4月21日 オンエア
史上最も腐敗した警察官
 
 
photo  アメリカ・ニュージャージー州の大学で1人のコンサルタントが倫理についての講演を行った。 聴衆は警察官や裁判官を志望する学生。 そして、彼が語りはじめたのは…全米を震撼させたニューヨーク市警察の暗黒の歴史だった。 全米で話題沸騰中の講義から紐解かれる衝撃の真実。 理想に燃えた新人警官の驚くべき末路とは…。
 
 
photo  1980年代、ニューヨーク市警に入ったマイケル。 彼は治安の悪いブルックリン地区に配属された。 当時は、麻薬が蔓延していた。 それでも彼は市民を守らなければという正義感に燃え、現場に臨んでいた。
 80年代当時、ニューヨーク市では年間3500件の殺人事件が発生。 特に、マイケルが配属された地区は、1日に200件もの通報が寄せられる過酷な現場だった。 ドラッグ関係者などと敵対する日々。無事に家に帰ることができれば何より…そんな心境だった。
 
 
photo  マイケルは24歳で結婚。 息子も授かり、傍目からは幸福に包まれているように見えた。 だが実際には、家のローンを抱え、ポケットにはいつも3ドルのみ。 満足な昼食を食べる金も持っていなかった。 そんな彼を支えていたのは、警官である誇りと正義感だった。
 
 
photo  だが、その日…運命の歯車は狂いだす。 ナンバープレートのない車の取り締まりをしていた時だった。 運転手から賄賂を渡されたのだ。
 それが始まりだった。 これは自分へのご褒美だ。このくらい良いだろう…そう考えてしまったのだ。
 
 
photo  そして、決定的な出来事が起こる。 その日、麻薬取引のアジトで起こった発砲事件の現場に、真っ先に到着。 現場にあったお金を自分のポケットに入れてしまった。
 その後、上司が現場に到着。 現場にあったものを確認された時…マイケルはポケットに入れたお金を出し、自分が保管していたと嘘をついた。
 
 
photo  しかし、その日の深夜。 マイケルが現場でのことを正直に話そうした時…上司から「俺が着く前に お前が現場で何をしていたかなんて俺にはわからない。うまくやれ、そして山分けだ。」と言われたのだ。
 警官達みんなが、腐敗し切っていたのだ。 マイケルは承認を得たと思った。上司が見ていなければ良いのだと。 これ以来、彼は犯行現場にある物は正当な方法で得られた物ではない、奪ったところで正しい人間は誰も傷つかないと、自分の行為を正当化するようになった。
 
 
photo  さらに、マイケルは強奪した麻薬の横流しを始めたのだ! 日本円にして数百万円の大金が簡単に手に入った。
 ちょうどその頃、汚職警官13名が逮捕されるという出来事が起こった。そのため、当時の警察はこれ以上逮捕者を出したくないと考えていた。 事実・・・ニューヨーク市警は、マイケルの汚職に関する報告を受けてはいたが… “誰も現場を見ていない”、“聞いたことも無い”と彼を擁護したのだ。 そのため、マイケルが逮捕されることはなかった。
 
 
photo  だが…マイケルの暴走は止まらなかった。 部下ケニーを相棒とし、NY最大の麻薬組織のボスと手を組んだのだ。 理想に燃える新人警官…その面影はもうどこにもなかった…
 麻薬王アダム・ディアスは当時、弱冠20歳。 表向きは小さなスーパーマーケットの経営者だった。 しかし裏では麻薬を扱い、年間何億ドルも稼いでいる影のドンだった。
 
 
photo  警察がアダムのスーパーに取り締まりに入った時のこと…昨日まであったという麻薬は、すべて消えていた。 マイケルが捜査の情報を流していたのだ。 アダムはマイケルから捜査情報を、マイケルはアダムから大金を得ていた。 さらに、マイケルは相棒ケニーとともに、アダムと敵対する組織の取引現場に踏み込み、壊滅に協力していった。
 それだけではない、より多く稼ぐために、アダムから麻薬を仕入れ、自ら麻薬ディーラーとなって密売を始めたのだ。 そしてこの頃には、マイケル自身も麻薬の常習者となっていた!
 
 
photo  最新の高級車に別荘、手に入らないものは何も無かった。 だが…マイケルと相棒ケニーはついに逮捕された! 彼が麻薬を売った客が逮捕されたのをきっかけに、全てが白日の下にさらされたのだ!
 2人は罪を認めたため、裁判が始まるまでは保釈された。 しかし、このままでは終わらなかった。
 
 
photo  マイケルはある麻薬組織から、ある計画を持ちかけられていた。 それは、敵対する麻薬組織を襲い、ボスの妻を誘拐、引き渡すというもの。 その際、ボスの妻の生死は問わない…という条件だった。
 報酬は70万ドルの現金と10キロのコカイン。 それだけあれば、海外に高飛びできる…マイケルはそう考えた。 ついに、マイケルは人の命を金に替えるまで、悪に落ちてしまった。 そこには正義感溢れる警官の面影は一切無かった。
 
 
photo  1992年7月30日、誘拐実行当日。 家の前にFBIが待ち受けていて、マイケルは逮捕された。 実は、相棒のケニーが計画に恐れをなして密告。 その後、盗聴器を身につけ、マイケルと会っていたのだ。
 
 
photo  マイケル・ダウドは麻薬流通の共謀罪、誘拐未遂などで、懲役14年の判決を受けた。 一方、相棒のケニー・ユーウェルは、司法取引で免罪された。
 その後、当時のNY市長は、市警察の汚職を捜査するために、調査委員会を発足。 マイケル・ダウドも委員会に招集された。 彼は自らの行いについては証言したが、同僚たちの汚職については、完全黙秘を貫いた。
 
 
photo  「彼は、逮捕当日が最も安堵した日だったと振り返っています。懲役14年の実刑判決を受け、彼は自分の人生を変えなければいけないと気付きます。そして…この史上最も腐敗した警察官マイケル・ダウドこそ!私なのです。」
「私は他人の為に役立つ人生を歩むため、自分の経験を大勢の前で話す事に決めたのです。私の話を聞いていただきありがとう。」
 そう、講演を行っているこの人物こそ…史上最も腐敗した警官マイケル・ダウド、本人だったのだ! マイケルさんは出所後間もなく、警察に請われ、悪に堕ちた警察官の見本として自らの体験を講義。 今では、倫理コンサルタントとして、警察や大学、企業などに迎えられ、講演を重ねている。
 
 
photo  マイケルさんはこう話す。
「当時、私には6歳の息子がいました。彼は父親が手錠をかけられた姿を目の当たりにしたのです。そのすぐ後、所属していた野球チームを退団させられます。他の子に悪影響があるという理由で…成長し、面会に来た息子に私はこう言われました。早く一緒に暮らしたい。マイケル・ダウドとして生きる姿を見たいと。その言葉で、私は生まれ変われたのです。とにかく、ダメージは大きかった。これは倫理観の教訓です。もし信用ある立場の人が善悪の一線を越えそうになっていたら、『あなただけじゃなく周囲の人も傷つきますよ』と忠告し、止めてください信頼の失墜は多くのものの喪失につながるのですから。」