2月25日 オンエア
無実の罪で捕らわれた夫★暴かれた衝撃の真実
 
 
photo  今から3年前の4月25日…1人の主婦が弁護士事務所を訪れていた。 それは…逮捕された夫の無実を証明してほしいという相談だった。
 この時、相談に応じたのは、4か月前に弁護士になったばかりの赤堀順一郎(30)。 まだ経験は浅いものの、やる気と情熱に溢れた熱血弁護士だった。 まず赤堀弁護士は、依頼者の夫が逮捕された状況を詳しく聞くことにした。
 
 
photo  大手企業に勤める夫・健一さんが逮捕されたのは、妻・美由紀さんが弁護士事務所を訪れる前日の24日のことだった。 夫婦には可愛い盛りの2人の娘がいた。 いつもと変わらぬ日常。
 そんな、家族の幸せを壊したのは…予期せぬ訪問者だった。 警察は、健一さんが盗んだクレジットカードを使ってガソリンを入れたという容疑で、任意同行を要請。 話せば分かってくれると思っていた健一さんだったが、そのまま逮捕されてしまったのだ!
 
 
photo  実は、3か月ほど前から、ここ大阪府内では車上荒らしが連続して発生。 いずれもコインパーキングに駐車している車の窓を破壊し、中から現金やクレジットカードを盗むという手口だった。 そこで警察は数人の刑事でチームを作り、捜査を開始。
 そんな矢先…府内のコインパーキングで、またしても車上荒らしが発生。 その数時間後「盗まれたクレジットカードがガソリンスタンドで使われた」との情報が入った。
 
 
photo  捜査員は直ちに現場へと急行。 すると…ガソリンの販売記録から、盗まれたクレジットカードが使用された時刻が判明。 それは…【午前5時39分】となっていた。
 次に警察は、ガソリンスタンドに設置された防犯カメラの映像を確認。 すると…クレジットカードが不正使用された時間帯から、給油を行った人物を特定。 カメラに映っていた車のナンバーから、安藤健一さんを割り出し、窃盗容疑で逮捕したのである。
 しかし…妻の美由紀さんによると、夫・健一さんは給油の時、クレジットカードを使用しないのだという。
 
 
photo  事件があった日、健一さんは連休を利用して妻と娘2人を連れスキー旅行に出かけていた。 高速に乗るため、自宅から近い阪神高速の堺入り口に向かう途中…給油のために、およそ6km手前にある、ガソリンスタンドに寄った。 そこは…操作を客自身が行うセルフ式のスタンドだった。
 その使用方法は…まず現金払いの場合は【現金】を、カード払いの場合は【クレジットカード】を挿入。 そして、客が自ら給油を行うというもの。 その後、ノズルを戻すと、ガソリンを購入した時刻が記録される仕組みとなっていた。
 美由紀さんによれば…健一さんは、いつものように精算を行ったという。 クレジットカードではなく…現金で。
 
 
photo  我々は、実際に健一さんの弁護を担当した、赤堀弁護士を訪ねた。 現在、33歳。 今でこそ年間80件もの事件を担当はしているが、当時はまだ駆け出しの弁護士だった。
 赤堀弁護士は我々にこう話してくれた。
「弁護士としては最初の相談の段階で、話があってるとか間違っているという予断を持たないようにしています。その段階では弁護士は警察の捜査資料を見ることができません。ですので一番事件の内容を知っている可能性の高いご主人にお話を伺うことから始めました。」
 
 
photo  赤堀弁護士は健一さんに面会した。 ガソリンスタンドのレシートなど証拠になるものはないかと尋ねたが…3ヶ月以上も前のこと、何も残っていないという。
 だが健一さんはこう主張した。
「あの日は家族と旅行に行く日だったんです。そんな時に普通窃盗なんてしません。ましてや数千円のガソリン代のために、人生を棒にふるような真似は絶対しません。」
 確かに…愛する家族、安定した仕事がある身で、よりよって旅行の日に罪を犯すだろうか? 赤堀弁護士の頭の中で、冤罪という最悪のアラームが鳴り始めていた。
 
 
 健一さんの冤罪を晴らすために、動き始めた赤堀弁護士。 足を運んだのは、クレジットカードが盗まれたコインパーキングだった。 健一さんが本当に車上荒らしをしたのか、その真実を調べることから始めたのだ。
photo  彼には忘れられない言葉がある。 司法試験に合格した後、検事や弁護士のもとで、司法修習を受けていた。 この時、手元にある警察の証拠資料だけで事件の全容を把握しようとしていたのだが… 指導係に「君はなぜ、一つの資料しか見ないのですか?警察の証拠資料はあくまで抜粋。きちんと裏付けされたものか、自分の目で確認しないといけません。我々の仕事は事件を知ることではない。真実を見極めることなんです。」 そう厳しく指摘されたのだ。
 
