8月23日 オンエア
壁から聞こえてくる声の謎
 
 
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 大阪市住吉区に店を構える居酒屋「ひいろ亭」。 店主の西竹雅明さんは、恐るべき体験をしたという。
西竹「今から2年前ですね。普段通り、店の仕込み中にあの声が聞こえて来たんです。」
 夜遅く、どこからともなく「その声」は、聞こえてきた。 気のせいか?とも思ったのだが…その声は翌日も、そのまた翌日も続いたという。
 
 
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 ひいろ亭のある建物は、いわゆる昔の文化住宅。 長屋のすべてが店舗として使用されていた。 築50年近くの古い建物で壁も薄かった為、隣の店から聞こえてくるのかと思っていたのだが… 「その声」は、毎晩やむことなく、10日もの間、断続的に聞こえた。
 西竹さんは、知る由もなかった。 その声が、とんでもない事態を引き起こし…驚くべき密室ミステリーの密室ミステリーの幕開けとなることを!
 
 
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 その日、岡山雄一郎(仮名)さんは、なじみの居酒屋「ひいろ亭」で、会社帰りの一杯を楽しんでいた。 店主の西竹さんは、岡山さんに10日ほど前から聞こえてくる声について相談してみた。
 岡山さんが、壁に近寄り耳を澄ませた…その時だった。 そう、確かに聞こえたのだ!猫の声が! 猫の声は、何かを訴えるように何度も聞こえてきた。
 
 
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 実は岡山さんは、耐震リフォーム会社の社員、いわば建築のプロだった。 西竹さんは当初調理場の壁の中から声が聞こえていると思っていた。 しかし、専門家である岡山さんは、店の外から声が聞こえてきているのではと推測したのだ。
 岡山さんに確認してもらうと、声は隣の店との境の壁の外、出っ張ったあたりから聞こえてくるとわかった。 だが、ひとつ大きな問題があった。 長屋の建物が古いため、専門家の岡山さんにも、壁がどういう構造になっていて、どこに猫がいるか全く分からなかったのだ。 逆にどこから侵入したか分かれば、正確な居場所も推測できそうだったが、猫が入り込めそうな穴はなく…店の中をくまなく調べてみても、隙間は見つからなかった。
 
 
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 店舗正面の地面の下に、止水栓があった。 そこから壁までは20センチほど。 ここから手を入れれば、壁の中にいると思われる猫を救出できるのでは? そう思ったのだが…止水栓がほとんど見えないほど土に埋まった状態だった。 岡山さんは、猫を助けようと土を掘り始めた。
 実は、岡山さんは大の猫好き。 壁の中に猫がいるかもしれないとあっては、放っておけなかった。 中はとても狭く、腕が傷だらけになってしまった。 狭い中を、男の手で掘っていくのは限界だった。
 
 
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 猫の救出を試みてから、すでに2時間が経過…時刻は深夜0時を回っていた。 諦めかけたその時、パトロール中の警察官が通りかかった。 事情を説明すると…夜中に騒いで怒られると思いきや…なんとその場で消防にレスキューの出動要請をしてくれた。
 すると…わずか10分後にはレスキュー隊が到着。 レスキュー隊はドリルを使い壁に小さな穴を開け、カメラで覗いたのだが…数箇所穴を開けても、何も見えなかった。 これ以上は建物を壊してみないと分からないという。
 ひいろ亭は西竹さんが大家さんから借りている賃借物件。 家主の許可がないと後々トラブルになる可能性があり、手をつけられないとのこと。
 しかも西竹さんは、それまで家主とは不動産会社を通して連絡を取っていたため、直通の番号は知らず、その場で確認するすべはなかった。 さらに、たとえ壁を壊す許可を貰えても、構造が分からない状況で下手に壊せば崩壊し、肝心の子猫の命が危険にされされる可能性があった。
 
 
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 猫の声を聞いてから、およそ10日が経過していた。 専門家によると、猫が10日も飲まず食わずでいれば、いつ限界が来てもおかしくないという。 さらに季節は真夏。 昼間の気温は優に30度を超える。 命のタイムリミットは、確実に迫っていた。
 
 
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 翌日…岡山さんは、さすがに大事な商談をすっぽかすわけにはいかず、他に頼める人を探していた。 しかし…木造建築に詳しいプロでないと猫を救い出すのは困難。 さらに、好天が続く夏は、業界の繁忙期…頼めそうな業者はいなかった。
 怒られるのを覚悟で社長の仲田さんに相談してみたところ…シロアリやネズミなど害虫駆除の会社を経営する渡辺さんなら子猫を助けられるという。 渡辺さんは、本業とは別に壁の補修などもできる器用な人物で、古い木造建築の構造にも詳しかった。 社長の仲田さんが、渡辺さんに連絡をしてくれ、子猫の救出を頼み込んだ。
 
 
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 一方、西竹さんは、ほとんど眠る暇もないまま、不動産会社が開くと同時に電話したのだが…不動産屋も昨日から連絡が取れないという。 大家さんは海外旅行が好きなので、もしかしたら海外に行っているかもしれいないと言うのだ! もし大家さんが海外に行っていたら…帰ってくるのは何日後になるか分からなかった。 それまで子猫の命がもつとは思えない。
 救うためには、無許可で壁を壊すしかなくなる…ひいろ亭は2年前、西竹さんが脱サラして始めた念願の店だった。 無許可で壁を壊せばようやく持てた自分の店を追い出される事態も考えられた。 しかも、もともと西竹さんは、大の犬派だった。
 
