今から2ヶ月前、スコットランド北部の湖で、ある生物の大規模探索プロジェクトが実行された。
世界で最も有名なUMA、あのネッシーの探索である。
大規模探索は約50年ぶり。
今回は、音響システムや温度を可視化するサーマルドローンなど、最新のテクノロジーを導入。
世界がその調査の行方に注目した。
だが…2日に渡る探索の結果、今回もネッシーの存在を証明することはできなかった。
しかし、その1ヶ月ほど前。
アメリカ・バーモント州とニューヨーク州の境に位置する湖、シャンプレーン湖で、巨大生物の存在を示す証拠が記録されたという。
シャンプレーン湖は、長さおよそ200km、幅最大23km、南北およそ200km、東西最大23km、琵琶湖の2倍ほどの面積を誇る広大な淡水の湖。
最大水深は122mにもなり、多種多様な生物が暮らしている。
果たしてこの湖に一体、どんな未確認生物、UMAがいるというのだろうか?
我々が最初に向かったのは、地元の科学博物館。
この土地の歴史や、水棲生物の生態に詳しい担当者に話を伺うと…
「シャンプレーン湖のほとりに住む先住民族たちの間には、1000年くらい前から、未知の生物が棲息しているという伝承があります。1609年にこの地を開拓したフランスの探検家も、巨大生物を目撃したという記録を残しています。」
多くの目撃情報から、巨大生物は全長7メートルほど、潜水艦のような体に樽のような太い首、頭は馬のようだったと推測される。
それは恐竜のような生き物とイメージされ、当時は懸賞金もかけられたという。
「その後、300年あまり、巨大生物の決定的な姿が目撃されることはありませんでした。しかし1977年、ついに歴史的な証拠が撮影されたのです。」
その重大な証拠がこの水族館に展示されているという。
その写真が、こちら!
湖面から盛り上がった胴体。
そこから突き出した長い首のようなものが…はっきりと確認できる。
それはあたかも、ネス湖のネッシーのような首長竜を彷彿とさせる写真だった!
しかしネッシーの写真は、後に捏造であることが判明している。
水面に小さな模型を浮かべ、背景を写さないことで大きさを誤魔化し、撮影されたものだった。
ちなみにシャンプレーン湖で撮影された写真には背景が写っており、専門家によれば、大きさは体長7m〜24mと推定されるという。
さらに、この写真は湖を訪れた観光客が偶然 撮影したもので、アリゾナ大学の研究チームにより、加工など一切行われていないされているという。
撮影から4年後、ニューヨークタイムズが写真を掲載すると、瞬く間に全米中で話題になった。
いつしかその生物は、シャンプレーン湖の未確認生物「チャンプ」と呼ばれるようになった。
以来、チャンプを一目見ようと、多くの人々が湖を訪れた。
すると…目撃情報が続々と寄せられるように。
その数、これまでになんと300件以上!
さらにチャンプの正体についても、様々な意見が取り沙汰された。
中でも有力視されたのが…古代の巨大海洋生物、プレシオサウルスの生き残りという説。
プレシオサウルスとはおよそ6500万年前に絶滅したと言われている首長竜の一種、海に棲息していた。
本来、淡水の湖で生きられるはずがない。
しかし遥か昔、シャンプレーン湖には海と繋がっていた時代があった。
事実、湖があるバーモンド州では、1800年代中頃、鉄道の敷設工事が行われた際、体長4mほどのクジラの骨格が見つかっている。
これはかつてシャンプレーン湖が海と繋がっていたことを示す重要な証拠。
そこで、次のような推測がなされた。
シャンプレーン湖と大西洋が繋がっていた時代、湖と海が交わるところに首長竜のグループが棲息していた。
その一部が海との繋がりが途絶えてなお、淡水でも生きられるよう進化を遂げ、現代まで生き延びたのではないかと。
しかし、これまで寄せられた多くの目撃情報について、バーモント大学 野生生物・水生生物学教授、エレン・マーデンス氏はこう話す。
「シャンプレーン湖では、チョウザメを見ることができます。奇妙な体をしていて、魚とは思えない長い鼻を持ち、体長2mから3mほどになります。私はチョウザメを未知の生物だと思い込んだのではないかと考えています。」
そんな中、今から21年前、ノースカロライナの音響学者によって、驚くべき事実が発覚。
彼女は湖底に音響機材を投げ込み、湖の生物の生態調査をしていたのだが…湖で聞こえるはずがない、奇妙な連続音を録音したという。
音響研究家、エリザベス・フォン・ムッゲンターラー氏はこう話す。
「このスピーカーでは周波数の違いで、正しく音が聞こえないのですが、このようなクリック音が鳴っています。」
分析の結果、それはイルカなどの水生哺乳類が物体との距離を測ったり意思疎通を取ったりする際に発する、エコロケーションの音に近いことが判明した。
シャンプレーン湖で、エコロケーションを使う生物はこれまで一度も確認されていない。
謎の生物の姿は映像でも捉えられている。
こちらは2009年に撮影された映像。
湖面に見える、背中と首のようなもの。
明らかに魚ではない、何かが泳いでいるように見える。
これはチャンプを捉えた映像なのか?
