4月17日 オンエア
ローカル鉄道復活へ★新入社員が起こした奇跡
 
 NHKのドラマ「あまちゃん」の舞台となり、その存在が全国に知れ渡った、岩手県三陸鉄道。 今月 東日本大震災で被災して以来、1123日ぶりに完全復旧を果たし、東北に新たな希望の光を灯した。 photo そして今、同じ東北で注目をあびる、もう一つの地方鉄道がある。 ゴールデンウィーク、美しい桜に彩られた山形県南部を走る「フラワー長井線」。
 山形鉄道が運営する唯一の路線で、1日の本数わずか24本。 社員の数はたったの34名。 単線をディーゼル車がのんびり走る、典型的な地方鉄道だが、2004年 上野樹里主演の大ヒット映画「スウィングガールズ」のロケ地として一躍 全国区に。
 ところが、利用者が年々減少し、フラワー長井線は近年 廃線の危機にさらされていた。 そんなとき、鉄道に何の興味もなかった一人の新入社員が1羽の白うさぎと出会い、フラワー長井線の運命を大きく変えていくことになる。
 
photo  4年前の春、フラワー長井線の入社面接で、「フラワー長井線にミニ動物園を作りたい」と、突拍子もない夢を語る女性がいた。 松山愛さん、当時29歳。
 祖父が動物好きだったため、幼い頃から実家では犬2匹、猫10匹、鳥2羽を常時飼育。 家族よりも多くの動物に囲まれ、筋金入りの動物好きに育った愛さん。 一度は保育士になったものの、彼女は気づいてしまった。 子供よりも、やっぱり動物が好き。
 そこで、いつも動物のそばにいられる牧場に転職。 愛さんにとって、まさに天職だと思われた牧場勤務。 だが、腰を痛めてしまい泣く泣く退職。
 
photo  職を求めハローワークに通うことに。 そこで、愛さんの目に留まったのは、山形鉄道の職員募集だった。 その時に駅にミニ動物園を作りたいと、鉄道に興味を持ったのだ。 そして、愛さんは見事 採用!!
 創業以来 100年以上、住民の足として活躍してきたフラワー長井線。 だが、車社会への移行で乗客数が減少、赤字は年々増え続け、廃線の危機にさらされていた。 経営立て直しのために就任した野村社長は、愛さんの「フラワー長井線に興味を持ってもらいたい」という言葉に光るものを感じたという。
 
 愛さんは早速、動物園のアイディアをプレゼン。 だが・・・「本当に集客できるのか」「動物の世話をするのは大変」などの反対意見ばかり。 そこで愛さんは、うさぎだけでも飼うのはどうかと提案。
 実は、フラワー長井線には、その名も「白兎」という名の駅があり、さらに当時、猫を駅長にした地方鉄道が全国的に注目を浴びていたのだ。 早速、ペットショップに白いうさぎを探しに行ってみたのだが・・・沿線のペットショップをいくらまわっても、愛さんが求める真っ白なうさぎはどこにもいなかった。
photo  だが そんなある日、愛さんはイメージ通りの真っ白い子うさぎを持って会社にやって来たのだ! 実は愛さんは農業高校出身で、高校時代お世話になった先生に相談したところ、「もうすぐ うさぎの赤ちゃんが産まれるから待ってみろ」と言われていたのだ。 両親は2羽とも茶色のうさぎ、しかし何故か、5羽産まれた小うさぎの中に1羽だけ雪のように真っ白な小うさぎがいたのだ!! さらに、1羽だけだと可哀想だと、3羽もらうことになった。
 
