6月11日 オンエア
悪魔のウイルス復活!?★感染爆発を食い止めろ
 
 
photo  今、韓国で猛威を振るうMERSウイルス。 死者、感染者、感染が疑われる人を含めると、その数 数千人に及ぶ。 突如襲いかかるウイルスの恐怖。
 しかし…あなたはご存知だろうか? 今から12年前、普段と変わらぬ日常のその裏で、人類が滅亡してしまうかもしれない危機と闘っていた人たちがいたことを。 彼らが闘っていたその相手は…自然界に存在するはずのない、殺人ウイルスだった!
 
 
photo  目に見えない恐怖、それは1人の少女から始まった。 アメリカ・ウィスコンシン州に住む 3歳の少女、シャイアン。 彼女は高熱に冒されていた。 母親は、翌朝には薬も効いて熱は下がるだろうと思っていた。 しかしこの時、シャイアンの体には恐ろしい異変が起きていた。
 翌朝になってもシャイアンの熱は下がらなかった。 しかも、首元にできた発疹が顔中を覆い尽くすまでに広がっていた。
 
 
photo  娘の様子を心配した両親は、すぐに病院に連れて行った。 病院では「しょうこう熱」だと診断された。 しょうこう熱とは、主に子供がかかる、高熱と共に体に発疹が出る病気。 薬を飲み、安静にしていれば命に別状はないということだった。
 ところが…数日たってもシャイアンの熱は一向に下がらなかった。 しかも、顔や首などに出来た発疹は数も増え、大きくなり、全身へと広がっていった。
 
 
photo  そして、発症してからおよそ1週間後、シャイアンの容態は悪化、緊急搬送された。 改めて症状を見た医師は、しょうこう熱とは違う別の病を疑い始めた。
 そして、血液サンプルで再び検査を行なった結果… 医師たちがシャイアンの体から発見したウイルスは、あるものにとても良く似ていた。 それは、人類に最大の被害をもたらした、天然痘ウイルス!!
 
 
photo  その正確な起源は未だに良く分かっていないが、紀元前、つまり2000年以上前より死に至る病いとして人類を大いに苦しめてきた。 強い感染力を持ち、発症すると40度以上の高熱と共に、体中に発疹などの症状が現れる。 発症したら最後、根本的な治療法はなく、解熱剤の投与などで症状を抑えることしかできない。 致死率は極めて高く、世界的に見れば 20世紀だけでおよそ5億人もの死者を出したという、まさに恐怖の殺人ウイルス。
 
 
photo  だが、医師たちが驚いたのは、死に至る病いという点ではない。 実は、天然痘ウイルスは人にのみ感染するウイルスであり、これまで人間の体内からしか発見されていない。 そして、200年前に開発された天然痘予防ワクチンを世界中の人々が発症前に接種することで、徐々にその猛威は終息。 間もなく、人類の体から天然痘ウイルスは完全に消え去った。
 これにより、今から36年前、天然痘の根絶を宣言した。 人類はウイルスの根絶に成功した…はずだった。
 
 
photo  医師たちは、バイオテロではないかと思った。 医師たちがそう思うのも無理はない。 実は、自然界からの撲滅は成功したものの、世界中でただ2カ所、アメリカとロシアだけには研究用のウイルスが保管されていたのだ。
 万が一の時に備え、天然痘ワクチンは世界各国で備蓄されている。 しかし…世界的大流行、いわゆるパンデミックが起きたら、その数は圧倒的に足りなかった。 しかも、天然痘ワクチンは発症前に投与してはじめて効果を発揮するものなのだ。
 
 
photo  医師たちは、シャイアンを隔離病棟に移すことにした。 天然痘ウイルスは、患者との接触はもちろん、くしゃみなどの飛沫からでも容易に人から人へ感染する強力なウイルスなのだ。
 実は…シャイアンの診察時、担当していた看護師はシャイアンのクシャミを顔に受けていた。 そして…看護師の首にも発疹が現れ始めた。 こうして、ウイルスに感染したシャイアンだけでなく、感染の疑いがある看護師も隔離病棟へ移された。
 
 
photo  医師たちは世界最高峰の感染症の研究機関、アメリカ疾病予防管理センター、通称 CDCに通報。 間もなく、CDCの研究員が病院に駆けつけた。 彼らはすぐさまシャイアンが感染したウイルスの検査を開始。
 一方、これ以上の感染拡大を防ぐため、シャイアン一家の自宅、そして所有する農場までも立ち入り禁止に。 徹底した隔離、除染作業による封じ込め作戦をとったのだ。
 