そして…今年7月、チャンプの存在を裏付けるような新たな証拠が撮影されたという。
それは一体どんなものなのか?
我々は撮影者で、地元で釣船の船長を務めるスコットさんに接触、話を聞いた。
「あの日は、前日に大雨が降って、波が高くて水が汚れていたので、午前中の釣り客がキャンセルになったんだ。だけど、湖の様子を確かめるために船を出したら、魚群探知機に、あり得ない大きさの怪物みたいな影が横切って、とっさに写真を撮ったんだ。」
一般的に魚群探知機は船底から超音波を発信。 その反射によって魚群の存在や海底の様子を探る。 船内のモニターには、海の中の様子が、横から見た断面図として表示され…魚群の密度が濃かったり大きかったりするほど、色が濃く映し出される。
その時のモニターの写真がこちら!
お分かりだろうか?
中央の赤い部分を胴体とすると、そこから伸びる長い首と尻尾。
さらに4つのヒレのようなものまで。
そのシルエットは、1977年に撮影されたものの姿形に似ている。
スコットさんに、反応があった場所に連れて行ってもらえないか聞いてみると、快く了承してくれた。
さらに、チャンプの民間調査団体「チャンプサーチ」に協力を依頼。
彼らはこれまでにも湖を泳ぐ、ナゾの影を捉え、5年前にはエコロケーションの音声を記録。
そして昨年9月にはスコット船長同様、全長6mほどのナゾの生物の姿をソナーで探知するなど、数多くの実績を残してきた。
今回は「チャンプサーチ」代表であり、チャンプ調査の第一人者、ケイティさんにも同行してもらった。
ケイティの調査は徹底している。
船のソナーと高性能の双眼鏡で水中と水上をカバー。
さらに自前の高感度水中カメラシステムには、LEDが付いているため、多少濁っていてもその姿を撮り逃すことはない。
映像だけでなく、音にも対応。
マイクを水中に仕込み、エコロケーションの音も逃さない。
万全の態勢を整え、チャンプ調査、開始!
朝9時、天候も良く波も穏やかだ。
ケイティ「上空にカモメがいるわね。それにほら水面にも」
そう、鳥がいるということは魚がいる。つまりその魚を狙うチャンプが、近くにいる可能性がある。
だが、そこには、魚の影は見当たらなかった。
気を取り直し、移動を再開。
チャンプの画像が撮れた場所へやってきた。
水中カメラを沈め、水の中を捜索。
待つこと5分、カメラには大したものは映らなかった。
では、音はどうなのか?
エコロケーションらしき音は聞こえてこない。
気を取り直して別のポイントへ移動。
今度は撒き餌を使って、チャンプを誘き寄せる作戦を決行。
再びカメラを投げ入れその姿が映るのを待った。
だが…ここでも何も映らず。
実は、この日、連日降った雨の影響で湖はかなり濁っていた。
エコロケーションの音も、ここでも記録することができなかった。
諦めかけた その時、なんとすぐ近くに先ほどよりも鳥の集まる場所があった。
魚の群れがいれば、チャンプがいる可能性は高くなる。
我々はすぐさま鳥の集まる場所へ移動。
すると…探知機が大きな影を捉えた。
急いで船を向ける。
すると…探知機が先ほどよりも大きな何かを捉えた。
これが、チャンプなのか!?
水中カメラを沈め、確認する。
しかし、チャンプらしき姿はカメラに映っていなかった。
すると…
ケイティ「ダメだわ。これだと、ちょっと波が高くなりすぎて船が安定しないから、もう調査は無理ね」
実はこの程度の波でも、釣り船のような小型船の場合、停泊させておくことは危険。
この先の予報でも、湖面が回復する見込みはないため…残念ながらここで調査を断念。
結局、今回、チャンプらしき生物の姿を捉えることはできなかった。
最後にケイティさんにチャンプは、どんな生物だと思うか聞いてみた。
「どれかの種類にあてはめることはできないかもしれません。彼らは水の中でも呼吸ができたりするような両生類と、爬虫類の両方の性質を持った進化系ではないかと思っています。」