3月15日 オンエア
イギリス騒然!前代未聞のデマ 実在しないレストラン
 
 
photo  アメリカ大統領選挙で注目を集め、世界中で大きな議論を呼んでいる虚偽の報道、「フェイクニュース」。 日本でもネット上に溢れるウソの情報がSNSなどを通じて拡散され、混乱を招いている。
 昨年6月、東名高速内であおり運転の末、追い越し車線に車を無理矢理停止させ、追突事故を誘発した事件。 その後、事件とは全く無関係の人物を加害者の父親とする情報がネット上に書き込まれ、その人物が経営する会社に嫌がらせや中傷の電話が相次いだことは記憶に新しい。
 
 
photo  昨年12月 イギリスでも、自らが発信したある情報を「フェイク」だと告白し、世間を騒がせた男がいた。 彼が発信した「前代未聞のフェイク」は、イギリスのマスコミを騒然とさせ、連日のように報道された。
 今回 我々は、その人物を直撃取材!騒動の詳細を徹底的に追及した。 さらに、出来事の一部始終を記録した映像から衝撃の事実が明らかになる。 イギリス国民を驚かせた前代未聞のフェイク!そのアンビリバボーな結末とは?
 
 
photo  イギリス・ロンドン南東部にある高級住宅街、ダリッチ。 我々はこの閑静な住宅街に住む男の元を訪ねた。 ウーバー・バトラーさん、26歳。 現在はフリーのライターとして活躍中。 見た目はいたって普通の若者だが、彼こそが前代未聞のフェイクニュースを発信した張本人である。
 
 
photo  今から2年前、まだ駆け出しのライターだったバトラーさんは、小遣い稼ぎのために あるバイトを始めた。 それは、ライターのための求人サイトで見つけた、レストランに「ウソの口コミ」を投稿するバイトだった。
 本来、レストランの口コミサイトとは、実際に店に行った客が感想を投稿するもの。 しかし、その仕事は店に行きもせず、適当に良い口コミを投稿するというものだった。 これにより店の評価が上がるため、口コミ1件につき、およそ1500円の報酬がもらえた。
 
 
photo  数日後、バトラーさんがウソの口コミを書いたレストランのランキングが上がっていた。 さらに、その口コミが役に立ったと評価されていたのだ。 そのことで、インターネットに蔓延するウソの情報に世間が翻弄されていることに興味を持ったという。 そして、世界最大の口コミサイトに実際には存在しない架空のレストランを立ち上げるという、とんでもないイタズラを思いついく!
 
 
photo  その口コミサイトには、レストランやホテルなどの情報が利用者の口コミとともにランキングで紹介されている。 では、そのランキングはどうやって決まっているのか?
 ランキングの出し方は、企業秘密で公表されていない。 ただし、鍵となるのは やはり口コミ。 口コミの数と評価、そして投稿された時期、この3つの要素を元に計算され、ランキングが決まると言われている。
 
 
photo  昨年5月、バトラーさんは準備に取り掛かった。 口コミサイトの登録には、レストランの詳細情報が必要だった。 そこで、店の名前は自宅がある街、ダリッチにちなんで『ダリッチの小屋』に。 連絡先は、住所や身元が特定されないように、新しいプリペイド式の携帯電話を購入し、その番号とした。 詳細な住所を載せると、地図上にレストランがないことがバレてしまうため、自宅前の通りの名前だけを公開。
 続いては、サイトに載せるレストランの外観写真を用意。 しかし、古びた自宅ではレストランとしては見栄えが悪い。 そこで、ネット上で見つけた写真をレストランの外観として無断使用。
 
 
photo  さらに、プロのカメラマンをしている友人のクリスさんに頼み、料理の写真を撮影。 パセリを添えたハムエッグ…だがこの写真にはある秘密が… 実は、ハムに見えていたのは、足。 かかとに目玉焼きをのせて撮影していたのだ。
 バトラーさんは、この写真についてこう言っている。
「僕が作るのは架空のレストランだから、料理の写真は見た目には美味しそうだけど、絶対に食べられないものにしたかったんだ。」
 