 
photo  しかし…同じ頃、シャイアン一家の住む町から800キロも離れたインディアナ州の病院で、同様の症状に苦しむ6歳の少女がいた。 そう、すでに感染は広がり始めていたのである!! しかも、彼女の場合、発疹は喉の奥にまで広がり、呼吸を妨げていた。
 さらに、彼女以外にも感染の疑いのある人間が全米の3つの州で計19人も見つかった。 被害の拡大を防ぐべく、徹底的に除染を行ない、ウイルスを封じ込めたはずが感染者は増え続けていた。 そしてあの6歳の少女も、隔離病棟に移されることになった。 さらに、その両親もすでに感染していた。 天然痘と思われる症状が見つかったことで、患者の隔離などしかるべき対応をとるよう、感染症対策の中枢 CDCは、全米の病院に指示を出した。
 
 
photo  撲滅されたはずの殺人ウイルス、その感染被害は少しずつ、だが確実に広がっていた。 撲滅されたはずのウイルスが今なぜ猛威を振るうのか? 原因究明の鍵を握るのは、最初の感染者・シャイアン。 貴重なサンプルとしてあらゆる検査を行なおうとしたのだが…発症以来の度重なる検査で体力は急激に低下。 シャイアンはみるみる弱り、検査は進められずにいた。
 そんな時だった。 シャイアンの母・タミーが病室で防護服を脱ぎ、シャイアンに接触したのだ! タミーは自分もウイルスに感染し、シャイアンの代わりに検査を受けると言い出した。 娘の苦しむ姿をこれ以上見たくないと、身代わりになる決意をしたのだ。
 
 
photo  やがて、母親にも同じ症状が現れた。 研究員たちは、血液サンプルや皮膚細胞など、あらゆる検査材料を採取。 CDCに持ち帰り、専門的な検査を行なった。
 その結果、タミーから見つかったのは「サル痘ウイルス」だった。 サル痘ウイルスとは、今から58年前、サルから見つかったことでその名がついたウイルス。 元々は、アフリカに生息するネズミやリスなどの体内に存在し、その中にいる限り悪さをすることはない。 だが、ひとたび人間やサルに感染すると、猛威を振るい、高熱や発疹など天然痘とよく似た症状がでる。 またその形状も天然痘ウイルスと瓜二つ、専門家でも見分けがつかない程だと言う。
 それだけではない。 天然痘と比べ、致死率や感染力は低いものの、根本的な治療法がないのは同じ。 決して油断はできない。
 
 
photo  実はサル痘ウイルスはアフリカの一部で発見されてきただけで、その地域以外からの報告はこれまで一切なかったのだ。 しかも、3歳のシャイアンだけでなく、他のどの患者もアフリカに行ったこともなければ、その地域の人とふれあう機会もなかった。 なぜアメリカに存在しないはずのウイルスが猛威を振るっているのか?
 対策を指揮するCDCは、ウイルス封じ込め作戦を進めるも、感染者は増加。 全米に注意を促すため、CDCはついに情報の公開を決断。 3歳の少女に端を発したサル痘ウイルスの猛威は、わずか数日の間に凄まじい広がりを見せた。 しかし、この時はまだ誰も気づいていなかった…あるものによってウイルスが全米中にバラまかれ、かつてない感染爆発が引き起こされつつあることを。
 
 
photo  サル痘ウイルスに根本的な治療法はない。 発症すると、解熱剤の投与など、症状を抑えることしかできない。 そして、ウイルスが体から消え去るまでの間、患者はただひたすら苦しみに耐え続けなければならない。 もし、打ち勝つことが出来なければ…
 アフリカにしか存在しないはずのサル痘ウイルス、それがなぜアメリカで猛威を振るっているのか? ウイルスはどこから来たのか?
 感染源を突き止めることことそ、被害拡大を防ぐ最大の近道だった。 CDCには、感染経路の特定を専門にするエキスパートがいた。
それが…疾病捜査官。
 
 
photo  捜査官たちが真っ先に向かったのが、最初の発症者・シャイアンの自宅だった。 この家のどこかに、感染源と繋がる重要な手掛かりがあると睨んでいた。 観葉植物、冷蔵庫の中、庭に生息する微生物まで、ありとあらゆる可能性を探った。 すると…空のケージを発見。
 捜査官はシャイアンの母親を訪ねた。 実はシャイアンの家ではプレーリードックを飼っていたという。 そして、飼い始めたばかりだったのに死んでしまったというだ。 それは、シャイアンが熱を出す2〜3日前のことだった。 さらに、死んだプレーリードッグは庭に埋めたという。
 
