9月20日 オンエア
ソルトレイクシティ図書館人質事件
 
 
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 アメリカ・ユタ州の州都「ソルトレイクシティ」の中心部にあるソルトレイクシティ公立図書館。 5年前のリニューアルオープン以降、アメリカが誇る最高の建築物として世界中から観光客を集める人気スポットとなっている。 だが、実は24年前、この場所が来館者たちを恐怖のどん底に陥れる惨劇の舞台となったことはあまり知られていない。
 
 
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 1994年3月5日土曜日、午前9時。 この図書館に勤務するグウェン・ページがいつものように返却本の整理をしていた時のことだった。 同僚からチベットのイベントを見に行こうと誘われた。 土曜日だったこの日は、チベット人の僧侶が砂絵を描くイベントが開催されており、来館者の数もいつもより多かった。
 しかし、せっかく見に来たイベントは間に合わず、仕方なく仕事に戻ろうとした…その時だった! 銃を持った男が突然テーブルの上に立ち叫び出したのだ。 そして…男はその場にいた人の中から10数名を前に出し並ばせると、グウェンを指名し、彼らを会議室に移動させるように要求してきた。
 男は、人質が全員会議室に入った後、他の人間は解放した。 そして、自分の要求を書いた封書をディザレットニュース社宛に投函するように要求。 これが、のちに全米を雲撼させる恐怖に満ちた一日の始まりだった!
 
 
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 会議室に入るなり、男は矢継ぎ早に指示を出してきた。 集められた人質は合計で15人。 実はこの時、グウェンは勇敢にも男の注意を自分だけに向けるように時間を稼いでいた。 なぜなら…犯人の隙を見て、数名が逃げようとしていたからだ。 グウェンの機転で6人が脱出に成功。 15人だった人質は9人に減った。
 だが、先ほど封書を託された男性が2人、投函先を犯人に確認しに来たのだ! そして、2人の内、1人は会議室に入れられ…人質が再び1人増え10人となった状態で、いよいよ本格的な立てこもりが始まった。
 
 
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 10人の人質は犯人の指示に従い、テーブルに背を向けた状態で座らされた。 だが皆が恐怖と絶望で顔色(がんしょく)を失う中、グウェンは一人別のことを考えていた。 犯人は銃こそ持っているものの、こちらの10人に対して一人だけ。 また当初からずっと落ち着きがない。 どこかで先ほど数人が逃げたような隙が生まれる可能性はある。 そう思っていた。
 
 
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 ところが…犯人が何かを取り出した。 それは金属製の缶にパチンコ玉のようなものが敷き詰められた謎の物体だったのだが…なんと、手作りの爆弾だった!
 犯人が持ち込んだ爆弾…この爆弾には、火薬の詰まった缶の外側に100個以上の鉛玉が糊付けされており、中の缶が爆発すれば表面の鉛玉が全方位に向け弾け飛ぶように作られていた。 そうなればこの狭い部屋の中で、助かる可能性はゼロと言ってよかった。
 さらに、男の手にはヘアアイロンが握られ、その二股に分かれたアイロン部分に、それぞれ金属製のワイヤーが繋がれていた。 へアアイロンは持ち手を握ってさえいれば、二本のアイロン部分は離れた状態を保つ。 だが持ち手を離し、アイロンが閉じて二本のワイヤーが接触すると、通電して起爆する仕組みになっていた。 つまり…犯人がこの持ち手を放したら、爆弾は爆発するのだ。 そう、男は最初から、自爆を覚悟で犯行に臨んでいたのだ!
 