 ようやく理想の白うさぎが見つかり、順風満帆かに思われたが、そこにはそこには大きな問題があった。 白うさぎ駅長を置く予定だった白兎駅は無人駅。その上 待合室は狭く、3羽のうさぎを飼うスペースはなかったのだ。
 そこで広い駅舎がある宮内という駅が候補になったのだが、経費削減のため無人化され、駅舎は倉庫同然。 だが、改修すれば何とかなりそうだった。 しかし ここで新たな問題が! そう、白兎駅だからこそ うさぎ駅長を置く意味があったのだが、これが宮内駅だと話は別。 photo うさぎとは何のつながりもなかったのだ。
 だがその後、昼食を取りに立ち寄った蕎麦屋で2人に思わぬ幸運が!! そこで、熊野大社にまつわるうさぎ伝説の話を教えてもらったのだ。
 宮内駅からほど近い 熊野大社には、ある言い伝えがあった。 それは、本殿の裏手の彫刻にうさぎが3羽、功名に隠し彫りされており、全てを見つけることができたら幸せになれるという伝説だった。 奇しくも、宮内駅とうさぎ駅長がここで一つにつながったのだ。
 
 後は宮内駅を改修するだけ。 だが、公務部員がよけいな仕事が増えるだけだと、話しているのを聞いて、愛さんは落ち込んだ。 何をやっても客が増えるとは思えない、ましてや鉄道とは関係ないうさぎの飼育、反対意見も多かった。
 その後、愛さんは「絵本の読み聞かせ列車」などを企画したが、集客率は一向に上がらず、むなしさが募る日々。 そんなある日、フラワー長井線のチラシを配っていた時だった。 photo フラワー長井線を利用しているお客さんから、自分たちもチラシを配るからチラシが欲しいと言われた。 そう、客足は遠のいているとはいえ、フラワー長井線を必要としてくれている人はいる、なくしてはならないと愛さんは決意した。
 だが、2ヶ月が過ぎても、うさぎ駅長実現に必要不可欠な宮内駅の改修工事は一向に進まなかった。 そんな頃、反対していた公務部員が改修工事に協力してくれることになったのだ。 愛さんの強い思いに動かされ、フラワー長井線の社員が一つになった。 そして、改修工事はわずか3週間で完了。
 
photo  2010年8月1日。 ついに、うさぎ駅長 もっちぃが就任する日がやって来た! 駅員は、もっちぃの兄弟、ぴーたーとてん。 そして、助役にかめ吉。 実はこの亀、3羽のうさぎ伝説を教えてくれた駅前のおそば屋さんが飼っていた亀。 愛さんの思いに共感し、快く貸してくれたのだ!
 もっちぃの駅長帽は、愛さんの手作り、できることは全てやった。 だが、本当にお客さんは来てくれるのか? 募る不安・・・そして電車は動き出した。 果たしてフラワー長井線に乗客はやって来るのか?
 
photo  うさぎ駅長・もっちぃ就任の日。 宮内駅は、たくさんの子供たちで賑わっていた! もっちぃ、大人気!!
 さらに、手作りのもっちぃラッピング電車が人気を呼んだ。 窓ガラスには、うさぎとかめの童話をカッティングシートで表現。 このアイディアは、最後まで反対していた公務部員たちが出したもの。 デザインや制作は営業部員が残業して行った。 通常ラッピング費用は800万円以上かかるが、社員一丸となって格安で完成させたのだ!!
 
photo  普段駅を利用しない地元住民たちも足を運んでくれた上に、全国からも観光客が訪れた! 用意した もっちぃグッズも大好評!! さらに、イベント列車など様々な企画を実行。
 その結果、年々減り続けていた利用客が、この年 わずかながら増加に転じたのだ!! 人々の思いを乗せ、フラワー長井線は今日も走り続けている!!
 
photo  今年4月、桜が開花した靖国神社に懸命にチラシを配る山形鉄道の社員がいた。 これから桜が見頃になる フラワー長井線の宣伝に訪れていたのだ。 昨年 結婚した愛さんは、今も駅長もっちぃの補佐と世話をこなす日々を行っている。
 しかし、もっちぃの身にはある変化が起こっていた。 3年前の東日本大震災、もっちぃがいる宮内駅も震度5弱の激しい揺れに襲われた。 ショックを受けたもっちぃは、駅長服や帽子を身につけてくれなくなったのだ。 だが、そんなもっちぃを励まそうと、多くの地元の人々や観光客が今も宮内駅を訪れている。
 愛さんに今の夢を聞いてみた。 愛さんの夢はやはり「動物園を作ること」。 愛さんは今も夢を追い続けている。