 
photo  指導担当の弁護士から受けた、厳しい指摘。 その言葉を胸に、赤堀弁護士は徹底的に事件を洗い直すことにした。
 車上荒らしの現場となったのは、コインパーキング。もし車上荒しのあったとされる日に健一さんが防犯カメラに映っていなければ、健一さんが犯人ではないという証拠になる。 しかし、駐車場には防犯カメラはなかった。 近くの居酒屋などもあたってみたが、防犯カメラなどは設置されていない。 結局、事件があった日、「健一さんがこの場所にいなかった」ということを証明することはできなかった。
 
 
photo  続いて、赤堀弁護士が調べたのは、事件の現場となったガソリンスタンドだった。 すると、ここで思いもよらぬ情報を入手する。 何と警察は、証拠となった防犯カメラの映像の中で、健一さんが給油している瞬間を、数枚の写真に収めただけ。 映像自体は、押収せずに帰ったというのだ!
 だが、防犯カメラの映像は古いものは消去されていくため、事件当日の映像は残っていなかった。 その後も、店にあるいくつもの防犯カメラを確認したが…全てが空振りに終わった。
 
 
photo  このままいくと、かなり高い確率で健一さんは起訴されてしまう。 日本の場合、検察官が有罪と信じて起訴するため、99.9%ほぼ、統計上有罪になってしまう。 赤堀弁護士は焦っていた。
 99.9%の壁。 これは日本の刑事裁判の有罪率である。 つまり、国内で逮捕、起訴された場合、ほぼ確実に裁判では有罪になってしまうのだ! 赤堀弁護士は何度も現場に足を運び、警察の捜査に不備がなかったか、1つずつ確認していった。
 
 
photo  一方、妻の美由紀さんは、夫を励ますため、毎日のように面会を続けていたのだが…健一さんは憔悴していた。 実はこの時…健一さんは毎日5時間以上にも及ぶ、過酷な取り調べを受けていた。 しかも…捜査員は健一さんをまるで犯人であるかのように決めつけ、心無い言葉を浴びせたという。
 さらに、逮捕されたことによって、会社に行けないことも健一さんを苦しめていた。 会社には、美由紀さんが必死になって事情を説明し、今のところは何とか休職扱いになっていたのだが… このまま勾留が長引くようなことにでもなれば、会社が待ち続けてくれるとは限らない。 夫が仕事を失ったら、家族はどうなってしまうのか? 不安ばかりが募っていた。
 
 
photo  夫婦にはまだ幼い2人の娘がいたが… 美由紀さんは、父親が逮捕されたことは教えていなかった。 「パパはちょっと遠くにお仕事に行ってるだけだから。もう少ししたら帰ってくるから」 と、心配させないために、嘘を付いていた… さらに…自分で打ったメールを、父親からだと言って子供たちを慰めた。 そして「じゃあ出張中のパパに、お手紙書こっか?」と、子供達に書いてもらった手紙を見せ、健一さんを少しでも励まそうとした。
 
 
photo  だが逮捕から42日目、ついに恐れていたことが! 盗んだクレジットカードを不正に使用した容疑で、健一さんが起訴されてしまったのだ! 赤堀弁護士たちの前に、99.9%の壁が立ちはだかった。
 起訴の知らせは、健一さんの心をも蝕んでいた。 健一さんがやってもいない罪を認めると言い出したのだ。 罪を認めたほうが、裁判で罪が軽くなのではないか?そのほうが家族のためになるのではないか?そう考えるようになってしまったのだ。
 赤堀弁護士は、そんな健一さんを必死に止めた。 赤堀弁護士は、一点の汚れもない父親として堂々と家族に会ってほしいと思っていた。
 
 
photo  健一さんの無実を証明するため、証拠探しに奔走していた赤堀弁護士と妻・美由紀さん。 事件現場やその周辺に何度も足を運び、防犯カメラや給油機などをチェックしたが…手がかりは、一向に見付からなかった。 冤罪を晴らすためには、何か違う方法を探らなければならない。
 そこで、赤堀弁護士は…健一さんのアリバイを探すことにしたのだ。 クレジット会社に確認したところ、クレジットカードが不正使用された時刻は【午前5時39分】で間違いない。 つまり、【午前5時39分】のアリバイがあれば、冤罪を証明することができるのだ。
真犯人がガソリンスタンドでクレジットカードを使用した時間に、健一さんはどこにいたのか、それを明らかにする必要があった。
 
 
photo  事件があった日、健一さんたちは高速道路を利用していた。 ガソリンスタンドから高速の入り口までの距離は、約6.4kmある。
 健一さんの車には、高速道路の料金を自動精算するための「ETCカード」が搭載されていた。 実は、車によっては、このETCの利用履歴を照会できるものがある。 高速の入り口に設けられた料金ゲートを通過した時間が画面で分かるようになっているのだ。 健一さんの車を調べてみると…そこには、一家が高速道路に入った時刻が【午前5時40分】と記録されていた!
 
