8月6日 オンエア
世界に最も刺激を与えた男 人生を変えた出会い
 
photo photo

今から4年前に行われた、イギリスBBCが選ぶ世界に最も刺激を与えた人物への表彰式。 多くのノミネートの中でこの賞を受賞したのは…オランダ人のケース・ヴェルボーさん。 職業は…救急車の運転手。 彼はいったいどんなことで、世界に最も刺激を与えたのか?

photo

オランダ第二の都市、ロッテルダムで生まれたケース、彼の人生が大きく変わったのは、今から14年前のこと。
この日、ケースがやってきたのは…ロッテルダムの隣町の病院だった。 ある末期ガン患者を痛みを抑える緩和治療に切り替えるため、ロッテルダムの大きな病院に移送することになっていた。

photo photo

患者を病院から搬送するいつも通りの仕事…のはずだった。 それは出発して間もなくのこと、移送先の病院が、受け入れ準備にあと3時間もかかると連絡してきたのだ。 この時、病院を出発する時に患者のマリオが「今日から少し違う景色が見られるだけで、ありがたいよ」と言っていたのを思い出し、ケースにある考えが浮かんだ。

photo photo

ケースは、「マリオさん…これからどこか、行きたい所あります?」と聞いた。 すると…「港、港に行きたい」という。 マリオは、元船員で、海が故郷だという。
ケースは、マリオが入院していた病院の医療スタッフを説得。

photo

そして、マリオを港に連れて行った。
病院の準備が整うまで、そのまま1時間くらい港にいたという。 マリオは涙を流して喜んでいた。

photo photo photo

もう一度マリオに、船の上から海を見せてあげたい…そう思いたったケースは早速行動を開始。
先ずはマリオの主治医から許可を得る必要があった。 ケースはあくまで救急車の運転手、末期患者を連れ出すには、専門の医師か看護師を連れて行かねばならなかった。 だが…妻のイネケが看護師だったということもあり、看護師団体との繋がりが深かったケースは、協力してくれる看護師をすでに見つけていた。

photo

次に移動に使う車両の問題。
これもケースと仲の良かった上司が、医療設備の整った救急車の使用を、あっさり認めてくれた。

photo

だが、まだもう一つ大きな問題が…実際に乗る船の確保だ。 チャーターするとなると、かなりの費用がかかってしまう。 そこでケースは、船を保有する会社に片っ端から電話をかけ、なんとかマリオの願いを叶えてもらえないかと頼み込んだ。 すると…ケースの情熱に打たれ、無料で船を貸してくれる会社まで現れたのだ!

photo photo

こうして多くの人の善意が集結し…今から14年前の11月。 マリオは発病して以来初めて、船に乗って海の上へ…満面の笑みを浮かべ、ガッツポーズ。 その姿が全てを物語っていた。

photo

それからおよそ5ヶ月後、マリオは病院で息を引き取った。
自分の死期がわかっていたマリオは、亡くなる直前、葬儀で読んでもらうための原稿を用意していた。 その中で、ほんの数ヶ月前に知り合った、ケースへの感謝を語っていたという。

photo photo

このことに胸を打たれたケースは、マリオの死から1年後…妻と共にNPO法人「アンビュランスウェンス」を立ち上げた。 癌などの末期症状で、自ら動くことのできない人々を医療設備が整った特別な車で運び願いを叶える、世界初のサービスだった。
立ち上げから2年後、ケースは救急車のドライバーをやめ、この仕事に専念。 彼らの活動は世界中で大きな反響を呼んだ。

photo photo photo

願い事は、海に行きたいなどのささやかなものから、ローマ法王に会いたいという壮大なものまで。 立ち上げから現在までの12年間で、オランダ国内だけで、なんと14000人以上の願いを叶えてきたという。
現在、彼のNPOは世界12カ国に展開。 実はこの日本でも、ウィッシュワゴンファンデーションという名前の団体として、願いを叶える活動を行なっている。

photo photo

こうした功績を讃えられ、ケースさんは4年前、イギリスBBCが選ぶ、世界に最も刺激を与えた人物に送られる、BBCインスピレーション2016を受賞。 しかし彼はこう語る。
「私は誰かのヒーローでもなんでもなく、今もただの救急車の運転手です。だから患者さんの病気は治せません。でもサポートしたり、他の方法で助けてあげることはできます。私たちは自分にできる本当に簡単な、小さなことで人に喜んでもらうことができるんです。」

photo

アンビュランスウェンスが活動を始めて12年、ケースさんたちは今も毎日のように多くの人たちの願いを叶え続けている。 その数、今や、オランダだけで年間2200人にも及ぶと言う。
実際に依頼をした家族たちは皆、深い感謝の気持ちを表しながら、同時にその驚くべきスピードに驚きを隠せないでいた。

photo photo

ケースさんの活動を知って感動し、昨年日本でウィッシュワゴンファンデーションを立ち上げた神谷さんたちも、依頼者のささやかな願いを叶えるため、日々、迅速で細やかな活動を心がけているという。

photo photo

神谷さんは、こう語る。
「ケースさんの思いのバトンを引き継いで、より多くの人を笑顔にしたいなというのが、私たちウィッシュワゴンファンデーションの目標というか、願いです。」
そう、ケースさんの思いは、今や日本をはじめ、世界中に広がり続けている。