 
photo  捜査官たちはすぐさま庭を捜索、プレーリードックの死骸を見つけると、持ち帰り検査を行なうことになった。 そして…プレーリードックの血液からサル痘ウイルスが発見されたのだ! さらに、他の患者たちもこの1か月の間にプレーリードックとの接触が確認されたのだ!!
 ついに感染源を突き止めたかに思われたのだが… サル痘ウイルスの発生源はアフリカ。 だが、プレーリードックは北米の草原地帯のみ生息する動物だった。 生息域が異なる以上、本来プレーリードックがウイルスに感染することはあり得ない。 つまり、プレーリードックもまた、何者かによって感染の被害を受けた犠牲者だったのである!
 
 
photo  シャイアンは発症する1週間前、ペット販売のイベントでプレーリードックを買ったという。 他の患者はそれぞれ地元のペットショップや、地域が違うものの、同じ様なイベントでプレーリードックを買っていた。 そして…そのプレーリードックを卸していたのは、全て同じペット業者だったのだ!!
 直ちに捜査官たちはプレーリードックを卸していた販売業者の元へ向かった。 そして、建物の中に潜入…中はまるで動物園のようだった。 多種多様な動物たちが飼育され、多くの外来生物が狭いケージに閉じ込められていた。 そして、その中にいたのである…サル痘ウイルスの持ち主が!
 
 
photo  その正体はアフリカオニネズミ…サル痘ウイルス発生源である、アフリカ中西部に生息するネズミで、これがウイルスを持っていたのだ! そうとは知らないペットの卸業者は、このネズミを西アフリカのガーナから輸入。 プレーリードックなどと共に狭いゲージに閉じ込め、全米を回っていたのである。
 その間に、ネズミと接触したプレーリードックがサル痘ウイルスに感染。 さらに、そのプレーリードックを購入した人たちが次々と感染、サル痘を発症した。 そして、被害は瞬く間に全米へと拡大。
 今回のパニックのきっかけを作ったペットの卸業者も のちにサル痘を発症した感染者の1人である。 しかし、懸命な水際対策の効果もあり、感染者は6つの州、71名のところで食い止められた。
 
 
photo  ここで気になるのは、ウイルスに苦しめられていた患者たちはどうなったのかということ。
我々は最初の感染者、シャイアンの家を訪ねた。
 迎えてくれたのは、シャイアンの母親、タミーさん。 彼女も感染したが、幸い症状は軽かったという。 そして…当時3歳だったシャイアンは、生き延びていた! ウイルスに打ち勝ったのだ!!
 
 
photo  今回の騒動はバイオテロではなく、予期せぬ形での感染拡大だった。 もし、研究員たちが迅速に動いていなければ…被害はどこまで拡大していたか分からない。 そして彼らの活躍により、この騒動での死者は1人も出なかったのである!!
 
 
photo  突如全米を襲ったウイルスの恐怖。 実はその危機が日本にも迫っていたことをご存知だろうか? サル痘ウイルスを撒き散らした感染源は、アフリカから船に乗って運ばれて来た1匹のネズミだった。 そのネズミと同じ船に乗っていたアフリカヤマネという動物が日本に輸入されていたのだ!
 しかし、輸送中にそのほとんどが死亡。 残りも上陸寸前に保護されたため、サル痘ウイルスが日本に上陸することはなかった。 そして、現在日本では、海外に生息するネズミなど、野生のげっ歯類を輸入することは、法律で禁止されている。
 
 だが、これで安心してはいられない。 昨年夏、突如日本を襲ったデング熱。 蚊を媒介とする伝染病で、熱帯、亜熱帯地域での病だったにも関わらず、およそ70年ぶりに国内での感染が確認された。
 
photo さらに、昨年末には…最終的に陰性ではあったものの、西アフリカから帰国した男性が最も危険なウイルスの1つ、エボラ熱に感染した疑いがあるとして検査を受けている。 そして今、韓国を恐怖に陥れているMERSウイルス、隔離する対象者を数千人規模にまで広げるなど、今も感染拡大は止まらず、政府は懸命な対策に追われている。
 恐怖のウイルスは、いつ、どこから襲ってくるのか誰にも分からない。 例え危機が迫っても、1人1人が冷静な判断を下し、落ち着いて行動する、それこそが感染拡大を防ぐ最善の策なのかもしれない。