 
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 グウェンら人質の10人がそんな絶望の淵に立たされているころ…ようやく、ソルトレイク警察署の刑事や特殊部隊スワットが現場に到着した。 警察は、犯人が新聞社宛に投函させようとしていた封書を入手。 封書の中にあった直筆の文章から、犯人の名はクリフォード・ドレーパー。 空軍に所属していた元兵士であり、銃刀法違反や暴行罪の前科があることも判明した。
 そして、最も重要な犯行の動機は…『俺は、アメリカの資本主義に染まった軍の犠牲者だ。また薔薇十字団に翻弄された犠牲者でもある。だからまず自分が空軍にいた頃に本来、支払われねばならなかった金を要求する。社会の富が分配されず、俺の人生はぶち壊された。最後に、これは軍事行動だ』
 
 
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 そして…ドレーパーがラジオ局に電話をかけてきたという。 ドレーパーは、州知事と話をさせろと要求してきた。 さらに、要求が通らなければ、10名の人質を1人ずつ殺すという。 警察は、ラジオ局に電話をし、ドレーパーと交渉しようと試みたが失敗に終わった。
 改めて事件の緊迫性を察知し慌ただしく動き出した警察だったが、その一方、立てこもり現場ではこう着状態が続いていた。 出入り口はロープと机で固定され、人質たちはトイレにも行かせてもらえない。
 
 
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 またずっとデットマンスイッチを握り続けているドレーパーも緊張と疲労からか、しきりに銃を持つ手とヘアアイロンを持つ手を入れ替えていた。 万が一持ち替える際に落としでもすればその瞬間爆弾は爆発する。 落ち着きのないドレーパーの姿に皆生きた心地がしなかった。
 だが、そんな時だった。 なんと何度も持ち替えたせいなのか、へアアイロンにテープで止められていた金属ワイヤーが外れて浮いていたのだ! ついにやってきた千載一遇のチャンス、ドレーパーの隙をついてみんなで飛び掛かれば、銃も奪えるかもしれない。 グウェンは周りの人たちにも気づいてもらえるように、必死で祈った。 だが…結局他の人々が気づくよりも早く、ドレーパー自身に気づかれ、再びワイヤーはテープで補修されてしまった。
 
 
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 その後も突破口は見えないまま、拘束されてから4時間が経過。 人質たちの不安と疲労も限界に達しようとしていた。
 そんな時、警察から電話がかかってきた。 ドレーパーは、準備ができるまで連絡してくるなと、電話を切ってしまった。 電話の会話を聞いていた誰もが、最悪の事態を予期していた。
 
 
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 そして、ドレーパーが人質を1人ずつ殺すと言いだした。 さらに、犠牲者を決めるためのクジを作ることになった。 ドレーパーは、グウェンに床に落ちているロープを人質の人数分切るように指示。 もはや彼女にできることは、せめて口ープまでの数メートルを可能な限りゆっくり歩くことだけだった。
 そして…最悪の瞬間が訪れた…はずだったのだが、なんと胸から血を流して倒れていたのは、立てこもり犯のドレーパー本人だった。 しかも、ドレーパーの手から離れたはずのデッドマンスイッチも作動せず、爆弾は爆発していない。 一体何がどうなっているのか??
 
 
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 時間を少しだけ巻き戻して見ると… ロープを切るためのナイフを鞄から出すために、ドレーパーが銃をテーブルに置いた、その瞬間だった!
「全員伏せろ!」との声が!
 そう、実は銃を撃ったのはドレーパーではなく、何故か封筒を持って戻ってきたため運悪く人質に追加されたあの中年男性ではないか。 それにしても、一体彼は何者なのか?
 
 
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 今回我々はあの日ドレーパーを撃った張本人、ロイド・プレスコットさんに話を聞くことができた。
ロイド「事件当時、私はソルトレイク郡保安官事務所の、警部補でした」
 そう、ロイドさんの正体は、保安官。 そもそも彼は偶然人質になったのではなく、事件を解決するため、わざとあの場所へ潜入しに来ていたというのだ!
 実は、当時 彼が勤務していた保安官事務所は、図書館から広場を挟んですぐ向かいにあった。 そして、この日の朝、ロイドが出勤してきたちょうどその時、銃を持った男が図書館で立てこもっているという報告を受け、直ちに現場へ向かうと、封筒を新聞社に投函するように要求されたことを知った。 そこで、封筒を口実に何食わぬ顔で潜入に踏み切ったのである。
 
