9月12日 オンエア
大金を持ち 消えた銀行員 事件に秘められた衝撃の真実
 
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これは、情報に惑わされ、嘘の情報に踊らされたことで、その人生を大きく狂わされた人たちの実話である。
1970年代後半、7月某日。 この日、とある地方の銀行に勤める、1人の行員の行方が分からなくなっていた。 牧野茂(仮名)。彼は、マイホームに妻と2人の子供と共に暮らしていた。

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5時間前…集金の業務を担当していた牧野は、13時に社用車で取引先から集金を行う、外回りに向かった。 この日もいつも通り、17時に帰社する予定だったのだが…予定時刻を過ぎても帰らず、行員たちは手分けをして、訪問予定各社に確認の連絡を行っていた。 すると…外回り先のひとつである大手企業A社の地方支店の駐車場で、社用車が見つかった。

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行員たちは、牧野が具合が悪くなり、どこかで倒れているのではないかと思い、A社に事情を説明し、急いでビル内を捜索。 しかし、その姿は、どこにもなかった。
足取りが途切れた A社を含め、牧野はこの日、計7社を回っていた。 すべての訪問先に確認したところ、多額の現金と小切手を集金していたことが分かった。 さらに、その集金カバンもなくなっていた。

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この頃、会社員が従業員の給料を持ち逃げするという事件が頻発していた。 もしかしたら、牧野が大金を持ち逃げした可能性もある。 あらゆる事を想定した銀行は、この日は警察には届けず、様子を見る事にした。

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ところが…行方不明になった行員のことは、翌日、警察へと伝わった。 銀行は家族に、一晩、様子を見る旨を伝えてはいた。 だが、銀行が営業を始める前の早朝、妻の恵(仮名)が心配のあまり警察に捜索願を出したのだ。 妻からの依頼を受けた警察は、牧野が何らかの事件に巻き込まれたと考え、直ちに捜査を始めた。

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警察は、牧野は誘拐された可能性もあると言って、家に逆探知装置を設置。 しかし警察の態度は、被害者家族に対するそれとはどこか違っていた。
実は…警察は、この日の昼間、牧野が最後に訪れたA社で聞き込みを行なったのだが…牧野がバスに乗っていたという目撃情報を得ていた。 そのため、警察は『持ち逃げ』の線でも捜査を進めることにした。 となれば、牧野から家族に連絡があるかもしれない、そう考え、逆探知装置を仕掛けたのだ。

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失踪から4日後、事件のことが新聞に載った。 そして その翌日には、警察関係者への取材から、マスコミも失踪ではなく、『持ち逃げ説』を有力とし、大々的に報じはじめた。 すると、それを裏付けるかのように、バスの運転手から『牧野に似た人物が乗っていた』という具体的な証言が上がったのだ。 さらに…その後も『失踪した牧野らしき男』を見たという、多くの目撃情報が各地から寄せられた。 これにより、世間には『牧野は金を持ち逃げした』という説が広く浸透していく。

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すると…犯罪者の家族とみなされた一家には、世間から厳しい仕打ちが待っていた。 また、当時の新聞には、直属の上司のコメントが掲載されたのだが…それは、部下の持ち逃げを匂わせているものだった。 さらに、それからしばらくして…銀行から、銀行のローンで購入した車を売り払うように言われた。 夫が勤めていた銀行からも、見放されたのだ。

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そして…子供たちは、イジメや嫌がらせを受けるようになっていた。 幸せだった家族が、少しずつ…壊れ始めていった。
一方、警察の捜査は、目撃情報はあっても何ら進展せず、その後も捜査は続けられたものの、牧野の行方は分からなかった。

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そして、事件から5年以上が経過した、ある日。 牧野が最後に訪れたA社のビルで、地下にある重油タンクの清掃が行われた。 この重油タンクは、暖房ボイラー用のもの。 直径1メートル、長さ約3メートルの筒状で、ビルの駐車場の地下に埋めてあった。

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清掃の頻度に関しては特に決まりがなく、この日は15年ぶりの清掃だった。 まずは、タンク内の重油を抜き始めた清掃員たち。 すると、信じられないものを発見した!
重油タンクの清掃から、4日後。 村田克也(仮名)という男が逮捕された。

