1月8日 オンエア
トラが脱走!住民大パニック!
 
 
photo  今から36年前、猛暑が続く8月3日。 午前4時、一本の110番通報があった。 捜査員が向かったのは、千葉の郊外にある寺だった。 その寺から、1歳にして体長1.5m、体重90キロに達する大きな虎が脱走したのだ。 一体なぜ、寺からトラが逃げたのか?
 実はその寺では、10種類の動物を飼育。 動物園の様に参拝客を楽しませていた。 当時は猛獣であっても特別な許可は必要なく、誰でも飼育できたのだ。 中でもトラは目玉の動物で、全部で12頭も飼われていた。
 
 
photo  前日の午後6時に見回った時は、檻はきちんと締まっていたという。 ところが…午後10時、檻の扉が開いていることが発覚。 3頭が姿を消していた!
 警察は、何かの拍子にトラがうちかけ錠を跳ね上げ、扉が開いたではないかと推測。 しかし、詳しい原因についてはわかっていない。 1頭はすぐ檻に戻ったが、他2頭の行方はわからず、寺が通報したのは6時間後だった。
 事件が発生した時、寺には研修のため高校生が宿泊。 さらに…周辺には80世帯の民家があった。 それだけではない。 夏休みということもあって、合計400名以上の人々が付近の施設を訪れていた。
 トラは短距離なら、時速50km〜60kmで走ると言われ、標的になれば、たとえオリンピック選手でも、逃げることは不可能。 そんな猛獣が逃げ出したのである。
 
 
photo  直ちに交通規制が敷かれ、住民たちも戸締りを厳重にするなど、対策を取った。 そして、地域住民の人命を守るべく、警察は現地対策本部を設置、機動隊や猟友会が召集された。
 警察は射殺もやむなしと考えていた。 なぜなら…現場は深い藪が多く、捕獲は困難。 麻酔銃も命中してから動きが止まるまで、数分かかってしまう。 人命第一を考えての決断だった。
 かくして山一帯を捜索する作戦が始まった。
しかし視界が悪く、一瞬たりとも気を抜けない。
 一方、寺では高校生たちを脱出させるべく、機動隊が出動。 午前9時半、ようやく高校生全員が脱出。
 
 
photo  住民たちが見えない恐怖に怯える中、捜索隊がついにその影を捉えた。 20㎝もあるトラの足跡…猟友会も初めて相対するトラの存在に、不安を隠せなかった。
 飼いならされたトラも空腹が続けば、凶暴になる。 山中で、ひとたび狩りの楽しみを覚えれば、人を襲うのは必至、事は一刻を争う。 そこで対策本部は猟犬・数頭を使って山狩りを敢行。 トラを捕獲する作戦に出た。
 だが…実はトラやライオンなど、ネコ科の動物には汗腺が無いため体臭もほとんどない。 そのため、たとえ犬でも居場所を特定することは困難とされる。 こうした事実は当時ほとんど知られていなかった。
 そして…無念の日没。 街灯もまばらなこの地区は、夜、暗闇に包まれる。  対策本部は住民の外出を一切禁じた。 安全のため、シャッターまで下ろす人々。
 
 
photo  だが、トラ脱走 2日目…住民を本当の恐怖が襲う!! まだ明け方だというのに、その日に限って犬が激しく吠えていた。 様子を見に除いてい見ると…そこにトラがいたのだ!
 民家にトラが現れるという衝撃の事態を受け、捜査人員を大幅に増強。 800人に及ぶ人海戦術となった。 寺の周囲1kmに絞って包囲網を敷き、トラ大捜査線、2日目が始まった。
 もし、急所を外してしまったら…最悪の場合、反撃され、かみ殺される危険もあるのだ。 命をかけたトラ狩り…捜索開始から1時間ほどが経った時だった。 ついに、猟友会メンバーがトラを発見!
 猟友会3人が、計四発。 発見から射殺まで、1分ほどの攻防だった。
 
 
photo  だが、これによってハンターたちを思わぬ悲劇が襲う。 トラ射殺に対して、非難の電話が全国からかかってきたのだ。 だがなぜ、ハンター個人の家に電話がかかってきたのか?
 実は彼らの名前と住所が、新聞などで報道されてしまったのだ。 嫌がらせの電話は…昼夜を問わず鳴り響き…夜も眠れなかったという。
 猟友会、撤退も危ぶまれた。 しかし…もう1頭を仕留めるまで、住民の安全はない。 男たちは戦い続けた。
 
 
photo  近くのゴルフ場では、自衛策として有刺鉄線が張り巡らされ… 車のない住民たちは、生活必需品を親戚に買って来てもらうなどして、当座をしのいだ。
 だが、トラ騒動から2週間が過ぎた頃…再び恐怖が襲った。 民家の庭先にトラが現れたのだ。 目撃されたのは重点的に捜索を行っていた地区から2kmも離れた山の麓の民家だった。 それまでトラが出没した山あいの地区とは違い、住宅街に姿を見せたのは初めて。 他人事だと思っていただけに、住民はパニックに陥った。
 
 
photo  そしてトラ脱走から26日目、ついに恐れていた事が起きた。 場所は、とある住宅街の一角。 愛犬の異様な声を聞いた男性は、声がした庭へ向かったのだが…残されていたのは、首輪と鎖だけだった。 さらに…目にしたのは、愛犬とは比べものにならない大きな獣の足跡だった。
 通報を受けた警察が、早速付近の山を捜索。 すると…犬のものと思われる、毛や血痕。 ついに恐れていたことが…トラが、狩りを覚えた瞬間だった!
 
 
photo  それまで具体的な被害が出ていなかっただけに、生き物が襲われたという知らせに、衝撃が走った。 恐れおののく住民達、そこへ現れたのは…警察官によるトラ捜索選抜隊だった。
 実は遡ることおよそ10日…警察学校で射撃テストが実施されていた。 そこで選ばれた腕利きの警察官により「トラ捜索選抜隊」が結成されたのだ! 彼らが装備したのは、「スラッグ弾」と呼ばれる殺傷能力の高い銃弾。
 
 
photo  現場の山に詳しい猟友会員たちが、先導。 そして…その時、選抜隊の前に、突然、何かが飛び出してきた!
 トラの脱走から26日目、午後0時20分。 寺から約4キロ離れた山中で、2頭目のトラが射殺された。 こうして前代未聞、トラの逃走劇は幕を閉じた。
 翌日、街はすっかり活気を取り戻した。 ゴルフ場は再開され、住民の顔にも笑顔が戻った。
 この一件をきっかけに全国で条例の制定が相次ぎ、猛獣を飼育する際には、特別な許可が必要となった。 我々は文明を発展させ、快適な社会を実現した。 だが、平和な日常は いとも簡単に崩れさることもある。 そこには人間の怠慢と思い上がりがあるのかもしれない。