 
photo  では、このホタテのソテーはどうやって撮影したのか? バトラーさんが取り出したのは、トイレの漂白剤。 漂白剤の側面に食紅をつける。 そこにハチミツをかけると、ホタテのような質感になった。 生クリームはシェービングクリームで代用。 コショウをかけ…ホタテのソテーのように見せていた。
 
 
photo  こうして、全ての準備が整い、世界的口コミサイトに掲載申請をした。 その数日後、口コミサイトからレストランの掲載申請が承認されたというメールが届いた。
 5月5日『ダリッチの小屋』は、口コミサイトに登場した。 人気ランキングは、ロンドン市内のレストランで最下位の18,149位。 バトラーさんは、店のランキングを上げるため、家族や友人に口コミを依頼した。
 
 
photo  だが、実際には存在しない架空のレストラン。 そこで、口コミに一貫性を持たせるため、3つのコンセプトを考えた。
 『その1、外で食事ができるレストラン』
バトラーさんは、人々がレストランに求めているものは、味ではなく雰囲気だと考えた。 そこで、家庭的な雰囲気にあふれ、庭で食事が楽しめるオープンテラスのレストランとした。
 
 
photo  『その2、お客さんの気分に合わせたメニュー』
近年ロンドンでは、暗闇の中で食事をする『暗闇レストラン』や、『地下鉄レストラン』など、ユニークなコンセプトのレストランが人気。 そこでバトラーさんが考えたのは「気分によって決めるメニュー」。 メニューの名前を「欲望」「愛」「共感」など、感情を表す言葉にした。
 『その3、完全予約制』
ロンドン人たちは予約の取れない店が大好きだという。 ある種の秘密感が重要だという。
 
 
 以上3つのコンセプトを家族や友人たちに伝え、それに沿うような口コミを投稿するように依頼した。 バトラーさんの兄であるピーターさんも依頼された一人。
photo 「弟から口コミの投稿を頼まれ、2週間後に書き込しました。デザートが美味しかったと書いて、星を5つつけました。」
 友人の口コミの中には、こんなものも…
「1週間電話をかけ続けて、ようやく予約を取ることができました。」
「ウェイターの気づかいは素晴らしく、陽が落ちると暖かいブランケットを用意して、アウトドアディナーの雰囲気を高めてくれました。」
 
 
photo  こうして、友人たちが次々にウソの口コミを投稿すると、立ち上げてからわずか2週間で最下位だった順位は10,000位を超え、さらにその1ヶ月後には、1,456位に! そんなある日のことだった…バトラーさんの元に予約の電話がかかってきたのだ。 そこで、「6週間後まで予約でいっぱいなんです。予約状況を確認してこちらからお電話します。」と言ってごまかした。 その後も、バトラーさんは予約の電話に追われた。
 
 
photo  架空のレストランを口コミサイトに立ち上げてから3ヶ月、ウソの口コミによってランキングは250位にまで上昇。 すると、予想外の出来事が起こった。 ニュージーランドの航空会社が、機内映像で店を紹介したいというのだ。
 このような企業からのオファーも相次いだ。 時には、企業の担当者とインターネットを介してミーティングをすることもあった。 他にも、地方議会から新しく開発するエリアに出店しないかという話もあった。
 
 
photo  さらに、身の回りでも変化が… 自宅の近くで、レストランを探しているカップルに道を聞かれたのだ。 さらに、メーカーからの商品サンプルが大量に隣の家に届いたという。 荷物には住所の記載がなく、通りまでしか書かれていなかったため、誤って隣の家に配達されてしまったのだ。
 バトラーさんは…その時のことをこう話す。
「みんながレストランの場所を見つけ出そうと必死でした。正直怖かったです。」
 
