生後2ヶ月のシベリアンハスキー。
名前は、ハスラー。
モフモフした毛並みとあどけない表情が可愛らしい子犬だが、どこか様子がおかしい。
実は、生まれつき障がいがあり、昨年の11月、ボランティアのNPO法人に保護されたのだ。
病名は、『関節形成不全』。
関節の形が不完全で足が安定せず、歩行異常などが現れてしまう病気。
ハスラーの場合、すべての脚の関節の形が不完全で外に開いてしまい、全く歩けないばかりか、立つこともできない。
寝返りさえ打てなかった。
犬は動き回ることでコミュニケーションをとる動物で、自由に動けなくなると、精神的なダメージを受け、ストレスを抱えやすくなってしまうという。
しかも、子犬の時期に他の犬や人と温かなコミュニケーションをとれずに過ごすと、一生、周囲の存在に怯え続けてしまう危険性もある。
たとえ、どんな障がいがあっても出会った命は助けてあげたい。
ここ「NPO法人ペット里親会」では、難病や障がいがある犬ネコなどを優先的に年間およそ1千頭を保護。
治療やリハビリを受けさせ、里親を探したり、シェルターで面倒を見たりしている。
担当した新田さんは、こう話してくれた。
「最初にレスキューした時に…仰向けになったままで寝返りが打てなかった。手足をぱたぱたさせたり、歩きたそうにしてました。やっぱりそういうところを見て動けるようにしてあげたいと思いました。」
せめて、歩けるようにしてあげたい。
こうしてハスラーのリハビリが始まった。
リハビリ中、新田さんは、ハスラーが苦痛を感じないように、おもちゃ使ったり、おやつ使ったりして、楽しくリハビリができるように工夫した。
必死に腹這いで前へ進むハスラー。
しかし、バランスをとることはできない。
そして、運動の前後に欠かせないのが、マッサージ。
筋肉や関節の痛みを和らげる効果がある。
さらにまだ関節が柔らかい子犬のうちならば、開いてしまった脚が正しい方向に戻る可能性もある。
すると2、3日後、ある変化が。
寝返りができるようになったというのだ!
リハビリは順調かと思われた。
だが、後ろ足を屈伸する動きをさせると、しきりに痛がるハスラー。
心を鬼にして、リハビリを続けた。4、5日経つ頃にはハスラー自身にもある変化が…痛がってばかりだったハスラーが、一生懸命に自分の力で立とうとするようようになったのだ。
少しずつではあるが、脚の使い方も変わってきた!
タオルで体を持ち上げ、脚で体を支える手助けをしてあげることに。
こうしたリハビリを続け、およそ一週間。
新田さんが目にしたのは、ふらつきながらも確かに歩く、ハスラーのたくましい姿だった!
しかし…ハスラーが起こした奇跡は、これだけではなかった。 ついにハスラーが、走り始めたのだ。 保護されてきた当初、立つことさえ出来なかったあのか弱い子犬から、一体誰がこの雄姿を想像出来ただろうか。
それから約2ヶ月、生後4ヶ月に成長したハスラー。 現在も元気にシェルターで暮らしている。 最近覚えたというのが…おすわり。 ハスラーの里親を募集するのは、成犬になってからだという。 立派なハスキー犬に育つその日まで、未来に向かって、走れ、ハスラー!