 
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 ようやく大家さんと連絡が取れ、壁を壊す許可がもらえた。 そのことは、社長の仲田さんと頼みの綱の渡辺さんにも伝えられた。 だが…たかが 猫1匹の為に、他の仕事をキャンセルなどしたら…信用を失い、二度と仕事がもらえなくなるかもしれない。 そんな状況で渡辺さんが駆けつけてくれるか、確証はなかった。
 11時半をすぎ12時が過ぎた…太陽が照りつけ気温はぐんぐん上がり、30度を超す。 少しでも温度を下げようと、定期的にホースで水をかけた。
 そして、午後1時半を回ったころだった…渡辺さんが駆けつけてくれた! 実は…その日は、高校生の息子さんに手伝いを頼まなければいけないほど、忙しい状況にも関わらず…朝、仲田社長の電話を受け、午後の仕事を全てキャンセル。 大家さんのオーケーが出たと聞くと、すぐに駆けつけてくれたのだ。
 
 
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 だが、本番はここからだった。 大家さんに確認したところ、古い建物の為、設計図は残っておらず、どんな構造になっているか分からなかった。 子猫を傷つけずに救出するには、どの位置に閉じ込められているのか、正確に把握する必要があった。
 侵入経路さえ分かれば、子猫がどこにいるか見当がつく…現場をつぶさに観察。 すると、シャッターの再下部に…ホコリのようなものがついていることに気がついた。 よく見ると…そこに猫の足跡がついていたのだ。
 出入り口どころか隙間さえない狭い壁の中に、いったい、どうやって子猫が入り込んだのか? 渡辺さんが見抜いた、驚くべき真相がこの後、明らかになる!
 
 
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 ロールシャッターは構造上、巻き取ると天井に収納される。 その最下部、店舗の外側に足跡がついていた。 ということは、巻き取られたシャッターの上…天井裏に猫が歩ける空間があるのでは? という推測が成り立つ。
 
 
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 さらに、ひいろ亭が入ってる長屋は、すべての店舗にシャッターがついているため、その中が長い通路になっており、野良猫が自由に行き来できる状態だと考えられた。 だが…当然、シャッターとシャッターの間には、店と店を仕切る壁があるので、通れるはずがない。
 ところが…壁の表面を剥がし構造を確かめてみると…木材の柱に板を貼り付けた上で、セメントで固めて仕切り壁にしているという事が判明。 壁の中に小さな空洞があると分かったのだ。
 
 
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 このことから、上部は塞がれていない、筒のような状態になっていると考えられた。 つまり、親猫が子猫をくわえ、シャッターの上を通った際、子猫だけがあやまって落下。 運悪く壁の空洞に落ちてしまったのではないか?
 灼熱の中、猫に危険が及ばないよう慎重に、セメントを削る地道な作業が始まった。 果たして、救出は間に合うのか?
 
 
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 その頃、岡山さんは商談を終え、急いでひいろ亭に向かっていた。 自分も猫のために何かできるかもしれない…いてもたってもいられなかった。
 岡山さんのもとに電話がかかってきた。 電話からは子猫の鳴き声が聞こえてきた。 ついに、子猫は救出されたのだ!
 これが、実際に子猫を救出した時の写真である。 少しづつセメントを削り、木の板を露出させると、小さなノコギリで板を切断。 慎重に作業を進めた結果…ついに子猫が姿を表した。
 
 
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 しかし、なぜそもそも猫は、シャッターロールの上にいたのだろうか? 後日、シャッターを外してみると…その上だけでなく、店舗の屋根裏にも猫が入れる広い空間があることがわかった。 さらに侵入経路を探るべく長屋を詳しく調べてみると…隣の店舗の裏に猫が入れるような穴があいていた。
 ここから、建物内に侵入した猫は、ひいろ亭の屋根裏に移動し、壁の中に子猫を落としてしまったのだと考えられた。 2度と同じようなことが起こらないよう、侵入したと思われる穴を塞ぐと…ひいろ亭の壁の中に猫が閉じ込められることはなくなった。
 壁の中から救出された猫を動物病院に連れて行ったところ、生後わずか10日くらいのメスだということが判明。 そして、衰弱してはいたが何の障害も残らないとのことだった。
 
 
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 奇跡の救出劇から2年、壁から出てきた子猫は…救出された後、西竹さんによって飼われることになった。 名前は臨ちゃん。
 もともと犬派だった西竹さん、なぜ猫を飼うことにしたのだろうか?
西竹さん「もうこの子の生きたいって声を聞いてるんでどうにかして家に呼ぼうって決意をしましたけどね」  元々、犬派だった西竹さん。 スタッフが、こんな質問をしてみたところ…「西竹さんは今、犬派ですか猫派ですか?」
西竹さん「今は、本音言うと臨ちゃん派と言うか、他の猫を見ても、それほど…、うちの方がやっぱり可愛いなって思っちゃったりするくらいなんで。」