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ホームレスと救急隊員の間に芽生えた絆

今から16年前、アメリカ・カリフォルニア州セレス。
ジーナは、この街で救急隊員として働いていた。 主な仕事は、通報を受けて出動することだが、通報の多い地域をパトロールする事もよくあった。
この日も、パトロールに出ており、あるガソリンスタンドの裏を通った。 そこには、一人のホームレスの男性がいた。
ジーナは「何か困っていることはないですか?」と声をかけた。 ホームレスの男性は「大丈夫です」と言って去っていった。

だが、次のパトロールでも、ガソリンスタンドの裏を通ると…先日の男性がいた。 そのホームレスの男性はウィルと名乗った。 ジーナはウィルに「ウィルさん!私、よくこの辺りをパトロールしていますから何かあったら言ってください」と声をかけた。

その後もジーナは、週に1回ほどガソリンスタンドの裏を通り、ウィルに声をかけた。 ただそれは、彼女にとって特別な事ではない。
実は、この地域にはホームレスが多く住んでおり、彼等に関連した救急の通報をよく受けていた。 その為、ホームレス達に声をかけ、問題が起きていないかを確認する事は、彼女にとっては通常の業務だったのだ。

そんなある日、ウィルはホームレス仲間と話をしていた。
ウィルはいつも仲間の相談に乗っているのだという。
するとジーナは「それじゃあ…私の相談にも乗ってくれますか?」とウィルに言った。

実はジーナ、この年に結婚をし、第一子も誕生。 そのため、家事と仕事の両立で悩みを抱えていた。
ウィルは、きっと家族も理解してくれるはずだと言って、ジーナを励ました。

こうして、ジーナは、ウィルに心を許すように。
そして、いつも自分の話を聞いてくれるウィルに対し、夫が使わなくなったジャケットやブーツをプレゼント。 すると、出会った当初は、そっけない態度のウィルだったが、少しずつ、ジーナに心を開いていき、二人の間には不思議な友情が芽生えていった。

そんな中、ジーナにはある疑問が生まれ始めた。 それは、ウィルがホームレスになった理由。 それを本人に聞いてみると、そこにはある悲しい過去があった。
6年前、ウィルは水道の配管工として働き、14年連れ添った妻と幸せに暮らしていたのだが、突如、病により妻がこの世を去ってしまった。 その現実を受け止められず、アルコールに溺れ、ついには違法薬物にまで手を出してしまう。 そして、職も、家も失ってしまったのだ。 もう薬物には手を出していないものの、今でも禁断症状が出ることがあるという。

そして、二人の出会いから1年が経過した、ある日の事…ウィルが怪我をしていた。 実は、ホームレス仲間が絡まれるのを助けようとして、返り討ちのあってしまったのだという。
さらに、持っていた現金も身分証明書も盗られてしまったのだ。 ウィルは、誰かのためになる事をしたいと思い、仕事を探していた最中だった。 しかし、身分証明書がなければ仕事には就けない。 そこで、ジーナは、身分証を作るためにと、手持ちの7ドルを渡した。

次のパトロールの日、ウィルはいなかった。 次も、そのまた次のパトロールの時も、ウィルの姿はそこになかった。 7ドルを渡した日から、ウィルは姿を消してしまったのだ。

その後もジーナは、ウィルの事を気に掛けていたが、その消息を掴む事は出来ず、ウィルと最後に会ってから10年の月日が流れた。 この日ジーナは、パトロールの途中、別の街にあるガソリンスタンドに立ち寄った。 そこで、男性にこう声をかけられた。
「私の事、覚えているかい?」
声をかけてきた男性は、ウィルだった! そう、ジーナとウィルは、奇跡の再会を果たしたのだ! 店舗は違うが、出会った時と同じ、ガソリンスタンドで。

再会した二人は、最後に会った日から今までの事を話した。
ジーナから7ドルを受け取ったウィルは、薬物依存者の更生施設へ。 社会復帰を目指す際に、薬物の禁断症状、そして酒を断とうと訪れたのだ。 その事をジーナに伝えようと思ったのだが、思っていた以上に厳しい外出制限などの決まりがあり、会いに行ける状況ではなかった。

およそ1年後、施設を出た彼は、ジーナとの約束通り、役所へ行き、身分証明書を再発行してもらうことに。 通常は、30ドルほど掛かるのだが、ホームレスのための特別プログラムにより、ちょうど7ドルで再発行してもらう事ができた。
その後、建設会社での仕事を得て、住む場所も確保。

ジーナに報告しようと、あのガソリンスタンドの裏に頻繁に行っていたのだが… それまでは、ウィルがそこで暮らしていたため、ジーナがパトロールでやって来てくれさえすれば、会う事が出来たが、住む場所が出来た今では、たまたま同じ時間帯に二人がこの場所を訪れない限り出会えない。 互いに昼間の仕事だった事もあり、その願いは叶わなかった。

また、誰かに尋ねるにしても、ジーナのフルネームを聞いておらず、写真も持っていない。 救急隊員とは分かっても、部署まで分からないなど、手がかりが少な過ぎた。
さらに、壁にジーナ宛にメッセージを貼る事も考えたが、ウィル自身は携帯電話を持っておらず、職場の連絡先を公に張り出すわけにもいかない。 彼女を探す手段を見つける事が出来なかったのだ。

再会時、ウィルは通っていた教会の牧師に誘われ、家や職がない人たちのために食糧や物資を供給する仕事をしていた。 人のために何かしたいという希望を叶えていたのだ。

救急隊員とホームレス、全く違う立場で出会ったジーナとウィル。 そんな二人は、この出会いを互いにどう感じているのか?
ウィル「彼女は、私に変わる方法を教えてくれました。チャンスさえあれば、変わる事が出来るという事を。」
ジーナ「小さな親切が、どのように発展していくかを見る事が出来るなんて、なんという贈り物、なんという喜びでしょう。もし必要としている誰かに愛を分けてあげる事が出来れば、その人の人生だけでなく、その人と関わる多くの人たちの人生さえも、変える事が出来るのです。」

ホームレスと救急隊員として出会い、友情を育んでいったジーナさんとウィルさん。 再会した後も、二人の友情は続いている。 今現在も頻繁に連絡を取り合い、一緒に食事に行く事もよくあるのだという。

ウィルさんはジーナさんと再会した後、教会で出会った女性と結婚! その報告を聞いたジーナさんは、心から祝福したのだという。
年齢も性別も超えた二人の友情。 今、互いに伝えたい事は何なのか?
ウィル「私から離れないでね。」
ジーナ「絶対に離れないわ。あなたは私の家族であり、親友なんだから。」