせやすいという利点もあります。この他にも苦味を回避する食品として、練乳、ピーナツクリーム、ココアパウダーなどがありますが、1歳未満の赤ちゃんにはハチミツは避ける必要があります。乳児ボツリヌス症の原因となる菌が含まれている可能性がある為です。薬を何かに混ぜてからあげる場合は一回づつ作るようにし、混ぜたものを作り置きするのはやめましょう。作り置きすることで薬本来の味が溶け出してしまって逆に飲みにくくなったり、成分が変質して効き目がなくなってしまうこともあります。酸性条件で苦味が発現する薬にクラリスロマイシンの他にも、アジスロマイシン、エリスロマイシン、トスフロキサシン、デビペネムなどがあります。昔から言われているように「良薬口に苦し」という言葉があるように、薬は元々あまり美味しいとは言えないものが多く、子供用の粉薬は飲みやすいように、味や香りに工夫が施されていることが多いのです。
私達薬剤師も多くの後発医薬品の中から1つの薬剤を採用し、患者さんに提案する際には「味」という評価基準を加味して、薬を選択することをしています。同一成分の後発医薬品の中でも上記の様な酸性条件下での苦味の発現は、各々の薬品で異なり、添付文書からでは分かりません。実際に、自分の味覚などの五感をフル活用し、よい後発品を選ぶことも薬剤師の役割なのです。だから味見オタクのみどりは正にこの象徴とも言える姿なのです。小児のお薬の飲ませ方で悩んだら、何でもおかかりの薬剤師さんに相談してみると良いですね。

下痢止めのロペラミド錠の過量服用による心室性不整脈

止瀉薬の分類では、系統別に収れん薬である天然ケイ酸アルミニウム、塩化ベルベリン、次没食子酸ビスマス、タンニン酸アルブミンがあり、乳酸菌製剤ではラクトミン、ビフィズス菌製剤、耐性乳酸菌製剤などがあります。ロペラミド塩酸塩は、麻薬に似た構造骨格をもち、消化管のオピオイド受容体に作用して消化管運動を抑制し、止瀉作用(下痢止め)をもたらします。過量服薬ではQT延長・Torsade de Pointes・重篤な心室性不整脈・心停止などの重篤な副作用を引き起こす。実は、このロペラミドの過量服用は、アメリカの米食品医薬品局(FDA)からも意図的なロペラミドの過量服用による致死性心イベントが報告され警告が出されています。
患者さんの大宮清さんが、術前化学療法のシスプラチン投与の支持療法の止瀉薬として処方されていたロペラミドの服用を隠そうとして、トイレで大量に服用し重篤な心室性不整脈で倒れるシーンでした。このように、止瀉薬として適切な用量で服用していれば問題ない薬剤も、一気に大量に服用すれば取り返しのつかないことにもなります。ここで、起死回生の拮抗・解毒薬であるナロキソン塩酸塩注がみどりより提案されました。実は、このナロキソン塩酸塩注は、麻薬の拮抗・解毒薬が本来の役割の薬剤です。麻薬の過量投与により呼吸抑制の症状が現れた際に拮抗薬として臨床現場で使用されています。上述にもあるようにロペラミド錠は麻薬と似た構造骨格を持つことから、これらを大量に服用したと推測したみどりは麻薬の過量投与と同様の対処法であるナロキソン注を提案したのです。実はちゃんと、ロペラミドの添付文書の過量投与の対処方法に「中毒症状がみられた場合にはナロキソン塩酸塩を投与する」との記載があります。救命の初療で原因不明の心室性不整脈の治療に難渋する中、みどりが原因物質を特定し、正しい拮抗・解毒薬を提案し投与したから一命をとりとめられたシーンでした。原因不明の心室性不整脈の薬物治療にリドカイン注、アミオダロン注が登場したのも注目です。
お薬の表面に英字や数字が刻まれた刻印がありますが、これはお薬を判別する薬剤の識別コードです。薬剤の1つ1つが判るように刻まれている英数字は、薬の一包化の判別服用薬剤を同定する際に欠かすことのできない識別コードです。今回は薬が欠けてしまい、識別コードが判別不能で、一部しか存在せず苦戦し、「識別コードが●●で始まり、ほんのりと甘く、でも苦みのある」と言うみどりのセリフですが、最後も『薬の味見オタクの味覚』に救われたシーンでした。

第3話 医療解説

第3話に登場する主な医療・薬学的解説シーンは

の2つです。

腎臓病とその治療

腎臓の役割

腎臓の役割は主に5つあります

  1. ① 有害な老廃物をこしとる
  2. ② 体内の水分や電解質バランスを調節する
  3. ③ 血圧を調節する
  4. ④ エリスロポエチン(赤血球の産生を促すホルモン)を分泌する
  5. ⑤ 活性型ビタミンD3(骨をかたくするビタミン)を作る

