インタビュー

完治をどのようなキャラクターと捉えていらっしゃいますか?
僕が演じる完治は、家庭を顧みずに、ずっと仕事を一番にやってきた銀行員で、それこそ仕事にマイナスとなるような要因はすべて排除してきた人間なんです。しかし、意図せず左遷されてしまい、思ってもみなかった岐路に立たされます。 私自身もサラリーマン経験がありますし、ちょうど黄昏世代の50歳ですので、今の自分に合った等身大の役が出来るなという思いです。
そして、運命の女性と出会う展開に…
そうです。左遷された末、運命の女性に出会ってしまうという。妻・真璃子(中山美穂)からしてみれば“何それ?”みたいな。今まで仕事ばっかりだったのにそれが無くなったら、自分のところに帰ってくるんじゃなくて別に好きな人が出来た!?みたいな。真璃子も娘の婚約者、日野春輝(藤井流星)と禁断の恋に落ちていくことになるし、娘の美咲(石川恋)もいろいろあって。ストーリーの概要だけ聞くと“ありえないやん、これなに?”ってなるかもしれませんが(笑)。それでも、完治だけでなく、登場人物は皆ある意味とても真面目なんです。もともと恋多き人たちが集まっていたわけではありません。それが、何をきっかけに何でこんなことになった?という物語なんです。
ラブストーリーを演じられるのは珍しいですよね。
この仕事のオファーをいただいた時には勝手にヒューマンドラマだと思っていたんですが、取材などで “佐々木さん初めてのラブストーリーの主演ですね”と言われて、“えっ?ラブストーリーだったの?”って(笑)。左遷された完治が、ちょっと気持ちを変えにスイスに行って、運命の女性と出会ってしまった。出会わず帰ってきたらそのままヒューマンストーリーだったのに(笑)。でも、スイスで目黒栞(黒木瞳)と出会い、そこからラブストーリーが始まる。視聴者のみなさんも人生のある時に突然、自分がラブストーリーの主人公になってしまうことは十分あり得ることだと思います。
では、ラブストーリーを演じる上で気をつけていることは?
だから僕、ラブストーリーだと知ってから、演じ方が正直わからなくなってしまいまして(笑)。黒木さんや中山美穂さんはさすが、ラブストーリーを心得てらっしゃる。僕だけがわかってないんです。セリフをどう追ってどう動こうとばかり考えてしまっていて…でも、ラブストーリーって、しゃべってない時とか、相手の話を聞いている時とかがわりと重要なんだな、と思いましたね。監督には“蔵さんのその不器用さが完治に合ってるからそのままで良いです”ってなぐさめてもらいました(笑)。
中高年の恋愛をどう思われますか?
40、50歳になって社会的な立場や経験もあって家族もいる部下もいるとなってくると、気持ちだけで突っ走ることはないですよね。いろんなことで、自分の中でストッパーをかけると思うんです。その中で、このドラマの登場人物たちは恋愛や仕事を通して、“あぁ、こんな気持ち忘れてた”ということを取り戻していく。でも、その時にストッパーが外れて一気に流れていくわけでもない。忘れかけていた恋愛に対して、中高年だからこそ純粋なところもあるんだと思います。そんなピュアな部分がドラマから見えたとしたら良いと思いますね。
撮影中の印象的なエピソードをお願いします。
なんといっても…暑い(笑)。特に今年は酷暑で外出するだけでも危険だったのに、衣裳はコートにマフラーですからね…あと、ダウンも着たり。保冷剤を衣裳の下に仕込んだり、冷却スプレーを頭に直接かけたりと、取りあえず、暑さ対策をずっと考えていました。まぁ、最後はただ耐えるしかないんですけど(笑)。 あとは、今回はもう最終話までの台本があって、役者としてはその方が役を作りやすいんですけど、スケジュールの都合でまとめて撮影することもあって、それが難しいですかね。例えばレギュラーで登場する居酒屋のシーンなんかは3日間で1話から最終話までを撮影しました。これは今までにない経験ですね。映画などでは2時間の計算はやってきましたが、 連ドラの10時間分の計算は中々出来ないので戸惑います。でも、滅多にない経験なので、それはそれでまた楽しんでいます。
共演の中山さんとは?
中山さんとは、今回初めてご一緒させていただきました。とても印象的だったのは、現場での各方面からのいろんな注文、要望の全てに“はい、分かりました”と答え実行されていたことです。聞くと、自分のやりやすい方に流れたくない。年を重ねて、どんなことも受け入れたいと思うようになったと仰っていて。 真璃子も様々な事を受け入れてくれるんですが、完治はそこに甘えている部分はあると思います(笑)。
黒木さんとは?
黒木さんとは何度かご一緒しているのですが 、真正面にお芝居を交わすのは今回がはじめてです。劇中、あるいは普段から要所要所で垣間見えるチャーミングな栞さんであり、瞳さんはもうズルい。悔しいです(笑)。栞は自分から押すことは絶対にしません。その控えめなところに惹かれてしまうのもあります。この人の力になってあげたいという気持ちを抱いてしまうんだと思います。
最後に視聴者のみなさまにメッセージをお願い致します。
それぞれの星=人には、それぞれの軌道があるけれど、それが偶然に一瞬だけ重なってしまった。今は、たまたまその時間を過ごしているだけ。全宇宙の営みの中のほんの一瞬。そんなときめく瞬間は、誰しもあるのかもしれません。完治はその流星のように光り輝く幸せな運命の時間を、今、過ごしています。 皆さまにも、一緒に楽しんでいただければうれしいです。

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