9月17日 オンエア
トラックドライバーと少年 人知れず育まれた友情
 

アメリカ・ウィスコンシン州を通る幹線道路、国道26号線。 この道路を自宅の庭から眺める少年、ダコタ・キャッド君(当時16歳)。 家族や友人からは『ババ』の愛称で親しまれている。
彼には欠かさない日課がある。 それが…車に向かって、腕を上下に動かすアクション。 実はこれ、アームパンプと呼ばれるもの。 日本では馴染みがないが、アメリカの子どもたちの間では、よく知られた動作だという。

国土の広いアメリカには、大型トラックに乗り颯爽と走るドライバーに憧れを持つ子供も多い。 そして子供がトラックに向かってこのアームパンプをすると…ドライバーはクラクションで応えてくれるのだ! 実はアメリカには…トラックなどの大型車の中に、昔から紐を引っ張ってクラクションを鳴らすタイプのモノがある。 ドライバーに憧れる子どもたちが、その動きをマネしたことから、アームパンプのジェスチャーが習慣化したのではと言われている。

そしてダコタくんが、トラックに夢中になったのもこのアームパンプがきっかけだった。 2歳の時、両親とトラックに向かい、初めてアームパンプをすると…ドライバーがクラクションを鳴らして返事をしてくれたのだ。 以来、ダコタ君はトラックに夢中になった。
生まれつき脳と運動機能に障がいを抱えるダコタ君は、体の自由が効かない。 そんな彼にとって広大な国土を縦横無尽に走る大型トラックや…アームパンプをするとクラクションで応えてくれるドライバーは憧れの的だった。

2年前、そんなダコタ君にとって、生涯忘れられない出来事が…いつもトラックを眺めている裏庭に行ってみると、1つの袋が投げ込まれていた。 中には…ダコタ君宛のプレゼントが入っていた。 母ペギーは、そのことをSNSに投稿、プレゼントをしてくれた人へお礼を述べた。

photo

3週間後、送り主はトラックドライバーのマーク・キングさんと判明。 実はマークさんには障害をもつ姉がいた。 いつも自分に向かって腕を振るダコタ君にその姿を重ね、気にかけていたのだ。
マークさんはプレゼントをしたことについてこう話してくれた。
「トラックでババ君の家の前は何度も通っていました。彼はその度にアームパンプをしてくれるんです。でもある日、クラクションが壊れていて応えてあげられなかった。とても申し訳ない気がして、代わりに何かしてあげたいと思いました。それでプレゼントを庭へ投げ込んだんです。見つけてくれますようにって願ってね。」

しかし、これはほんの始まりにすぎなかった。 マークさんの話を耳にし「自分もダコタ君に何かしてあげたい」、そう思った別のトラックドライバーが現れたのだ。
彼の名はジェレミー・ウォーレンカンプさん。 早速、ジェレミーさんは行動を開始。 ダコタ君と、トラックドライバーとが交流できるフェイスブックを立ち上げた。

photo

さらに母ペギーさんにSNSで連絡をとり、ある計画をもちかけた。 それは、ダコタ君が16歳の誕生日を迎える8月にサプライズバースデーパーティを行おうというもの。 ドライバー仲間何人かを集め、公園でバーベーキューでもしようと…このことはSNSで、ドライバー仲間にも伝えられた。

そして迎えたサプライズバースデーパーティ当日。 ダコタ君は自宅から5分程の場所にある公園まで、バスで連れて来てもらっていた。 そこでダコタ君が見たものは…会場に詰めかけた多くの人の姿。
東京ドーム約3個半分の広さを誇る公園、シルバーグパークに…なんとおよそ300台のトラックやトレーラーが集結。 さらにドライバーとその家族、1000人を超える人々が詰めかけていた!

一体、なぜ、これほどまで大勢のトラックドライバーがダコタ君のために駆けつけたのか? 交流の場を立ち上げたジェレミーさんはこう話してくれた。
「トラック運転手というのは、何かあったら団結し助け合うものなんだ。誰かのために自分が出来ることをする!この時は、それがババ君のために俺たちトラック野郎が集まるってことだったのさ。」

photo

さらに…ダコタくんの家にプレゼントを投げ入れたマークさんは…
「夜、たった一人でハンドルを握っていたり、長時間運転して家族のもとに帰ったり、そんな俺たちにとってババ君の笑顔は励みになってるんだ。あの子は意識していなくても多くのドライバーに影響を与えてるんだよ。」

一人の少年の誕生日を祝うために集まった、300台以上のトラックやトレーラー、そして1000人を超える人々。 当日集まったプレゼントは、700個以上にも上ったという。
実はサプライズパーティのあと、マークさんはダコタ君をトラックに乗せ、自宅まで送り届けていた。 ダコタ君は、実際に車内でクラクションの音を聞くことも出来たという。

サプライズパーティの後も、ダコタ君を喜ばせたいというトラックドライバーは後を絶たなかった。 彼のもとには、トラックの形をした遊具や…匿名のドライバーから、車椅子でもアウトドアを楽しめるようにと開発されたキャタピラ式の電動車椅子が贈られた。
トラックドライバーたちと一人の少年。 彼らの間に生まれた絆は、これからも育まれ続けていくことだろう。

photo

母・ペギーさんは、こう話してくれた。
「トラックのクラクションを聞くたびに思うんです。パーティーから2年が経った今も、トラック運転手のみなさんは、ババのために、わざわざクラクションを鳴らして手を振ってくれる。本当に感謝の気持ちで一杯です。」 そして今日もダコタ君は…トラックに元気を送り続けている。