11月28日 オンエア
家族の絆を壊す!? 出生ミステリー
 
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アメリカ・ワシントン州に暮らすアリスさん。 彼女は気軽に試したあることがきっかけで、自分の存在が根底から覆されるような感覚に陥ったという。
大学で生物学を学ぶなど、昔から科学に興味があったアリスは、ある物をネットで購入した。 それは、DNA検査キット。

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近年アメリカでは、DNA検査により将来かかりやすい病気や、自分のルーツを調べることがブームになっている。 検査キットは、ネットで手軽に注文・購入できる。
やり方は、届いた容器に膵液など細胞が検出できるものを入れ、返送するだけ。 遺伝子の分析結果は、ネットで見ることができ、娯楽のような感覚で多くの人が利用している。

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アメリカは、人種と民族が入り混じる移民大国。 検査によって、自分と血縁関係にあるかもしれない人まで調べられるため、特に人気が高い。
アリスは7人兄弟の長女。 両親の先祖がアイルランドからの移民だとは知っていたが、もっと細かい自分のルーツに興味があった。 検査キットを返送してからおよそ1ヶ月、結果がメールで届いたのだが、その結果は予想だにしないものだった。

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検査では遺伝情報から、自分のルーツとなる国や地域、民族が何%ずつの割合であるかが明らかになる。 アイルランドにルーツを持つ両親から生まれたアリスは、アイルランド系という遺伝情報が少なくとも75%以上あると思っていた。 だが、アリスの元に届いた結果は、ルーツの半分はユダヤ系。 アイルランド系は、わずか34%だった。
これにより2つの可能性が考えられた。 1つは、自分は養子なのではないか?ということ。 もう1つは、両親のどちらかが、アイルランド系ではなくユダヤ系なのではないかということ。 しかし、彼女の両親はすでに亡くなっているため、確認することはできなかった。

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自分は養子なのではないかと疑ったアリスは、まず妹のジェラルディンにDNA検査を受けてもらった。 すると、アリスと同じように半分がユダヤ系、2人は本当の姉妹であるとわかった。
2人とも養子であるとは考えにくい。 そうなると、両親のどちらかが、実はユダヤ系であるということになる。

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生まれて数ヶ月で母を亡くした父・ジム。 貧しかったジムの父は、1人で子供たちを育てていけなかった。 ジムは1歳の時、兄弟と児童養護施設に引き取られた。 なぜか兄弟とは性格が合わず、1人でいることが多かったという。 そして、彼の父は、ほとんど施設を訪れることなく、ジムが12歳の時に亡くなってしまった。

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アリスは、両親を早くに亡くし、施設に入っていた父に何か秘密があるのでないかと考えた。 そこで、DNA検査結果を見直すことに。
アリスたちが行ったDNA検査では、自分のルーツの他に同じテストを受けた人々の中で、自分と同じ血縁関係にあるかもしれない人物が一覧で表示される。 偶然にも、この件を知らない弟が検査を受けていたことが分かった。 彼は、かかりやすい病気を知るために検査を受けており、先祖の情報は見ていなかった。 早速連絡を入れ、ユダヤ系のDNAが含まれ、アリスたちと本当の「姉弟」であることが分かった。

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後日、他の兄弟たちも検査を受けると、全員、血縁関係にあると判明した。 だが、アリスが注目したのは、細胞内にある「X染色体」が示した遺伝情報。 X染色体とは、人間の性を決定づけるものであり、女性は父親と母親から、男性は母親からのみ受け継ぐことになっている。 今回、アリスのX染色体にはユダヤ系を示す青色が表示されたが、兄や弟にはなかった。 つまり、アリスにはあって兄や弟にはない、父親のX染色体がユダヤ系の遺伝情報を持つと考えられた。

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そこで、アリスは父方の家系を調べるため、父の姉、その息子・ピートに検査を受けてもらうことにした。 彼は生存している数少ない父の親族の1人だった。 およそ1ヶ月後、ピートの了承を得て、アリスの元に来るようになっていた検査結果が届いた。

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アリスの父がユダヤ系ということは、親族であるピートにもそのDNAが入っているはず。 しかし、ピートにはユダヤ系のDNAは入っておらず、アイルランド系のDNAが大半を占めていた。 つまり、アリスとは血縁関係にないと考えられたのだ。 そして、アリスは、父とその姉も血縁関係にないと推測した。
ということは、アイルランドの家系の中で、父・ジムだけがユダヤ系なのではないだろうか? だとしたら、父は一体何者なのか? アリスは、施設を出た後の彼の人生について思いを巡らせた。