 
photo  その一方で、およそ18,000軒のロンドン市内のレストランの中で、147位に! 怖いと思う一方で、ここまで来たなら1位になりたいという気持ちが芽生えてきたという。
 ところがその1週間後、これまで順調に上がり続けていたランキングの動きが止まってしまった。 そんな中、1本の電話がかかってきた。 それは、ホームページを作る際に無断で使用した建物のオーナーからのクレームだった。 その時は、ウソでその場をしのいだが…だんだん収拾がつかなくなってきた。
 
 
photo  フェイクである事がバレるのは時間の問題…そこで、友人たちにさらにウソの口コミを依頼。 早急に順位を上げるには、さらなる口コミが必要だった。 バトラーさんは、1日のほとんどの時間を友人たちに口コミの依頼をすることに費やした。
 そんなある日、口コミサイトから1通のメールが届いた。 フェイクだとバレたのかと思ったのだが…そこに書かれていたのは、前日に人々が口コミサイトで『ダリッチの小屋』を閲覧した件数だった。 その数、なんと89,000件。
 
 
photo  そして2週間後、架空のレストランがロンドン1位にランクインしたのだ! 口コミの数は96件。 他のレストランと比べ、多いとは言えなかったが、友人や家族96人が書き込んだ口コミの投稿時期などから、総合的に判断された順位だった。
 1位になったことによって、バトラーさんの元には以前にも増して予約が殺到。 断りの対応に追われるようになった。
 
 
photo  鳴り止まない電話…この状況を打破するためにバトラーさんに残された道は、ひっそりサイトを閉じるか、もしくはウソだと世間に告白するか。 だが、ゴールを見失ったバトラーさんは、ここでとんでもない決断をする!
 「せっかくここまで来たので、ネット上の口コミサイトで出来上がった架空のレストランを現実の世界に持ってきたらどうなるか?人々がどんなジャッジをするのか見てみようと思いました。僕には金もないし、レストランを経営する知恵もない…そこでレストランを1日だけオープンすることにしました。」
そう、口コミサイトでロンドン1位になった『ダリッチの小屋』を現実の世界で開店させることを決断したのだ!
 
 
photo  早速、以前予約の電話をしてきた3組の客に連絡を入れた。 しかし、オープンまでに残された時間は、あと5日。 6ヶ月に及ぶウソの口コミによって出来上がったロンドン1位のレストランを、バトラーさんはどうやって現実のものにするのか? そして、実際に訪れた客はどんな反応を見せるのか?
 
 
 迎えたオープン当日。 開店まで5時間、雑草が生い茂った手つかずの庭をお客が満足できる雰囲気に変えていかなくてはならない。 バトラーさんは、隣の家から屋外ヒーターを借り、屋上にもテーブルを設置した。
photo  続いては、料理の準備。 レストランで働く友人のジョゼフさんと向かったのは近所にあるスーパーマケット。 そこで購入した食材は、16人前で合計 約4,500円。 メインディシュは、たった1ポンド、およそ150円のラザニアとマカロニチーズ。
 この料理を選んだ理由は… 「ここに来るお客さんは自称グルメな人たちだから、あえて冷凍食品を出そうと思ったんです。ロンドン1位のレストランという先入観で どれだけ信じてしまうのか楽しみでした。」
 
 
photo  1ポンドの冷凍マカロニチーズとラザニアには、色とりどりの食用花、そしてトリュフをたっぷりと。 粉末のミネストローネには、庭で採れたばかりの新鮮なパセリを添えて。 さらに、デザートは3種類のチョコレートと市販の生クリームを重ねた、オリジナルチョコレートサンデー。
 さらに、助っ人として DJにも声をかけた。 DJには、電子レンジの「チン」に近い音を多用した音楽をかけてもらい、ラザニアをレンジでチンしたのを誤魔化す作戦だった。
 
 
photo  開店30分前、気温は8度。 オープンテラスには、客を演じて欲しいと集められサクラがスタンバイ。
 そしてついに、架空のレストランに客がやって来る。 客とは店から50メートルほど離れた場所で待ち合わせ。 すると、バトラーさんは、客に目隠しをさせた。 自分の家を知られたくないという理由と、目隠しをすることで客が興奮するだろうという演出だった。
 
