1月20日 オンエア
まるで現代のおとぎ話 韓国チキン巡る奇跡の実話
 

韓国ではソウルフードとも呼ばれる韓国風の味付けを施したフライドチキン「韓国チキン」。 その中のヤンニョムチキンは近年日本でも人気を博し、ブームとなっている。 日本では小分けにして売られることもあるが、本場韓国では鶏一羽でのオーダーが一般的で、値段は安くても1500円以上はするという。
そんな大人気の韓国チキンだが、一昨年以来、新型コロナウィルスの蔓延により、多くの店舗が営業不振に陥っていた。
だが、韓国・ソウルにある韓国チキンのフランチャイズ店、鉄人7号弘大店には、連日「あのチキン」を食べたいと多くの注文が殺到。 一時は対処しきれず、注文の受付を制限するほど。 一体、「あのチキン」とは?

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全てのはじまりは、一昨年の2月。 コロナウィルス蔓延の影響で売上は半分以下、店長のパクは苦しい経営状況に頭を悩ませていた。
そんなある日、店の前である兄弟がなにやら揉めていた。 パク店長が声をかけると、兄である少年が5000ウォン札一枚(約500円)を差し出し、この分だけチキンを売って欲しいと言ってきた。 安くても1500円はする韓国チキンを買うには全く足りない。 だが、パク店長は快く兄弟に無料でチキンを振る舞った。

パク店長はこう話してくれた。
「他のお店で何度か断れたれたのだろうとわかりましたし、どれほど辛かったのか想像できました。ほんの一時だけでも、その辛さから守ってあげたいと思ったんです。だから奢ってあげようと思っただけで、私は大したことはしていないんです。」

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その後も、その兄弟の弟は何度か店にやってくるように…その度にパク店長は無料でチキンを振舞った。
だが、毎週のようにきていた弟が、ある時からぱったり姿を見せなくなってしまった。

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そして昨年2月、依然としてコロナの影響により、客足は乏しかったのだが…突如として大勢の客が押し寄せたのだ! 店に多くの客が押し寄せた理由…それは、鉄人7号の本社に届いた一通の手紙。
「初めて会った私たち兄弟に温かいチキンと思いやりをくださった、パク店長さんに心から感謝します。」
そう、あの時チキンを振舞った兄弟、その兄からの手紙だった。

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その内容は…両親を亡くし、体の弱い祖母と7つ下の弟と暮らしていること。 コロナウィルス流行の影響で生活が苦しい時、弟にチキンが食べたいとねだられ、手持ちのお金で買えるチキンを探して困っていた時に、パク店長に快く迎え入れられ、チキンをご馳走になり、とても嬉しかったことが書かれていた。 そして、弟が自分に内緒でその後もチキンをご馳走になっていたと知り、申し訳なくて直接会いに行けていないが、感謝の気持ちを伝えたくてこの手紙を書いたという。
そして手紙の最後には、「僕が大人になってお金をたくさん稼げるようになったら、僕らのような貧しい人たちを助けながら生きていける、パク店長さんのような人間になりたいです。」と書かれていた。

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手紙は誤字も多く、またお世辞にも綺麗と言える字ではなかったが、彼が精一杯思いをこめて書いたものだということはよく伝わった。
そして、少年の手紙に感動した本社の社長が自分のSNSに手紙を公開。 すると…「感動した」「心が温まった」など、すぐさまネット上で大反響を呼んだ。 閑古鳥が泣いていた店には「兄弟の食べたあの味が食べたい」と、多くの客が訪れ、一時は捌き切れず、注文を制限するほどの大繁盛。

さらに、ニュースで報道され、韓国中にこのことが知れ渡ると…本社は、兄弟に奨学金を渡すと表明した。 しかし、報道でこのことを知った兄は、インターネット上にあるコメントを残した。
「今はアルバイトをいくつか掛け持ちしながら生計を維持しています。支援してくれるという方々に本当に感謝していますが、気持ちだけいただきます。その代わり、私よりも支援が必要な人たち、その人たちを助けてほしいです。」と、支援を断ったのだ。
そのコメントの最後にはこんな決意が綴られている。
「いつになるか分かりませんせんが、必ずまたパク店長さんの元にお伺いしたいです。」

一方、パク店長が経営するホンデ店を訪れる客の中には、店への支援金を申し出る人も現れ、その額は約600万ウォン日本円で約60万円にも及んだ。 しかしパク店長は、店や自分自身のためにこのお金を使うのでなく、全額を恵まれない子供達への支援団体へ寄付した。
実は手紙については…読むと感極まってしまいそうだという理由で、話題となったあともしばらくの間読めずにいたという。
「韓国のテレビ局でインタビューを受けた時、初めて内容を確認したんですが、人目をはばからず、号泣してしまったんです。兄弟たちがいろんな感情を込めて書いたと思うと、涙がすごく出てしまいました。今でも涙が出そうになってしまい、じっくり読めないです。いつか兄弟と再会した時、一緒に見て、その後どう過ごしてきたのか話を聞きたいです。」