6月12日 オンエア
実録!替え玉殺人★救いの女神の裏の顔
 
photo  その日、東北の都市・A市で一人暮らしをしていた和子さんの元に大阪の市役所から電話が掛かってきた。 和子さんが出した大阪市西成区からの転入届けに記載ミスがあったという連絡だった。
 職員によれば、最近、2度にわたって和子さんの住所を変更する手続きがあったという。 まずは、現在住んでいるA市から、実家があった大阪西成区へ。 数週間後、大阪市から再び、A市へ・・・その際、書類に単純な記載ミスがあったという。
 だが問題はそこではなかった!! 和子さんは、それらの転入届に全く身に覚えがなかったのだ。 誰かが勝手に、住民票を移したのか?
 
photo  うす気味悪く感じた和子さんは、戸籍を取り寄せて調べた。 するとさらに驚くべき事実が判明する。 大阪で元気に暮らしていたはずの父が・・・2ヶ月前に死亡したと書かれていたのだ! なぜ、自分の知らない間に住民票が移されているのか? そして、父が死亡しているのなら、なぜ連絡がこなかったのか? だがこれは、恐るべき凶悪事件の、ほんの前触れに過ぎなかった・・・
 
photo  実家の父とも一向に連絡が取れず、不安に思った和子さんは、大阪府警に相談に行った。 和子さんの父、根本実さん、77歳。 かつて鉄道公安管を務め、3人の娘を育て上げた。 だが 十数年前、妻と離婚し、実家で一人暮らしをしていた。 独立し、家を離れた娘たちとの交流はほとんどなかったという。 和子さんによれば、実さんは、西成に土地も持っていたため、経済的には余裕があったはずだという。
 さらに戸籍には、和子さんの知らない事実があった。 1年ほど前、父が再婚していたのだ。 相手は、中国人のワン・リンシンという女性。 根本さんがよく通っていた、西成区のスナック経営者だった。
 
photo  だが、幸せに見えた2度目の結婚からおよそ半年後、父の死亡届が出されたのだ。 さらに、不可解な事があった。 死亡届けが出されたのは、石川県のN市。 父とも、その妻とも、縁もゆかりもない土地だった。
 早速刑事らは、石川県警に問い合わせ、検視の際の写真を取り寄せた。 死因は、心筋梗塞。事件性はない自然死とされていた。 だが!写真を見た和子さんは驚愕した。 そこに映っていたのは、父ではなかったのだ!
 
 和子さんの父、根本実さん失踪に関する合同捜査が始まった。 和子さんの2人の妹も、父の近況については何も知らなかった。
 
photo となれば、何らかの事情を知っている可能性が高いのは、ニセの根本さんが部屋で死亡していると通報した、妻のワン・リンシンしかいなかった。 ところが・・・妻のワン・リンシンの消息は不明だったのだ。
 警察は疑いの目を彼女に向けたが、彼女の周囲からの評判は、とても良かった。 労働者の町・西成では、職にあぶれたホームレスが少なくない。 そんな中、彼女は、特に困っているお年寄りに声をかけ、親切に接していたという。 西成ではこう呼ぶものもいた、『救いの女神』と。
 
photo  彼女の交友関係を徹底的に洗い出していくうちに気になる証言があった。 スナックの常連だった室川という男が、西成の土地が380坪、手に入りそうだと話していたという。
 刑事は根本実さんが西成に土地を持っていたことを思い出した。 単なる偶然の一致に過ぎないのか、念のため 根本さんの土地について調べると、驚くべき事が判明した!! 例え、両親が離婚していても、年齢に関わらず 子供にはその財産を相続する権利がある。 にも関わらず、父の土地が娘たちの知らぬ間に、すべて再婚相手のワン・リンシンに相続されていたのだ!
 根本家の遺産相続を担当した、法務局の職員によれば、ワン・リンシンが3人の娘を連れて、手続きに来たという。 だが、その3人の娘は全くの別人だったのだ! 次女と三女を名乗る女性は、相続を放棄。 長女の和子を名乗る女と、未亡人ワン・リンシンが、半分ずつ、遺産相続の手続きをしたという。 一体事件の背後で何が起こっているのか?
 
photo  事件発覚から1ヶ月後、進展があった。 全く別の窃盗事件で1人の男が捕まったのだ。 あの、室川だった! 土地の売買で大金を手にしたはずの室川が、なぜ窃盗で捕まったのか? 室川から、恐るべき凶悪事件の真相が語られた。
 それは根本さんの死亡届が出される、1ヶ月ほど前のこと。 室川は、ワン・リンシンから頼みがあると、突然、呼びだされたという。 そして、知り合いが糖尿病で入院しているが良くならないため、田舎で静養できる場所を紹介してほしいというのだ。 さらに・・・その男性を『根本実』ということにしておいてほしいという!
 これはいったいどういう事なのか? なぜ、夫の根本実さんが突然姿を消し、全く別の男性が根本さんとして入院しているのか?
 