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ジムは15歳で施設を出た後、陸軍に入隊。 そして33歳の時、アリスたちの母親と出会い、結婚。 7人の子供に恵まれた。
その後、陸軍をやめ、刑務所の看守として、懸命に働いた。 時には、1日16時間以上働くこともあったという。 それでも、ジムは家族を最優先に考え、子供たちの誕生日などは、出来る限り一緒に過ごし、寂しい思いはさせなかった。 家族は決して裕福ではなかったが、父のおかげで幸せな生活を送ることができた。

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その後、アリスは父の出生について調べ始めた。 まず、ニューヨークの児童養護施設をしらみつぶしに当たった。 そして、ついに父がいた施設を突き止めることができた。 だが、そこから有力な情報を得ることは出来なかった。
次に、父の出生証明書を確認すると、生まれた病院が判明した。 だが、その病院は30年以上前に閉鎖されていた。

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そこで、アリスはDNAの検査結果に表示された『自分と親戚かもしれない人たち』、つまり、父の家系と繋がりがあるかもしれない人たちに連絡すれば、何か手がかりが得られるのではないかと考えた。 だが、彼らは、「親戚の可能性がある」というだけで、それが両親どちらの家系の親戚かは分からない。 詳しい情報を得るには、メッセージを送って事情を説明、個別に話を聞く必要があった。 だが、該当者は7000人近くいたため、その人たち全てとやりとりをするというのは、途方もない作業だった。

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アリスとジェラルディンは、何日もその作業を続けた。 話を聞き、力を貸してくれる人もいたが、父の出生に繋がるような情報は一向に得られなかった。 その後、アリスたちは兄弟全員で力を合わせ、父の出生の秘密を探ることになった。 さらに疑問に思ったことを話し合い、他に出生の秘密を解明する方法はないかを探った。

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そして、アリスが最初にDNA検査を受けてから、およそ2年半…作業は続けていたものの、いまだに進展がない状態だった。 そんな時…ピートに新しい親戚かもしれない女性が現れた。
ずっと、いとこだと思っていたが、アリスとは血縁関係になかったピート。 アリスは、何か情報が得られるかもしれないと、ピートの了承を得て、彼と親戚かもしれない人たちを閲覧できるようにしていた。 ピートのページに新たに表示されたその女性にメールを送ると、すぐに連絡があった。

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彼女の名前はジェシカ。 アリスが詳しく話を聞こうとすると、ジェシカは自分の検査結果は間違っているかもしれないと言うのだ。 ジェシカの両親はユダヤ系なのに、ジェシカにはアイルランド系のDNA情報が入っているというのだ。 アリスは、アイルランド系だと思って検査を受けた結果、半分がユダヤ系だった。 ジェシカは、それと全く逆のパターンだったのだ。

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ジェシカの祖父は父・ジムと同世代だった。 そして、ジェシカに亡くなった祖父の出生証明書を送ってもらい、父のものと見比べてみると…2人は同じ日に、同じ病院で生まれていた。 さらに、出生証明書の番号を見比べてみると…何と1番違いだったのだ! そう、2人は生まれてすぐ、取り違えられてしまっていたのだ!

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これは、当時の病院の様子を写した写真である。
この頃、家ではなく病院で出産することは珍しかったため、まだ赤ちゃんを管理する環境が整っていなかった。 そのため、撮り違いが起こってしまったと考えられた。

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幼いころ、育ての親を亡くしたジムは、施設で辛く孤独な少年時代を過ごした。 施設を出て、生きるために必死に働く中で、最愛の人に出会った。 7人の子供たちに恵まれ、ずっと憧れていた家族を持つことができた。
その後も、身を粉にして働いたジム。 自分のためではなく、全ては大切な家族のため。

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晩年は、病気になった妻の看病に徹した。 彼女が亡くなるまで、15年間、献身的に面倒をみた。 妻がなくなってからは、子供たちが孫を連れて訪ねてくるのをとても楽しみにしていた。 孫の結婚式にも出席。 本当に嬉しそうだったという。 そして、今から20年前の1999年9月、大好きな家族に見守られ、85歳でその生涯を閉じた。

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アリスさんは、父・ジムさんについて、こう話してくれた。
「父は生前、自分ではどうにもならない事が起きた時、『これが人生だよ』と笑っていました。私たちは運命に逆らえませんが、父はその中で最善を尽くしたんだと思います。今回 私たち兄弟は、協力して謎を解明しました。父は、私たちなら出来ると信じていてくれたと思います。」