1月20日 オンエア
絶対に予想できない結末! 謎が謎を呼ぶ失踪ミステリー
 
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今から35年前の4月。 この日、実家の近くに住むライラが早朝から夫と共にドライブに出かけてようとしていた。 川沿いにライラの父・アレックスの車が停まっていた。 釣りでもしているのかと思い、様子を見に行くと、アレックスは乗っておらず、釣り道具が積んだままになっていた。 胸騒ぎを覚えたライラは…すぐに母・マーガレットに伝えた。 マーガレットによると、アレックスは昨日の夜には仕事から戻るはずだったのが、まだ戻っていないという。

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アレックスとマーガレットが結婚したのは、そこから遡ること35年。 5人の子供、3人の孫にも恵まれ、愛に溢れる家庭を築き上げてきた。 夫婦でクリーニング業を営む一方、新たに食品配達の営業を始めるなど、仕事も順風満帆。 人々からの信頼も厚く、地元の名士として誰からも尊敬される人物だった。
そんな彼も65歳になり、老後は夫婦で自由な時間を過ごしたいと、マーガレットは夫アレックスが仕事を引退する日を心待ちにしていた。 彼がいなくなったのは、そんな矢先の出来事だったのだ。

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マーガレットが真っ先に思い浮かべたのは、アレックスが突然具合が悪くなり、病院に運ばれたのではないかということだった。 地元の病院、ホテルなど、滞在している可能性のある施設を片っ端から当たってみたのだが、アレックスは見つからなかった。
ますます心配になったマーガレットは、警察に捜索を依頼。 地元の名士であるアレックスの失踪とあって、警察もただちに大規模な捜索を開始。 同時に彼の友人、知人らにも聞き込みを行ったのだが…めぼしい情報を掴むことはできなかった。

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その後 警察は、事件事故、両方の可能性を考えて捜査を進めた。
家族もアレックスの情報を求めるポスターを作成。 町中に貼って回ったり、怪我や病気で動けなくなっている可能性も考え、周辺の空き家を徹底的に捜索した。

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さらに失踪から5日後には、新聞社に協力を要請。 アレックス失踪の記事は大きく取り上げられた。
すると、思いも寄らない情報が寄せられたのである。 それは…失踪が発覚する前日、車の置かれた場所から数キロ離れた道路で、アレックスによく似た人物がヒッチハイクをしていたという目撃情報だった。

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アレックスの身に一体、何が起こったのか。 その後も捜索は続けられたが、結局、足取りは掴めぬまま一年が経過した。
このまま待ち続けても苦しいだけ、それならばいっそ区切りをつけて前を向きたい。 そう決断した家族は、アレックスの死亡届を申請することにした。

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ところが、これをきっかけに驚くべき事実が判明する。
役所の担当者から、アレックスの死亡届は受け付けることができないと連絡があった。 役所が調べたところ、アレックス・クーパーという人物の出生証明書は存在しておらず、生まれていない人物の死亡届は受け付けられないというのだ!

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その後も事件か事故か、全てが何もわからぬまま、失踪から4年の月日が経過した。 そんなある日、アレックスの捜索とは関係のない、彼の自宅から3500キロ離れたトロントで、事態は思わぬ形で動き始める。
この日、警察はデイヴィッドなる人物が行方不明になっているとの通報を受け、彼の住んでいたアパートを訪れていた。 その部屋にあったのは、なんと紛れもないアレックスの写真だった! そして、その知らせはすぐにマーガレットの元に届けられた。

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だがその後、アレックスが部屋に戻ったという通報を受け、もう一度、警察が駆けつけてみると…警察がきていたことに気づいたのだろう、アレックスは荷物をまとめ、逃げるように姿を消したのである! 彼はなぜ、逃げ続けるのか? 実は、そこには彼が人生をかけ、ひた隠しにしていた重大な秘密があった。

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そして彼が再び逃亡してから半年後のこと。 ついに、アレックスが警察に捕まった。 そして、彼の本当の名前があきらかになる…アルビン・アーセナルド、それが彼が40年以上前に捨てた本当の名前だった。

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話はそこから44年前の1948年に遡る。 当時、オンタリオ州北部で駅長をしていた彼は、鉄道事務所内の金庫から高額の債権が盗まれた事件の容疑者として、過酷な取り調べを受けていた。 やがて、恐怖におののいた彼は、隙をついて逃亡。 クランブルックに流れ着くと、アレックス・クーパーと名乗り、生活を始めた。

当時は終戦直後の混乱期。 現在の日本でいうマイナンバーのような役割を持つ「社会保障番号」を不正に入手する方法も多く存在した。 その番号があれば、ほとんど全ての手続きが事足り、別人として生きていくことが可能だった。
その後、過去を隠したままマーガレットと出会い、結婚。 以降35年間、本当の自分を誰にも明かさず、別人として生きてきたのだった。

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だが、65歳になり、年金の受け取り方を調べたところ「社会保障番号」だけでなく、「出生証明書」まで必要だということを知った彼は青ざめた。 カナダでは殺人や強盗などの重犯罪については、時効が存在しない。 この件が周囲にバレれば、再び警察に捕まる可能性もある。 そう思ったアレックスは、必要なだけの現金を持ち、一人 家族の元を去ったのである。 これが、40年以上にわたってアレックスが抱えてきた秘密の全てだった。

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実は、アレックスが逃亡した後、事件の真犯人はすぐに捕まり、刑に服していた。 つまり…アレックスは最初から偽名を使う必要も、逃げる必要もなかったのだ。 しかし、当時は厳しい取り調べを受けたことで、警察に目をつけられたら疑いを晴らすことはできないと思い込み、その恐怖から逃亡。 自ら名前を捨てた。 結果、40年間、家族に必要のない嘘をつき続けていたのだ。

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その後、全てが明らかになったことで無事釈放されたアレックスは、家族の元へ戻る決心をした。 家族も警察からすべての事情を聞かされているはずだった。 だが40年もの間、騙し続けてきたのは事実…その足取りは重かった。
家族は、アレックスを暖かく迎え入れた。

その後、アレックス発見のニュースを報じた番組で、夫婦はこのように語っている。
アレックス「嘘をついていたことを、家族が受け入れてくれなくても当然だと思っています。家族を捨てたというのは、私にしてみれば大きな犯罪です。残りの人生をかけて精一杯償うつもりです。」
マーガレット「私たちの家族はとても仲が良かった。だからこれを乗り越えて、またやり直せると思います。今まで以上に良い形に。」

ところが…現実は思うようには進まない。 その後も夫婦は互いに努力を重ねたが、一度は自らの保身のために家族を捨てた夫をマーガレットはどうしても受け入れることができなかった。 やがて、二人は離婚。
夫婦でなくなってからも交流は続いたが、4年後にマーガレットは他界。 職業を失っていたアレックスも、娘たちを頼り一人暮らしを続けたが、その11年後に天に召された。

次女ライラさん、三女ローラさんはこう話してくれた。
ライラ「もちろん、子供である私達も母同様、裏切られたことに対する怒りは感じていました。それでも、彼が私たちの父であることに変わりはない。時が経つに連れ、私たちの人生に戻ってきてくれて、本当によかったと思えるようになったんです。」
ローラ「この出来事を通して、過去を忘れることはできなくても、許すことはできるということを学びました。人生でどんな過ちを犯していたとしても、心の温かい人であったことには間違いありません。私の父であったことを誇りに思っています。」