photo  実は、ワン・リンシンは、根本さんの身代わりを探すため、ホームレスに接触していた! そして、糖尿病のホームレスを病院に入院させた・・・夫、根本実として。 そう、ワン・リンシンは『救いの女神』などではなかったのだ!
 入院10日目、次なる手段に出る。 病気が回復していないにも関わらず、どうしても外せない仕事があるからと頼み込み、男性を一時退院させたのだ。 向かった先は、静養先として室川に用意させた、石川県のとある一軒家だった。 以来、本人には気分転換の静養だといいながら、連日散歩に連れ出し、体力を徐々に奪っていった!
 そして、辺りに人がいないのを確かめ、納屋に連れ込んだ! 2人がかりで、男性を拘束。 もはや彼に抵抗する力はなかった。 なぜなら、病院を出てからというもの、糖尿病患者にとって必要な薬、インシュリンを一切与えていなかったからだ!
 
photo  そのまま納屋に放置。
2日後、ついに・・・男性は、息絶えた。
 次に2人は、遺体を部屋に運んだ。 あくまで病死に見せかけるためである。 最後に、妻・ワン・リンシンが遺体を発見したとして、通報。
 根本さんとして、入院歴があったこともあり、警察も疑うことはなかった。 そして 検視の結果、死因は心筋梗塞、自然死として処理された。
 
photo  さらに、室川に用意させた女性に、3人の姉妹を演じさせ、印鑑証明まで偽造。 法務局の職員をだました! しかし、東北に住んでいながら大阪の土地を相続するのは不自然。 そこで疑いをかけられないように、わざわざ和子さんの住民票を大阪へ移し替えていたのだ!
 さらに 数週間後、和子さんの替え玉に、
「長年住み慣れた東北の暮らしが私にあってます。私が相続した分の土地を、彼女(ワン・リンシン)に譲りたいと思います。」と証言させた。
そして、和子さんにバレない内に住民票を、すみやかに大阪から再び東北へと戻した。 こうして、ワン・リンシンは380坪の土地を、すべてだまし取ったのである!!
 
photo  だが、地価3000万以上の土地を手に入れた彼女が、分け前として室川に与えたのは・・・400万円だけだった! しかし 室川には、「一気に私が銀行から降ろしたら、疑われるでしょう」と言って納得させた。 そして、室川に睡眠薬を盛り、渡した400万円もろとも、ワン・リンシンは姿を消した。
 まんまと彼女にだまされた室川は、あてにしていた分前を手にする事も出来ず、金に困って窃盗をはたらいたことで、別件逮捕となったのだ。 だが、刑事達は手放しに喜ぶわけにはいかなかった。 なぜなら・・・主犯であるワン・リンシンの足取りを、完全に見失っていたのである!!
 
 事件発覚から1ヶ月後、警察はワン・リンシンを全国に指名手配。 だが、2年経っても 一向にその行方を掴む事はできなかった。 その間、唯一警察が掴んだことと言えば、彼女のこれまでの人生だった。
 
photo  北京で生まれたワンは、42歳の時、日本人男性と結婚し、来日。 しかし、その後 すぐに離婚。 生活のために、労働者の町、大阪・西成区に和風スナックを開いた。
 店の運営は順調だったものの、やがてそれだけでは満足できなくなり、次に考えたのが、孤独な老人の遺産だった。 中でも常連客の中で、一番大きな土地を持っていた根本さんに目を付けた。 そして、見せかけの愛情をちらつかせ、結婚。
 
 だがここで誤算が生じる。 77歳と高齢ではあったが、根本さんは元気で体力が衰える気配はなかった。 このままでは、遺産がいつ手に入るかわからない。
 
photo そこで彼女は恐るべき行動に出る。
 その決定的な証拠が、後日、2人が生活していたアパートで発見された。 それは・・・根本さんの血痕と、骨と骨とをつなぐ筋肉、骨格筋だった! 骨格筋は、体の深い部分にあり、切断するような外傷を負わなければ検出されない。 根本さんが1人で大怪我を負うことは考えにくい。 何者かに暴行された可能性が高かった。 警察は、根本さんはこの部屋で殺され、遺体はどこかに移動したのではないかと考えた。
 
photo  そして事件から5年が経過した、2007年、突然、事態が動き出す。 事件を特集した雑誌でワンの写真を見た男性から、似ている女性がいると警察に通報があったのだ! 果たしてその女こそ、探し求めていた、ワン・リンシンなのか?
 中から出て来たのは・・・指名手配の写真とは、少し雰囲気が変わっていたが、紛れもなく、ワン・リンシンだった!! 5年半の逃亡劇に、終止符が打たれた瞬間だった! そして取り調べが行われたのだが・・・彼女は反抗的な態度をとり続け、事件への関与を一切認める事はなかった。
 
 だが、その後、行われた裁判で・・・ 大阪地裁は、『被告人が男性を死亡させた状況が全く分からず、暴行が殺意が認められるほど強いものであったと断定することは出来ない。』とした。 しかし、押し入れの血痕や骨格筋などから、彼女が死に至らしめ、遺体を処分した可能性が高いと判断。 傷害致死との判決を下した。
 
photo そして、身代わりとなった男性に対しては、『糖尿病の悪化により、死亡させる計画を立てていた事が認められる。』として、殺人の判決を下した。
 そして昨年11月、最高裁はこの地裁の判決を支持。 ワンの無期懲役がが確定した。 共犯の室川は、懲役15年の刑に処された。
 だが、根本さんの遺体は今もって、発見されていない。