 
photo  2人は念のため、高速道路を管轄する会社にも確認を取ったが、その時間に間違いはなかった。 事件があったガソリンスタンドから、高速の入り口までの距離は、約6.4km。 この間を1分で走るためには、少なくとも時速200km以上を出す必要がある。
 つまりクレジットカードが不正使用された瞬間、健一さんがガソリンスタンドにいることは絶対に不可能。 これによりアリバイは立証されたも同然だった。
 
 
photo  しかし、健一さんはなぜ防犯カメラに映っていたのか? 逮捕から2ヶ月が過ぎたこの日、疑問を解く糸口は、思いもよらぬ形で姿を現した。 公判に先立ち、検察側から開示された証拠資料。 そこには、警察が調べた事件の詳細が書かれていたのだが…盗んだクレジットカードを使った時刻が確かに【午前5時39分】と記されていた。 だが、防犯カメラの時刻は…【午前5時42分】だった!
 実際に犯行が行われた時刻と、3分ものズレが生じていた! しかもその時間、健一さんはすでに高速に乗っているはず。 ところが警察は、これを防犯カメラの時間が少しずれているだけと結論付け、健一さんを容疑者として逮捕していたのである。
 
 
photo  すぐさま赤堀弁護士は、現場となったガソリンスタンドに赴き、防犯カメラの時刻を確認した。 すると…防犯カメラに表示されている時刻が正しい時刻よりも8分も進んでいることが判明したのだ! そう、実際に健一さんが給油していたのは【午前5時42分】ではなく、それから8分も前【午前5時34分】であると考えられたのだ。
 実は、古い防犯カメラには自動的に時刻が補正されないものが多い。 そのため、最初の設定が間違っていたり、何らかの理由で電源が落ちたりすると時間がズレてしまう可能性がある。 捜査では、防犯カメラに表示されている時刻がずれていないか確認する。 それは最も基本的なことだった。 ところが…今回の警察の捜査では、これを完全に怠っていたのだ!!
 
 
photo  あとは、【午前5時34分】にガソリンを現金で購入したという記録さえ手に入れば、完璧な裏付けになる。 だが、販売記録は企業の機密資料であるため、簡単に外部の人間に開示できるものではない。 ましてや、現場のスタッフにその判断をする権限などなかった。
 そこで赤堀弁護士は、ガソリンスタンドの運営会社に販売記録を開示してくれるよう直接掛け合った。 そして…ようやく、運営会社の顧問弁護士と交渉出来る機会が与えられたのだ。 運営会社の顧問弁護士に健一さんの無実を証明する証拠資料を見せると、協力を快諾してくれた。 そして、事件が起こった日の販売記録を調べると…【午前5時34分】に【現金】で支払いされた記録が残っていた!
 
 
photo  こうして赤堀弁護士は、集めた証拠と、健一さんの無実を求める書面を大阪地検に提出。 そして…ついに検察が自分たちの間違いを認めたのだ! 夫を救いたいという妻の想い、それに応えた新人弁護士の熱意、2人の信念がもたらした「真実の結果」だった!
 実際に犯行が行われたのが、午前5時39分。 警察は防犯カメラの中で、犯行時刻に一番近い時間に給油を行っていた健一さんを犯人と決め付け、逮捕していた。 最初に時間をチェックさえしていれば、防げたミスであることは明らか。 基本的な確認を怠ったずさんな捜査がもたらした誤認逮捕だった。
 
 
photo  公判が取り消された健一さんは、即日釈放。 逮捕から85日、ついに家族との再会を果たしたのである!
 誤認逮捕を認めた警察は、夫婦に謝罪。 後日、損害賠償として約620万円が支払われた。
 そして健一さんが釈放されてから8ヶ月後。 別件で逮捕された男が車上荒らしについても自供、事件は無事解決した。
 
 
photo  85日もの間、無実の罪で勾留され続けた健一さんは、その後、職場復帰を果たし、今では日常生活を取り戻しているという。
もし、弁護士が真剣に取り合ってくれなければ…
もし、真実に辿り着けなければ…
幸せは、2度と戻らなかったかもしれない… 正義の行使にかかる責任は限りなく重い。
 
 
photo  地道な裏付け調査によって、不可能と思えた99.9%の壁を乗り越えた赤堀弁護士。
「こういう冤罪事件は、いつ誰に起こってもおかしくない。我々弁護士は、それを見逃さないように、愚直に真摯に、真剣に事件と向き合っていかねばならないと改めて思います」と話してくれた。
 そして、健一さんが、無実を勝ち取ることが出来たのには、もう一つ、大きな要因があったという。
「奥さんや子供が待ってるっていうということが、85日に渡って勾留されていても、最後まで頑張り通せた一つの大きな要因だったと思います。」