10月6日 オンエア
悲劇の絆…人気歌姫とファン
 
 
photo  1990年代初頭、1人の歌姫がアメリカのラテン音楽界を席巻しつつあった。 彼女の名はセレナ。 のちにグラミー賞を受賞し、90年代最も売れたラテン歌手としてその名を刻むことになる。
 そして、そんなステージ上のセレナに客席からひときわ熱い視線を送る1人の女性がいた。 彼女の名はヨランダ。 地味だが真面目一筋でこつこつと生きている独身女性だった。 正反対の2人の人生が交錯したとき、行きすぎた愛が全米を震撼させることになる。
 
 
photo  ヨランダはテキサス州に住む30歳の独身看護師。 離婚した兄の3人の子供を引き取って育てている苦労人だった。 華やかな世界とは無縁だったヨランダは、セレナの姿に一瞬で魅了された。
 すっかりセレナに夢中になったヨランダは、思い切った行動に出る。 セレナのファンクラブを作ろうと、セレナの父であり、プロダクションのマネージャーでもあるエイブラハムに連日連絡を取ったのだ。 彼女の熱心さに折れ、エイブラハムはファンクラブ設立を公認した。
 
 
photo  ヨランダは看護師を続けながら、ボランティアとしてファンクラブを運営。 プロダクションにも出入りするようになり…半年がすぎた頃には、憧れのセレナとの対面を果たした。 そして、ファンクラブの運営以外にもセレナの身の回りの世話までこなすようになった。
 望むことは全てやってくれる上に見返りを求めないヨランダ。 セレナは彼女に大きな信頼を寄せた。 そんな様子を見ていた父・エイブラハムもヨランダを認め、2人の関係は徐々に深まっていった。
 
 
photo  ヨランダと出会って1年、セレナはバンドのギタリストと結婚。 歌手としても、発表したアルバムが立て続けに高い評価を受け、公私共に充実した日々を送っていた。 さらに、ヨランダの努力が功を奏し、ファンクラブの会員も1600人を超えた。
 そんななか…ヨランダはロサンゼルスでのミュージックビデオの撮影に同行することになったのだ。 そして、セレナはヨランダに悩みを打ち明け、相談するようになった。 セレナはブティックをオープンさせようとしていたのだが、父・エイブラハムからはブティックは人に任せ、歌に専念するように言われていたのだ。 ヨランダは、自分からもエイブラムに口添えをすると約束した。
 
 
photo  そして、撮影旅行から帰ると…セレナの希望で正式に付き人として採用されたのだ。 生活には十分な給料がもらえたため、これを機に看護師を辞めたヨランダは、華やかな世界へと本格的に足を踏み入れることとなった。
 コンサート会場やレコーディングスタジオ、パーティーなど、どこに行くにもセレナに同行し、ますます献身的にセレナに尽くした。 そんなヨランダに感謝したセレナは、思い切ったことを提案する。 セレナは自身が経営するブティックのマネージャーにヨランダを抜擢したのだ。 ヨランダは今まで通り、付き人も兼任し、寸暇を惜しんで一層彼女のために働いた。
 
 
photo  そして、出会いから3年。 2人にこの上ない朗報が届いた。 セレナが世界でも最も権威ある音楽賞、グラミー賞を受賞したのだ。 超一流の歌手として認められたのである!
 ヨランダはセレナに指輪をプレゼントした。 セレナは2人の絆の証として、何があっても外さないと約束したのだ。 こうして絆を深め会った2人。 だが、ここから2人の運命は絡み合い、複雑に交錯していく。
 
 
photo  ヨランダは、ブティックのデザイナーを相談なしに首にしてしまった。 そのことを問い詰めたエイブラハムに、「売れようが売れまいが大した問題じゃない。どうせ歌手の道楽なんだ」という録音を聞かせた。 それはデザイナーのロブを盗聴したものだった。 ヨランダは、全てセレナのためだと主張。 エイブラハムはやり過ぎだと感じたが、セレナはヨランダに感謝した。
 さらに…ステージ衣装のこともヨランダを通してセレナに伝えることにしたり… 次第にセレナの分身のように振る舞うようになっていった。
 
 
photo  そんなある日、エイブラハムはブティックとファンクラブの口座からお金がちょくちょく引き出されていることに気がついた。 合計すると3万ドル近いお金が消えているのだ。 エイブラハムはヨランダが横領していると疑っていた。
 しかし、ヨランダに全幅の信頼を寄せていたセレナは、父の言うことを全く信用しようとしなかった。 そこで、エイブラハムはある物を見せた。 それは…口座から現金が動いたことを示す小切手。 そこにはヨランダの直筆サインが… だが、それを見てもセレナはまだヨランダを信じていた。
 そこで、エイブラハムはヨランダを呼び出し、その事実を突きつけた。 すると…最初はシラを切っていたのだが…サインを鑑定し、ヨランダのサインで間違いがなかったことを指摘すると、ヨランダは横領を認めたのだ。 セレナはショックを受け、ヨランダとの関係を終わらせることにした。
 
 
photo  夫のクリスがセレナを慰めていると… ヨランダから電話がかかってきた。 ヨランダはもう一度やり直したいと懇願したのだが…セレナには到底受け入れることはできなかった。
 すると…ヨランダはブティック関係の書類は全て自分が持っていて、セレナが直接取りに来ない限り渡さないと言い出したのだ。 それは、確定申告にどうしても必要な書類だった。
 そこで、セレナは仕方なく、ヨランダのいるモーテルへと向かった、夫のクリスと共に。 書類は取り戻したのだが… また、ヨランダから電話があり、渡し忘れた書類があるので、もう一度きてほしいというのだ。
 
 
photo  翌日、セレナは1人でモーテルに向かった。 ヨランダはセレナに座るように勧め… もう一度2人の関係をやり直したいと、迫った。 拒否をするセレナに、ヨランダは銃を向けた。
 セレナは後ろから撃たれ、その銃弾は動脈を貫通していた。 セレナはまもなく死亡。 23歳という若さだった。
 
 
photo  事件を担当した検事は、のちにこう語った。 「救急車のなかでセレナの手から指輪が落ちてきたそうです。」
それは…絆の証として、ヨランダからもらった指輪だった。 撃たれた時に、指輪を手にもっていたのだろう…。
 人気絶頂の歌手の死。 ニュースは瞬く間に全米を駆け巡った。
 
 
photo  一方、通報によって駆け付けた警察にモーテルの駐車場で囲まれたヨランダ。 自分の車に閉じこもったヨランダに、交渉人が電話で投降を呼びかけると… 「近づいたら死ぬわよ。撃つつもりなんてなかったの!私はセレナの母親でもあるのよ」と叫んだ。
 そして、交渉人の9時間にも及ぶ説得でようやく投降。 セレナ殺害容疑の罪で逮捕された。
 
 
photo  ヨランダは裁判で、銃の暴発を主張したものの、目撃証言から意図的にセレナを撃ったと陪審員に判断され、有罪が確定。 終身刑となった。
 逮捕後にヨランダの部屋を家宅捜索したところ… セレナのポスターや写真で部屋中が埋め尽くされていたという。 ヨランダは獄中で何度かインタビュー取材に答えているが、そこでこんな言葉を言い続けている。
「今でもセレナを愛している。セレナは私にとって子供であり続けているわ」