 
photo  そして、いよいよ食事の時間。 段取り良くインスタントミネストローネを提供。 レンジで温めた1ポンドの冷凍ラザニアを色鮮やかな食用花で飾り、お客さんの前でトリュフをかけるサービス。
 客たちの反応は…
「子供の頃を思い出すような懐かしい味だったね。」
「マカロニチーズのトリュフ添えが美味しかった。すごくオススメするわ。」
「ロンドンにこんな素敵なレストランがあるとはね。」
 バトラーさんは、カメラ取材を理由に客からの食事代はとらなかった。 こうして、一夜限りの「ウソのレストラン」は幕を閉じた。
 
 
photo  その3週間後、ついに真実は明るみにでる。 バトラーさん自らが、あの店は架空のレストランであったことを記事にし、大手ニュースサイトに発表したのだ。 前代未聞の出来事にロンドン市民は…
「もし彼が口コミはでっち上げられることを証明するためにやったのであれば、正しいことをしたと思う。」
「インターネットで見るものは、もはや信じられないことがわかったね。何でもできちゃうし、誰もチェックしないからね。」
「今回の出来事は『耳にする事を全部信じるな』という子供達への教訓になるわ。ちゃんと見極めなさいって。」
「フェイクニュースがあるから、私はニュースとか見ないのよ。きっと人の気持ちも傷つけたんじゃないかしら?」
 
 
photo  バトラーさんの行為は、フェイクニュースが蔓延するネット社会への警鐘か? それともただの悪ふざけなのか? あれから2ヶ月、バトラーさんは、今回の事件を振り返ってこう語った。
「レストランはもちろん、洋服や靴を買う時も口コミサイトがあるし、僕だってチェックするよ。全てがウソだとは思わない。ただネットの情報を鵜呑みにしてはいけない、本物を見抜く力が必要なんだ。(ネットの世界だけではなく)現実世界でも同じことです。トランプ氏がアメリカ大統領になったように、信じていたものも時に崩れる。真実なんて意味がないんだよ。」
 
 
photo  真実なんて意味がない、そう得意げに語るバトラーさんに、こんな質問を投げかけてみた。
Q:バトラーさんみたいな人が真実が見えない世界を作っているのでは?
「フェイクという社会問題を提起するためには、フェイクという手法を用いるしかなかったんだ。僕が真面目に話しても誰も耳を傾けない。でも、今回のようなことをやったら、世界中が耳を傾けた。矛盾はしているけど、まず耳を傾けてもらうことが一番重要だったんだ。」
 
 
photo Q:お客さんに申し訳ないという気持ちはありますか?
「別に彼らにお金を払わせているわけでもないし、大した時間だって奪っていないよ。僕が伝えたかったことが彼らにとって教訓になるといいと思うよ。」
 
 
photo Q:記念日に予約しようとしたお客さんの気持ちは考えた?
「僕はただ口コミサイトでロンドンNO.1になることだけを考えていたんだ。それが僕の狙いで予約する客のことは正直頭になかったよ。まさかそんな視点からこの問題を考えたこともなかった。いい質問だね。僕にはわからないよ。」
 
 
photo  世界最大の口コミサイトでロンドン1位に格付けされたレストランが、実は存在しなかったという前代未聞の出来事。 今回 標的となった世界的口コミサイトは、騒動の後、次のような声明を発表した。
「口コミサイトに偽のレストランを載せようとするのは、ごく一部の心ないジャーナリストたちだけである。このような行為は、現実世界では大きな意味をなさないだろう。しかし我々は、口コミを正しく利用してくれる人々の不利益にならないよう、嘘の口コミ対策を講じていく。」
 これは決してバトラーさんだけの話ではない。 あなたも知らないうちに、フェイクニュースに加担しているかもしれない。