
- 今回の現場の印象からお聞かせください。
- しっかりしたテーマがある作品ですので、シリアスな現場になるのかなと思っていたのですが、みなさん楽しみながら淡々と演じられていて。何より主役の錦戸亮さんが、プレッシャーを感じずに飄々と演じてらっしゃるんです。それが主人公の真野くんの魅力ともリンクしているのではないかと思います。そんな彼を中心として、上手く構成が出来つつあるなと感じているところです。
- 科捜研が中心のお話ですので、ストーリーはどうしても重い内容になっているわけですが……。
- そうですね、オブラートには包めないような真実とか、残酷な現実が隣り合わせにあるわけですが、そうしたものに日々向き合っている私たちは、そこに感情を置いて一喜一憂するというよりは、その真実の中に未来につなげていくための何かを探していくという目標があって、そのために淡々とやっていく……でもその中でも人間らしく取り組んでいるという姿もちゃんと描かれていると思います。例えばノンナ(新木優子)ちゃんは視聴者側の目線を持った役柄なので、どうしてもそういうセリフが多いですし、私が演じている海塚は、チームを統括する上で、若い人たちの揺れ動く感情とかも理解しつつみんなをまとめていくにはどうすればいいのかを考えて指揮していく役ですから、個性も熟知した上で仕事も割り振っているのではないかと思います。それぞれのキャラクターが、立っていないようでちゃんと立っているというのが面白いですね。
- 第6話で、真野さんの家族を襲った『武蔵野一家殺人事件』と、その事件に直面した海塚さんの過去が描かれました。そのエピソードは、クランクインする前からご存知だったんですよね。
- はい。真野くんの生い立ちを知っているのは私だけですが、だからといって彼を特別視していたわけではなく、もともと才能があって多分最初から群を抜いた存在だったとは思うんです。孤高の人、という感じですがそれでも仕事を前にしたら生きがいを持ってやっていけるというのが彼のポテンシャル、という部分があったので、それをちゃんと6話で表現していきたいという思いは、海塚を演じる上での根底にありました。多分、真野くんはこのままでは終わらないと思いますし、船越英一郎さんが演じられている虎丸さんももっと膨らんでいくと思いますから、これから先の展開も楽しみです。ただ、基本になるお話は1話完結なので、見やすいですよね。いま、小学生くらいの子たちも凄く楽しんで見てくれているみたいで、「トレースごっこ」とか学校でやっているそうです。ドラマの内容はシリアスであろうとも、科捜研という職業があるということを小学生に伝えることができたというのは面白いなと思いました。ドラマを見ながら、「これ、絶対裏がある」「この人、絶対犯人じゃない」とか言ってるみたいですよ。

- 科捜研法医科長の海塚律子というキャラクターを演じるにあたって、特に意識されたことは?
- 原作では男性なんですよね。お医者さんとか弁護士さんとかもそうですけど、何らかの権力があるような世界は男性社会の空気が強いので、そういう部分を少しフラットな目線で見られるように女性が演じる、というのは良いのではないかと思います。自分の権力でモノを言うのではなく、みんなのクッション材的な存在になれて、かつ周りを見渡せて物事を進めていけるようなキャラクターにしたかったので、あまり威圧的な立ち位置で演じないほうがいいんじゃないかな、ということは事前にお話させてもらっていました。実際の社会では、男性の上司が上から命令して、カリカリして、みんなが委縮していくようなことってよくあると思いますが、ドラマの中では、こういう職場もあるのかな、と思って見てもらえるというのは、私が海塚を演じる理由でもあるのかな、とは最初に考えました。
- 先ほど「飄々と演じている」というお話がありましたけど、錦戸さんと実際にお芝居をしてみての印象をお願いします。
- 彼は天才肌系だと思います。集中力も高いですし、瞬時に醸し出す雰囲気とか、役のポイントのとらえ方の完成度も高いと思います。真野くんというキャラクターは考えすぎると陰湿なキャラクターになると思うのですが、それをサラッとやってのけるセンスを持ち合わせているんだなと感じました。
- 時折見せる笑顔も素敵ですよね。
- とても憂いがあるんですよ。だからそれも凄く良いし、役にも合っていると思います。
- ノンナ役の新木さんに関してはいかがですか?一緒にお芝居をするシーンも多いですが。
- 新木さんは、凄く現代的な面も持ってますよね。今どきの子って凄く器用だなと思いました。私くらいの年代だと……私は器用なタイプではないので、現場だと凄く緊張したり、ずっと台本を読んでいたりしましたし、現場はそういう場所、みたいにも思ってもいたのですが、今の子たちってマルチで、インスタを見ながら、インスタ上げながら、マンガ見ながら現場に行って本番をやって、美味しいものを食べて……みたいに、いろんなことを同時に楽しんでいるんですよ。マルチタスク!色々な仕事もこなしつつ、現場も楽しんでいる。彼女も明るくて元気で、スタッフの方にも気を遣えて……。こういうマルチな方が活躍する時代だなと感じています。

- そういうものなんですかね?
- 「趣味とかあるの?」って聞いたら、「え~、何ですかね?わかんないです」みたいな感じなんですけど、何でもできちゃう。「疲れたらちょこっと温泉に行きますね。ドライブで」って。それも、泊りもしないでパッと行ってパッと帰ってくるみたいな。何でも経験して、上手にやっている感じがします。それでストレスが抜けるなんて、生き方上手だな、と思って。なかなか私はそう器用には出来ないから。そういう時代性は感じますね。あまり緊張もしないそうなので、羨ましいです。
- それは、小雪さんや船越さんがいらっしゃるから、という側面もあるのでは?
- どうでしょう。ただ、船越さんが一番みなさんに気を遣われているとは思います。とても腰が低い方で。私も年を重ねて、年上の先輩たちが気を遣ってくれて場を作ってくれて雰囲気が良くなるんだということが、いまとなってはよく分かるるようになりました。でも、若いころってそういう空気が読めなかったので。だから、彼らがそう思ってくれているかはわからないですけれど(笑)。私は、船越さんがいらっしゃると安心します。そういう意味でも、とても良い現場ですね。穏やかで。誰ひとりピリピリしている人がいないし、それぞれがちゃんと自分の持ち場を理解しているので。
- 最後に、視聴者のみなさんに向けてメッセージをお願いします。
- この作品は、どんな事件をモチーフにして、どうやってそれを解決していくのか、という中で、いろいろな人間模様を描きつつ、自分自身の生き方も考えさせられるような作品だと思います。後半に向けては、どんな事件が描かれていくのか、ということはもちろん大きな見どころだと思いますし、その中で主人公の真野くんであったり、ノンナちゃんだったり、それぞれのキャラクターたちの思いや生き方そのものが、みなさんの心に残ったらいいなと思います。