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牧野が失踪した当時、問題の男・村田は、とあるビルの管理人として働き、妻と2人の子供たちの家族4人で暮らしていた。 日中は、職場であるボイラー室で仕事をしていたのだが…村田は大のギャブル好きだった。 仕事の合間も中継を聞き、身の丈以上のお金をギャンブルに注ぎ込む。 足りなければ、消費者金融から金を借りて借金を重ねていった。 いつしかその合計は、400万円を超え、毎月の利息の支払いも15万円に膨れ上がっていた。

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村田は借金返済のために強盗をすることを決意。 そのターゲットに選ばれたのが…牧野さんだった。
実は、村田が管理人として働いていたビルこそ、牧野さんが最後に営業に訪れたA社だった。 A社の管理人室を借家とし家族4人で生活。 その隣のボイラー室が彼の職場だったのだ。

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村田は妻子が出払っている日を狙って、犯行に及んだ。
そう、あの日、発見されたのは…毛穴から重油が染み、油漬けとなったため、腐敗せず、ミイラ化した牧野さんの遺体だった。

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しかし、その後もギャンブルがやめられなかった村田。 今度は会社の金を横領しようとしたが失敗。 そのことが原因で、懲戒解雇され、妻からも見放され離婚。 パチンコ店に住み込みで働いていたところを、A社の関係者を洗い直していた警察により逮捕されたのである。 当面のカネ欲しさに身勝手極まりにない殺人を犯した村田には、無期懲役の判決が下された。

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牧野さんが殺害されていた事が判明した後、彼が務めていた銀行は…支払われていなかった退職金と弔慰金を払わせて欲しいと、家族に申し出た。 だが…全てが遅すぎた。
牧野さんが行方不明になり、遺体が見つかるまでの5年間、『犯罪者の家族』という汚名を着せられてきた。

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それでも、妻と息子たちは『持ち逃げ』ではなく、『事件に巻き込まれた』と信じ続けた。 妻の恵さん(仮名)は、身元不明の遺体が発見されたと聞くと、必ず出向き、夫かどうか確認を行っていたという。 どこかで生きていて欲しいと、願ってはいたが、事件に巻き込まれているのであれば、亡くなっている可能性が高い。 そう覚悟を決めていたという。

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長男の翔太さん(仮名)は、父がいなくなった後、家計を助けるために中華料理店でアルバイトを始めた。 同級生やバイト先の店主は、事件の事には触れず、支えてくれたのだが…客から事件のことで心ないことを言われることもあった。 周りから何を言われても耐え続け、父のためにも、真っ当に生きるんだと心に誓った。 そして…翔太さんは、父がいなくなって以来、落ち込んでいた母に、少しでも元気になってもらえるように努めた。

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しかし…次男の正樹さん(仮名)は、徐々に非行に走るようになり、警察の厄介になることが増えていた。 父がいなくなってから、家族の絆は崩壊していった。

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何年経っても『犯罪者の家族』として見られることに、耐えられなくなった恵さんは、人目が気にならない夜にしか、買い物などに出られなくなっていった。
そして、『犯罪者の妻』という汚名を着せられ、精神的に追い込まれた恵さんは、自ら命を絶った。 それは夫の遺体が見つかる、1年前のことだった。

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恵さんは、翔太さんに遺書を残していた。 そこには、今まで支えてくれた事など、翔太さんへの感謝の気持ちでが溢れていた。 そして最後には、語りかけるように『お兄ちゃん』という言葉が何度も綴られていた。

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もし、嘘の情報に踊らされなければ…
もし、流布する情報に惑わされなければ…
もし、そんな一方的な情報が拡散しなければ…
犯人はもっと早くに逮捕され、さらなる悲劇が生まれることはなかっただろう。

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この事件を取り上げるにあたり、今回、我々は、被害者である一家のご長男を取材した。 そして、事件後のお話を伺う中で、衝撃の事実を聞く。
それは…弟の自殺。 彼は犯罪者の家族と周囲に非難されたことが原因で、非行に走った。 さらに母親の自殺に大きなショックを受け、その後、精神を病み、最後は自ら命を絶ったという。

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ご長男が取材の中で、一番強く語っていたことがある。 それは、警察、報道、銀行が最初からしっかりと『事件性』を疑ってくれていたら、母も弟も死ぬことはなかった。 今でもそれが、許せないという。
ご長男は今も、家族と住んでいた家に1人で暮らしている。 結婚をして家庭を築くことはあえてしなかった。 なぜなら…何かの拍子に、家族が壊れてしまうことが怖いからだという。 同じ体験は、もう2度としたくない…と。