 
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 だが相手の武器が拳銃だけなら どうにでもなると思っていたロイドだが、爆弾が出てきた時点で状況は突然困難なものになった。 保安官として爆弾処理の知識もあったロイドの読みは…爆弾は、部屋を吹き飛ばすほどの威力はないが、弾け飛んだ鉛玉が人に当たれば、死に至る可能性も十分あると言うものだった。
 しかし同時に、テーブルを貫通するほどの威力はないとも読んだ。 テーブルの上で爆発させれば、水平から上方向にしか鉛玉は飛んでいかない。 よって、爆発の瞬間、全員をテーブルの下に伏せされることができれば、その被害を防げるとも思っていた。 だが、起爆スイッチはドレーパーが握っており、なんの準備もしていない人質全員が「伏せろ」の一言に一瞬で反応できるかどうかもわからず、結局犯人が大きな隙を作る瞬間を待つ他なかったのだ。
 
 
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 だが、業を煮やしたドレーパーがついに人質に手をかけようとしたため、覚悟を決めて、腰に隠していた銃を握りしめた。 すると、なんと土壇場でドレーパーが銃を手から離したため、「全員伏せろ!」と叫んだ。 奇跡的に全員が伏せたことを確認してから、撃つことができたのだ。
 しかし、ここで大きな疑問が残る。 たとえ人質全員を爆弾とテーブルの死角に伏せさせることができたとしても、実際に狙いを定めて銃を撃つロイドが一緒に伏せるわけにはいかない。 撃った銃弾がドレーパーに当たれば、その瞬間デッドマンスイッチは作動し、彼自身も爆発に巻き込まれてしまうのではないか?
 ロイドさんはこう話してくれた。
「確かに爆発すれば衝撃をもろに正面から受けていたでしょうね。しかし、その覚悟はもうしていました。あの当時既に20年ほどのキャリアがあったので人々の命を救うために、自分の命を犠牲にするという心の準備はできていたんです。」
 
 
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 自らの命を顧みず、覚悟を持って引き金を引いたロイド保安官。 だが、ここで彼自身予想していなかった意外なことが起こった。 なんと手を離れたはずのデッドマンスイッチが作動せず、爆弾が爆発しなかったのである。
 実は、ワイヤーが外れ、ドレーパーが補強した際、テープを厳重に巻きすぎ、その厚みでへアアイロンが閉じても導線が接触していなかったのだ! とはいえ何かの拍子でいつ爆発してもおかしくはなかったのだが、銃声ののち即座に突入してきたスワットが手早く処理、爆発するより先に人質9人、全員の救出に成功した。
 
 
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 そして実は、この迅速な突入も闇雲な賭けではなかった。 カーク巡査部長がラジオ局で人質の名簿を見た時、ロイド保安官の名前があることに気がついていた。
 カークさんはこう話してくれた。
「彼は優秀な保安官で、前からよく知ってましたからね。必要とあれば、きっと適切な行動を取ってくれると確信していました。」
 
 
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 こうして様々な偶然と、それを呼び起こした勇気により、人質全員生還という奇跡の救出劇は成し遂げられた。 潜入に成功し、一躍全米のヒーローとなった、保安官のロイド・プレスコットさんは、この年の暮れ、年間最優秀警察官として表彰された。 クリスマスには当時の大統領ビル・クリントン、ヒラリー・クリントン夫妻からクリスマスカードも届いたという。
 しかしロイドさんはこう話してくれた。
「私は自分の仕事をしただけですよ。どんな時でも人々を守ると誓ったんです。警察がすべきことをしたまでです。だから 何か特別なことをしたという気持ちはありません。教えられてきた通りの行動を取っただけなのです。」