 腎臓は、約100万個のネフロンという単位からなり、腎小体と、腎細管の2つからできています。
 腎小体は、有害な老廃物を血液から取り除いて尿として排出するため、生体に有用なものと不要なものとに選り分けるフィルターの役割をしています。 腎小体は1個の腎臓に100万個以上存在する直径0.2mmほどの球形で、毛細血管の固まりである糸球体とこれを包むボーマンのうとからなります。
 腎細管とは、糸球体より集合管にいたるまでの、尿の素が通り再吸収・分泌などを受ける組織のことをいいます。ここで尿の素から、水分、塩分などを再吸収し、体内の水分やイオンバランスを調節しています。再吸収を受けた尿は腎盂(じんう)に集まり、輸尿管をへて、膀胱に送られ排泄されます。
 その他、腎臓はレニンという酵素(血液中のタンパク質と反応して強力な血管収縮作用をもつアンジテンシンⅡとなり血圧を上げます)を産生し、血圧の調節を行なっています。また、エリスロポエチンを分泌し、赤血球を作るよう骨髄に働きかけます。骨にカルシウムを沈着させるために必要なビタミンDを活性型ビタミンD3に変える働きをしています。


腎臓病になると

腎臓病になると、5つの役割に障害がでます。

  1. ① 老廃物がたまる
  2. ② 水分、電解質バランスが崩れる
  3. ③ 血圧が上昇する
  4. ④ 貧血になる
  5. ⑤ 骨がもろくなる

 老廃物や余分な水分がたまるため、体にむくみが出たり、だるくなります。またイオンバランスが崩れ、からだは酸性に傾き、吐き気や嘔吐、食欲不振などの原因となります。また、腎臓の血流量が減少するため、レニンの分泌が過剰となり血圧が上昇します(今回、新田さんが校庭を走っている途中で倒れたのも、「③血圧が上昇する」ことが原因と思われます。)。また、エリスロポエチンの分泌量が減り、赤血球を作るための指令がいかず、貧血になります。さらに、活性型ビタミンDзが作られないと小腸からのカルシウムの吸収が妨げられ、血中カルシウム濃度が低下し、骨がもろくなってしまいます。
 慢性糸球体腎炎とは、何らかの原因で糸球体に炎症が起こることによりフィルター機能が低下し、生体に有用なタンパク質や血液が尿中に(少なくとも1年以上)出てしまう慢性腎臓病です。病気が進行すると、上記に示した様に、5つの役割に障害がでてくるようになるため、薬物療法が重要となります。さらに進行すると腎不全となり、透析療法が必要となります。


治療法

透析

 腎臓の機能が正常の10%以下に低下すると、尿から老廃物や水分が適切に排泄されなくなり、尿毒症や水分過多による心不全等になりやすくなります。機能が低下した腎臓の代わりに、有害な老廃物や余分な水分・塩分の排泄を代行してくれる治療法が透析です。「①老廃物がたまる、②水分、電解質バランスが崩れる」を改善します。ただし、透析は腎臓の機能を回復させる治療法ではありません。そのため、生涯続ける必要があります。透析療法には血液透析と腹膜透析の2種類の治療法があります。

血液透析

 自分の腎臓の代わりに人工腎臓のフィルター(ダイアライザー)を介して、血液から老廃物・余分な水分を取りのぞく治療法です。1回の治療で概ね4~5時間の治療時間を要します。それを週3回(月・水・金もしくは火・木・土)通院して行います。医療機関で治療を行うため、時間的拘束はあるものの、医療者にお任せで治療を受けることができます。治療中は血液を血管から毎分200mL程度取り出してダイアライザーに通す必要があるため、治療開始前に手術を行い、「シャント」という特殊な血液回路を腕に造ります。本ドラマで登場した新田さんは、慢性腎臓病が進行し、腎不全となったため、この血液透析を受けていました。

腹膜透析

 お腹の中のスペースを包んでいる膜(腹膜)にある毛細血管と腹腔に注入した透析液を介して、老廃物・余分な水分を取り出す治療法です。自宅で自身の手技により行えるため、通院は月に1回程度です。そのため時間的拘束が少なく、行動範囲の制約も少なくなります。治療開始前には、予め腹腔内に透析用の管を手術で入れておく必要があります。現在、国内には約32万人の透析患者がおり、97%の方は血液透析を行っています。腹膜透析は活動の自由がありますが、自身で手技を行なわなければならず、腹膜の機能が低下すると血液透析に移行しなければならないため、3%程度の普及となっています。


食事の管理について

 カップ麺には、ナトリウムやカリウム、リンが大量に含まれていることがあるため、②水分、電解質バランスが崩れます。透析患者さんではできるだけ摂取しないほうが良いと思われます。また、新田さんは、眠気を紛らわすためにカフェインの多い栄養ドリンクを飲んでいたと思いますが、その他、リンやカリウムが多く含まれており、糖分も含まれています。また、カフェインには利尿作用があり、体内の血液の流れに影響を及ぼすため、摂取しないほうがよいでしょう。このように、慢性腎臓病の患者さんは透析や薬物療法だけでなく、日常の食事管理も重要となります。

トローチに穴が開いている理由

トローチは、口やのどの細菌を殺したり増殖を防いだりする目的で使用します。効果が持続するよう、ふつうの錠剤より硬く作られており、徐々に溶けるような製剤設計がなされています。かみ砕いたり、飲み込んだりせず、できるだけ長く口の中に含んで溶かします。
このように、トローチは長時間なめるようにつくられているお薬ですので、誤って飲み込んでしまっても息が詰まらないよう、真ん中に穴をあけています。